パート?(1)
それは、遠い過去。
まだ自分の体質に気付く事無く、淡々と過ごしていた日々。
出会いが運命、出会いは突然とよく聞くけど、出会いは不幸の始まりと勝手に始めたのは、あの時が最初だったかもしれない。
それはともかくとして、俺が出会ったのは今から十年前。
その時から相変わらず不幸な体質を持ち続けながらも、それに気付かずに学校から帰る途中だった。
たまたま暇つぶしに、近くの公園に寄ったら普段は誰かいるはずの公園には、不幸な事に誰もいなかった。
「…………はあ」
暇だなぁ、と呟き、誰も座っていないブランコに腰を降ろした。
このまま夕方まで誰も来なかったら帰ろうかと思っていたら、滑り台の上に誰かがいる事に気付いた。
彼女は滑り台から降りようとせず、ただただ上からの景色を見ていた。
「……ねえ」
気になった俺はブランコから降りて、彼女の元に近寄る。そして声を掛けてみると、彼女は驚いた顔をして見てきた。
「滑らないの?」
「…………あなた、私が見えるの?」
何故かお互いに聞きあい、
「見えるも何も、君はそこにいるじゃないか」
「…………落ちるのは、怖いから」
お互い同時に答えた。
「滑り台は落ちるんじゃなくて、滑るんだよ。別に怖くなんかないよ」
「…………でも」
「怖くないよ、ほら」
特になんの抵抗もなく、俺は彼女に向かって手を差し出した。
それでも彼女は怖がって、俺の手を取ろうとしなかった。
その臆病さなのがいら立ったのか、あるいはただ単に不思議に思ったのか。
俺は彼女の手を無理矢理握った。
「あ…………」
「ほら、大丈夫――うわっ!?」
手を引っ張って彼女は滑り台から砂場へと滑り、それを離さなかった俺は、そのまま一緒に砂場突っ込んでしまった。
「あ、あはははははっ! ね、大丈夫だったでしょ?」
それが楽しかったのか、俺は大声で笑った。
不幸なんか気にしないかのように。ただ、幸せそうに。
それを見ていた彼女は、幸せそうに笑う俺を見て静かに笑い始めた。
「ふ、ふふふ…………」
「ねえ、僕たち友達になろうよ!」
「友達…………?」
「うん! 僕の名前は田中幸一って言うんだ! 君の名前は?」
彼女は嬉しそうな顔になって、自分の名前を言った。
「私の名前は――」
――幸っていうの…………。




