パート29
幸と出会ってから、一週間が経った。
始めは(主に周りが)騒がしかったけれど、それもあっという間に慣れたのか、俺と幸との生活はもうかなり前から一緒に住んでいたかのように、定着していった。
とはいっても、かなり大変ではある。
俺が学校に行っている間は高橋さんに見て貰ってるけど、それ以外は全部俺が幸のサポートをしないといけない。まあ両腕が動かせないから当然なんだけどさ。
食事をさせるのも、トイレに行かせるのも、風呂に入れて体を洗ってあげるのも、服を着替えさせるのも。ほかにもいろいろ、全て俺がやらないといけない。
でも真里菜や洋介、あと高橋さんにも手伝ってもらってるからあまり苦にはならない。むしろ今までよりも楽しい毎日だ。
まあ、俺の不幸体質は相変わらずだけど、今のこの幸せに勝るほどじゃない。幸にも、俺と同じように感じていると思う。感じていて欲しい。
そう思って張り切ってしまったのがいけなかったのか。
はたまた、俺が勝手な思い込みをしていたのがいけなかったのか。
そして俺は、昔よく口癖のように言っていたあの言葉を思い出してしまった。
『幸せは裏切る。不幸は裏切ってくれない』
「なあなあ、明日辺りに幸ちゃん連れて公園に行かねえか?」
「……は?」
昼休み。いつもの三人で弁当を食べていたら、洋介が突然そう言ってきた。
「なんで公園なのよ? どうせなら遊園地とか……」
「いや、前に三人で行った遊園地覚えてねえのかよ、お前。あのあまりにも悲惨だったあの思い出を!」
「……あー」
そういや春休み辺りに三人で近くの遊園地に行ったんだけど、ジェットコースターで三人で並んでいたのに何故か真里菜と洋介だけが先に乗って、満員だからと俺だけ一人で次のに乗ったり。お化け屋敷でもセットが俺の上に壊れて落ちてきたり。メリーゴーランドで馬から落ちたり。
とにかく、いろいろと不幸な事が起きてあんまり満足に楽しめなかった。
……ダメだ。思い出しただけで泣きそうになってきた。
「それに、幸ちゃんだって商店街のおばさん達ならともかく、あんな人の多い所はまだ無理だろ?」
「まあ、な。確かに最近は外に出させてないと思うから、ちょうどいい機会かもしれないな」
「それなら私ももちろん行くわよ。他にも誰か誘う?」
「そりゃ決まってるだろ。最近田中との関係が発覚した斎京先輩を、連れてくるんだ!」
「いや、関係も何もただ一緒に買い物するぐらいで……」
「その時点で羨ましいんだよこのやろおおおおおおおっ!」
「うるっさい」
騒ぎ出した洋介の腹を真里菜が思いっきりボディーブローした。あーあー、こんな所で吐くんじゃねえぞ。
「で、俺と幸も別に構わないけど、菊恵先輩にも予定があるだろうしな……。一応今日聞いてみるよ。もしかしたら京香も来るかもしれん」
「京香ちゃんも? そういえば最近会ってないから、ちょっと久しぶりかも」
「京香、ちゃんだと……?」
あ、そういえば洋介は京香と会ってないのか。だとしたら先に紹介ぐらいはした方がいいか。
「ま、まさかお前の恋人か!?」
「違う! 京香は俺の妹でだな」
「妹だと!?」
「まあ妹と言っても、親が勝手に施設から引き取ったから義理なんだが」
「しかも義理っ! こ、この裏切りがああああああああ!?」
「あんたはいい加減に黙りなさい!」
洋介の最後の叫びは、真里菜のアイアンクローによって見事撃沈された。
相変わらずの威力だなー。前に喰らった時、頭蓋骨にひびが入るかと思うほどだからな……。
洋介が痛みで頭を押さえている間に、俺と真里菜はさっさと昼飯を済ませ、明日の予定を決める事にした。
「なあ、これで公園が使えないなんてオチは無いよな?」
「安心しろ、ちゃんと確認済みだ」
ならいいけど。




