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元気な師匠と3人の弟子

王様からアーサーと共にこってり絞られた後、レヴィンは城の廊下をとぼとぼと帰路についた。

「ふぅ…あの怒号の後じゃ、肩が抜けそうじゃのう…」

アーサーは肩を揺らしながらも、どこか楽しそうだ。

「任務より疲れたー。でももう少しで部屋に着きますね…」

レヴィンはフードを深く被り直し、少し俯き加減に歩いた。


城内の石造りの廊下は静まり返り、ランタンの明かりが壁に揺れる。

騒動の余韻がまだ胸に残る中、彼の部屋にはすでに誰かが待っていた。


黒髪を一つにまとめたキリッとした美人――ラミア。

秘書のような整った雰囲気を持ち、一見すると近寄りがたい怖さがあるが、弟子としての忠誠心は厚い。

小さな足音と共に、廊下の静寂に溶け込む彼女の姿に、レヴィンは少しだけ安心する。


「おかえりなさい、師匠。アーサー様も」

ラミアは静かに微笑み、整えられた食事とベッドの前で立っていた。


「ラミアか…今日も色々あったぞ…」アーサーが愚痴をこぼすと、ラミアはニコニコと愛想笑いでそれを聞き流す。


「それで、報告書はまとめてあります。王様への提出用もこちらです」

ラミアは微笑みながら怒りをうちに秘め、差し出す。


レン「わ…悪いな毎回毎回」

ラミア「師匠!!師匠は実力は一流なんですから報告書なしでもいけますよね!?」

レン「ご、ごめんって…」


アーサーは気にもとめず、人の部屋にも関わらずごろりと大の字になり、ぐうぐうといびきをかき寝始めた。


「アーサー様!?こちらに布団を敷きますからー」ラミアが運ぼうにも巨体のアーサーは動かない。


ラミアは年もそうそう変わらない師匠のレヴィンに対してくどくどと、お説教を始める。


レヴィンは最初こそ聞いて謝り続けていたが、疲れからコテンッとアーサーの脇に寝てしまう。


ラミア「……」

片目だけ開けて、寝てしまった2人を黙認した。


「お疲れ様です…師匠」

無防備に眠るレヴィンを見て、そっと布団をかけてあげるラミア。そんな姿に少し心を和ませる。


ラミアは電気を消して、そっと部屋を出る。


ー翌朝ー


「う.....っ」

汗だくでレヴィンは目を覚した。


夢の残像が頭を覆い、胸を締め付ける――

あの日、アグニを討った瞬間の冷たさが指に残る。

そして迷宮で助けられなかった命たちの顔が、脳裏をよぎる。

守れなかった命への罪悪感が、今も胸を突き刺す。


「夢か....」


ルナの顔が浮かぶ。

見れなかった表情――胸が締め付けられる。

母親の泣き顔が、脳裏に焼き付いて離れない。


そして――特に…あの瞬間。

リュウはアグニに体を乗っ取らせ、リュウに頼まれて自分の手でリュウを殺めたあの日。


頬を伝う涙に気付き指で拭う。


耳鳴りが一瞬頭を突き抜けた...。


でも、枕元の水の入った器、朝の光、深呼吸。



「……よし!!もう大丈夫!!!」

自らの頬をパシッと叩き、気を入れ直すレヴィン。


軽く身支度を整え、ドアを出ると、弟子たちと合流して朝食へ向かう。


ラミア「おはようございます、師匠。顔色が優れないようですが…」

レヴィン「おう!おはよう!平気平気!!」

しっかり者で目ざといラミアは、いつもよく叱られている師匠の体調も見逃さない。


「ししょー!」

その背中に飛び乗って来たのは、まだ15歳のシモンだ。小柄でツンツン頭の元気な少年。


レヴィン「おーシモン!!猿かと思ったぞー!!」

ウキーウキーっと猿真似をするシモンに、あははっと笑うレヴィン。


そこに優しい声がかかる。


カイル「ダメだよー、シモン。師匠は疲れてるんだから…」

パワー系だが温和で消極的な性格のカイルは、戦いには不向きでも、使い方次第で相当な剣士になるだろう。


テーブルに着くと、城のシェフたちが慌ただしく動き、朝食がずらりと並ぶ。

パンにチーズ、スープに卵、手製のハムやフルーツまで。


シモンは目を輝かせて皿に飛びつく。

「うおおお!!師匠、今日は何でもいいですかー!?」

レヴィン「よし、全部いけー!!」


シモンはウキウキと料理を口に運び、次々に頬張る。

カイルは穏やかに笑いながらも、食べ過ぎないようさりげなく皿に手を添える。

「落ち着いて、シモン…一度に全部は危ないぞ」


シモン「いやーん、師匠も食べてー!!」

ラミア「シモン!!聖騎士様たちも見てますよ!」


聖騎士たちは、いつもの光景と言わんばかりに、和やかに笑っていた。



「レヴィンの弟子だからなあ...」

と笑う聖騎士達。


「ぼーいうひみれすか」


その隣で、むがむがとレヴィンはパンを口いっぱいにして突っ込むが何を言っているか最早分からない。


「今日も朝からレヴィンはうるせえなあ」と聖騎士は笑うが目元は優しい。


少し離れたテーブルにてアーサーがガツガツ皿から直接、食してる様子にあっちは笑い声と出る音がうるせえなあと苦笑いされる。


食卓には、賑やかで温かい空気が満ちていた。


レン「あ…ラミア、俺…今日はハリスのところに行ってから武闘室に向かうから、先に稽古始めててくれ」

ラミア「はい、わかりました、師匠」


シモン「うおー!師匠来る前からガンガンやるぞー!」

カイル「あはは、シモン、張り切りすぎて怪我しないようにね」


ダイニングにはまだ数名の聖騎士が残っていた。

「15番!」

「16番!」


呼ばれた番号の者たちは順番にメンタルルームへと向かう。


メンタルルームは聖騎士たちの精神状態を確認し、心の疲れを整えるための場所。

若手もベテランも関係なく、必要と判断された聖騎士は必ずここに足を運ぶことになっている。


ラミアは「じゃあ、先に始めてますね」と声をかけて立ち上がった。

レン「おう!頼んだぞー」


シモン「ししょー、早く来てねー」

カイル「ほらほら、師匠は来るから、準備してよう」


弟子たちも、なんとなく師匠であるレヴィンの心の傷を聞かされてはいたが、まだピンと来ていない。

あの元気いっぱいの師匠が、メンタルケアなんて…結びつかない。


「ラミ姐…ししょーがメンタルケアって本当に必要なの??」

シモンは首をかしげ、眉をひそめる。

「僕もそう思ってた…」カイルも首をかしげた。


確かに日頃の師匠は、朝ごはんをもりもり食べ、稽古では明るく指導する姿しか見せない。

その姿と、静かな部屋で心を整える姿――想像できるはずもない。


「まあ…でも、師匠だから、大丈夫よ、きっと…」

ラミアの言葉に、カイルとシモンは小さく頷き、少しだけ安心した顔を見せた。




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