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パート39

「おや、佐竹さん家のぼっちゃんじゃないかい。そんなに慌ててどうした――」

「悪いおば……じゃなくておねえさん! ここにこの前来た幸って子見かけなかった!? このぐらい小っちゃくて可愛い女の子!」

「え? 幸ちゃんかい? あたしが見たところ来てないけど」

「じゃあ他の人にも聞いて情報網引いといて!」

「また事件かなんかかい? 任せときな、すぐに集めてやるよ!」

「頼む! 今度ハムカツ買いに来るから!」

 商店街で一番顔の広いおばちゃん(おばちゃんと言うと怒るからおねえさんと呼ばないといけない)に幸ちゃん捜索情報網を頼んどいて、俺はまた商店街から自分の家へと走り出す。

 幸ちゃんが俺たちに黙っていきなりいなくなるなんて、あまりにも可笑しかった。それも、俺たちならともかく幸一に黙ってだ。

 どうしていなくなったかは理由は分からないけど、探さないわけにはいかない。もう幸ちゃんは俺たちの中で大きな存在になってるし、特に幸一なんかはそうだろう。幸ちゃんを見ていると、昔の幸一を思い出す。

 幸一と中学で初めて会ったとき、あいつはまるで誰も近づかせないように拒絶してばかりだった。誰からの誘いなども全部断り、まるで空気のような存在だった。

 その時はあいつも俺みたいな根暗でオタクのような奴かと思っていた。でもあいつは俺なんかとはまったく違っていて、重たい悩みを抱えていただけだった。そのことに気づいたのは出会ってからかなり後だった。

 おそらく、俺と真里菜に出会ってなかったらあいつはとうの昔に自殺していたかもしれない。

 それくらいに昔のあいつは酷かった。今の幸一を見ていると、そんなことはまったく思えないかもしれないけど。

 だからなのか、あいつは幸ちゃんを助けたのかもしれない。不幸な目に遭っている幸ちゃんを。

 そう考えると不思議と違和感はない。不幸がどんなものかを一番知っているあいつだからこそ、幸ちゃんを幸せにしようとしているんだろう。

 なら俺は、その背中を手伝ってやるだけだ。

「ただいま!」

「おかえりなさい、洋介様。お早いお帰りで」

 自分の家の無駄にでかい扉を開けると、すぐに親父が雇っているメイドさんが俺にそう言ってきてくれた。

「探したい人がいるんだ。今すぐに」

「……また、ご主人様に内緒で私たちメイドに命令するんですか? どれだけ暇人――」

「ふざけてる暇はない。これは俺のためじゃなくて、俺の親友のためなんだ。頼む」

「……………」

 いつも毒舌ばかりを言ってくるメイドさんに真剣に頼むと、メイドさんはため息をつくと、

「……分かりました。ただし、次にやる稽古の時間は倍にさせてもらいますよ?」

「ぐ……わ、分かった」

「分かりました、でしょう」

「分・か・り・ま・し・た! これでいいか!」

「結構です。いったい誰を探したいのですか?」

「ああ。簡単に言えば俺好みの幼女だ」

「……あなた好みの幼女が多すぎて分からないのですが」

「……………」

 そういえばそうだったと思いながら、幸ちゃんの特徴を教え、家にいる仕事に影響が出ない程度に動いてもらう。この町の中でだけなら、すぐに見つけ出してくれるはずだ。

 それにしても、どうして幸ちゃんはいなくなってしまったんだろうか。誘拐はされてないはずだし、幸ちゃんは幸一の傍にいて少なくとも幸せな日々を送ってきたはずだというのに。

 まさかとは思うが……幸せに過ごせてると思っていたのは俺たちだけで、幸ちゃん自身はそう思えてなかった、とか?

「……いやいや、ありえないな」

 幸ちゃんから聞こえるあのテレパシーからや、動作を見ているとそんなことは思えない。きっと俺の思い過ごしだろう。

 そう思った俺は、再び自分でも探すために家を飛び出した。

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