パート30
「明日の休みに、皆はんと公園どすか?」
「はい。あとそっちの方向には食材はありませんから」
放課後。スーパーの前でいつも通り待ち合わせをしていた菊恵先輩と一緒に買い物をしている最中に、俺は昼に真里菜たちと話した事をさっそく誘っていた。
それにしても、本当にこの人は方向音痴だよな……。毎日のようにここに来ているはずなのに、未だにどこになにが置いてあるのかが分からないだなんて、普通じゃない。
「そうやなぁ、うちも幸ちゃんに会えるんやったら、行かせてもらいますえ」
「きっと幸も喜びますよ。一応真里菜が大きな弁当を作ってくるって言ってたので、持ってくるのは飲み物だけでいいですよ」
「そうはいかんどす。誘われたからには、何かを持って行くのが礼儀どすえ? また、シュプランの商品になってしもうけど、デザートには丁度いいやろ」
「それは……幸だけじゃなく、真里菜も喜びますね。あとそっちは確かに食材ですけど、海苔しかありませんから」
とりあえず、これで五人か。
あとは京香だな。多分、電話でもすればよほどの用事がない限り、行くというだろう。
じゃあ晩飯の買い物ついでに、飲み物でも買っていくか。お菓子は……三百円以内でいいか。ピクニックの基本中の基本だ。
「ところで、幸一はん」
「なんですか?」
「幸ちゃんの声が出んのと、腕が動かへんのは病気なんどすな?」
「そのはずですけど……。でもいきなりどうしたんですか?」
「いやな、昨日うちに来たお客はんの中で、一人だけで来て、でも何も買わんでただ幸ちゃんについて聞いてきた人がいたさかい」
「幸について、ですか?」
もしかするとそれは、この前俺がアパートの前で会ったあの男だろうか。でも幸とは知り合いみたいだし、幸の喋れなかったり、腕を動かせない理由とかはあいつの方が詳しいとは思うんだけど……。
「それってどういう人――ってあれ?」
一瞬目を話した隙に、いつの間にか菊恵先輩の姿を見失ってしまった。
「しまった……」
あの人はただの方向音痴じゃなく、案内をしている最中に途中で別の方向に勝手に行ってしまうのだ。だから随時目を離さない様にしないといけない。
しかもここのスーパーはいろんな物があって便利だけど、その分かなりの大きさだ。この中からどこに行くのかも分からない菊恵先輩を探さないといけない……。これで、スーパーで菊恵先輩を探すのは何回目だろうか。
結局、買い物をして菊恵先輩を見つけるのに一時間もかかってしまった。




