パート23
「幸一はん?」
「……え、あれ」
菊恵先輩に体を揺さぶられ、俺は目を覚ました。
「大丈夫かえ? 居眠りするなんて、幸一はんらしくあらんなぁ」
「えっと……もしかして俺、寝てました?」
「そらぐっすりとなぁ。疲れとるんやないか?」
「…………(大丈夫、ですか?)」
菊恵先輩だけじゃなく、幸にまで心配されてしまった。視線をずらすと、真里菜や洋介までが俺を見ていた。
どうやら本当に居眠りをしてしまっていたみたいだ。おかしいな、昨日ちゃんと寝たはずなのに……。
「俺は大丈夫だって。みんなして心配しすぎだよ」
「でも……」
そう言っても何か言おうとする真里菜に、俺はデコピンをしてやる。
「あいたっ!?」
「はは、隙だらけだぞ。それじゃあ菊恵先輩、そろそろ迷惑にならないうちに帰ります」
「別に迷惑じゃないどすえ? ほんなら、お土産にケーキ持って帰ってええよ?」
「…………!」
「ほ、本当ですか!?」
幸と真里菜が同時に反応した。この二人、本当に甘いものに目が無いみたいだ。
菊恵先輩がケーキを取りに行っている間に、俺はさっき見た夢を思い出す。
いや……あれは夢じゃなくて、俺の昔の思い出だった。
あまりにも遠い昔だったから覚えていなかった過去。
そこにいたのは一人の少女で。
少女は自分の事を、幸と言っていた。
(……まさかとは思うけど)
俺は昔に、幸と会った事があるのか?
けど、いまケーキを待っている幸を見ると、あの頃からあまり成長してない。
ということは、昔会った幸と今の幸はまったくの別人だと考えていいだろう。
「幸一? どうした?」
「……いや、なんでもない」
洋介に声をかけられたけど、心配をこれ以上かけないように誤魔化す。
荷物をまとめ終わったころに菊恵先輩がケーキを持ってきてくれて、真里菜と幸がまた顔を輝かせているの見て、俺と洋介は苦笑した。
「…………♪(ケーキ♪ ケーキ♪)」
真里菜と洋介と別れて、俺と幸だけで帰る道中。幸はずっと顔は無表情のままに、けどテレパシーだけはもの凄いご機嫌だった。
「嬉しそうだな、幸」
「…………コクン(はい! だってシュプランのケーキ、とっても美味しいですから)」
「そうだな。じゃあ毎日は無理だが、これから買ってこようか? 菊恵先輩に頼めばなんとかなると思うしな」
「…………!(え、いいんですか!?)」
「俺も気に入ったからな。次は何を選ぼうか?」
「…………!(え、えっと……)」
そのままうーんと考え始めた幸。その姿を見ていたら、やっぱりあの頃に出会った少女とはまったく違っていた。
確かあの時の幸なら、「なんでもいい」と言って俺に選ばせていたはずだ。
(……やっぱり、違うな)
どのみち、違わなかったとしても対して俺は気にしない。
こうやって今幸が幸せそうに過ごせていれば、それでいい。
そう思っていた。




