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パート22

「すみません、いきなり来たにも関わらずにケーキを頂けるなんて……」

「別にええどすえ? それにわざわざ来とくれたお客に、拒む理由なんてあるわけないやないか。それで、今日はうちにケーキを買いに来たのかえ?」

「ええまあ。幸がここのケーキを気に入ったので……」

 ちなみに俺が菊恵先輩と話している間、幸は真里菜からケーキを食べさせて貰っていた。洋介にやらせるといろいろと危ない気がするので、離れた位置に縛っている。

「ってちょっと待て! せめてケーキを食わせろ!」

「……それで、菊恵先輩。ちょっと質問があるんですが」

「無視かよ!?」

 騒がしい洋介は無視する事にして、俺は菊恵先輩に聞いた。

「なんどすえ?」

「菊恵先輩は、俺が住んでるアパートの管理人――高橋さんと知り合いなんですか?」

「高橋……ああ、高橋香里さんかえ。あの人はウチの店の常連さんでなぁ。よぉケーキを買いに来てくれはるんどす」

 ああなるほど。通りであの人が菊恵先輩を知っているわけだ。

 という事は昨日シュプランのケーキをあんな短時間で買いに行けたのは、常日頃から買っているからなのか。こんどからは幸の為に俺も買いにこようかな。

「それにしても……本当にこのケーキ上手いですね。一体どうやって作ってるんですか?」

「うーん……ウチもまだ修行中の身やからのぉ。店長、というかおとんからは『まだそこまでの腕前をお前は持っていない』とか言われたんよ」

「あ、ということはやっぱり、菊恵先輩は将来この店を引き継ぐんですか?」

「そうやなぁ。ウチもケーキは好きやし、何よりお客さんの笑顔が見たくてのぉ。ほれ、あんな風に美味しく食べてもらえたら嬉しいしなぁ」

 菊恵先輩が指差した方には、真里菜が美味しそうな顔でケーキを食べていた。幸も相変わらずの無表情だったけど、どことなく幸せそうな雰囲気だった。

「確かに……ああいうのを見ると、こっちも嬉しくなりますよね」

「そうやねぇ。だから、ウチらはもっと美味しいケーキを作れるように、いつもがんばっとるんよ」

 そう言った菊恵先輩のことを、俺は尊敬した。

 誰かのために必死になれるだなんて、俺にはあまり向いてないと思っているから。

 向いてない、というよりも……出来ないと言った方がいいかもしれない。

 今までの人生でそこまで必死になったことなんてないし、誰かのために頑張ろうと思った事がない。

 それに俺は、不幸を呼び寄せる体質を持っている。

 そんな俺が近くにいたら、多分その人に迷惑をかけてしまうだろう。それだけは絶対にさせたくない。

 だから……。


 結局は、俺は誰の支えになることなんて、絶対にない。

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