パート31
アパートまでの帰り道。俺は京香に明日の事について電話をしていた。
「――と言う事で、お前も来ないか?」
『……………行く』
案の定、京香からの返事は即答だった。これで六人目になったわけだ。
それにしても、ただ公園に行くってのに結構な大人数になったな。
「そか。真里菜がお前に会うのを楽しみにしてたぞ」
『……………真里菜お姉ちゃんが?』
「ああ」
真里菜と京香は、俺となんかよりも本物の姉妹のように仲が良い。真里菜から見たら京香は放ってはおけない可愛い妹で、京香から見たら真里菜はとても立派でしかも強くて、尊敬出来る姉だろう。
『……………何か、持って行く?』
「いや、そういうのはもう決まってる。お菓子とかは俺が買ったし、デザートは菊恵先輩がシュプランのケーキを持ってきてくれる。それに昼飯は真里菜が作ってくるっていってたしな」
『……………絶対に行く』
そう言うと思った。ほんとに京香は真里菜の事が好きなんだな。
「じゃあ、明日な」
そう言って電話を切ったら、丁度アパートの前についていた。
アパートの前には、香里さんが箒を持って掃除をしていた。
「おや、幸一さん。今日は随分と遅い帰りですね。もしかして誰か襲ってたんですか?」
「出会いがしらにそんな事を聞いてくる人は、香里さん以外に絶対いないと思います」
というか、なんか久しぶりに聞いたな。最近はいろいろと忙しかったから、香里さんとまともに話した事はあんまり無かった気がする。
「おや、そのお菓子とかは幸ちゃんにですか?」
「いや、これは明日のお菓子ですよ」
簡単に、明日俺達が公園で遊びに行く事を伝えると、香里さんは少し考える素振りを見せた。
「公園に、ですか?」
「はい。幸を外に遊びに出かけさせて、少しでも気分転換をさせようかと」
本当は俺の考えじゃなくて、洋介の考えだけど。だけど少しでも幸に外とか真里菜達に慣れてほしい。そう思って俺も賛成したのだ。
「それはいいとは思いますが……くれぐれも裸にならないで下さいね?」
「俺はそんな露出狂とかじゃないですよ!」
「まあ冗談はともかくとして、幸一さん」
いきなり、香里さんがいつになく真剣な表情で俺を見てきた。いつもの冗談も今回はやけに短いし……。これは何かあると思って、俺は香里さんの話を漏らさない様に聞き始める。
「幸ちゃんの事ですが、彼女の周りに注意した方がいいですよ」
それは、もしかしなくてもあの男の事を言っているのか?
「あの子の今の一番安全な場所は、このアパートの幸一さんの部屋だけです。けれど、外に一歩でも出れば幸ちゃんだけではなく、幸一さんや他の人にも被害が及びます」
「被害って……。別にそんなの平気ですよ。それにたとえそんな事があったとしても、そんなの俺から見ればいつもの事ですよ」
「出来れば私も行った方がいいのですが、あいにくと明日は用事が入っているので……」
香里さんがそこまで心配するなんて、かなり珍しかった。何かそこまで不安な事なんてあるのだろうか?
「俺達だけで十分ですよ。無事にこのアパートに帰ってきますって」
「……そうですか。それでは、良い一日になるといいですね」
それだけ言って、香里さんは自分の部屋へと戻って行った。




