表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
12/70

暗黒騎士指名の不吉な依頼④

年季の入った木造の小屋が、森の奥にひっそりと佇んでいた。

壁や梁には深い傷や煤が残り、長年人の手で使われ続けてきたことを示している。


数名が身を潜めても余裕がありそうだ...。



「あそこの小屋で受け渡す約束をしました...」

フェルナンドがそう言い古びた小屋を指さした。


不穏な空気が漂う小屋に、思わず身を強く縮めるレヴィン。


彼はハリスに、心の中でテレパシーのように思考を送った。

ハリスの能力――精神系異能のひとつで、相手の思考や感情を読み取る力――を使うためだ。


レヴィン(どうだ…?あの中に誰かいるか…?)

ハリス(複数いるみたい…でも思考が読みにくい…)


ハリスは、相手が異能者の場合、思考が乱れて読みにくくなることを知っている。


フェルナンド「……あの、受け渡しは私だけと忠告がありました……何かあれば、すぐ来てくれますよね?」

不安げに、フェルナンドは二人を見上げる。


レヴィン「もちろんです!!!」

ハリス「合図か、何かありますか…?」


付き人が手にした小型の警報機を示す。

付き人「フェルナンド様の靴を脱ぐと、こちらに音が鳴る仕組みになっております」


レヴィン「わかりました……俺たちはこの辺から見守っています」


フェルナンドは深く息を吸い、こくりとうなずくと、箱を抱えて小屋の中へ向かった。

木の軋む音が、森の静寂に微かに響く。

茂みの影から、レヴィンとハリスは息を潜めて視線を送り続ける。


フェルナンドは小屋の中を一歩一歩慎重に歩く。


「箱だけ置け……確認する」


どこからか、低く冷たい声が聞こえ、思わず体がビクッと硬直するフェルナンド。


震える手で宝石の入った箱をごと……っと置いた瞬間、

「よかろう……だが小賢しい者が数匹いるな……」


その声に背筋が凍り、フェルナンドの目は宙をさまよう。

次の瞬間、見えない力にフワッと持ち上げられ、小屋の天井付近でピタリと止められた。


「うああっ!?」

足をバタつかせる音が、木造の小屋にかすかに響く。

誰の姿も見えないのに拘束され、息を呑むしかできない――この力の主は、一体……。



フェルナンドは足を何度もバタつかせ、革靴を少しずつズラしていく。


ズルッ……ッ!!

その瞬間、革靴が上手く脱げ、付き人の手元の警報機がビービー!!!と音を鳴らした。


「!!!」

レヴィンは風を切るように一目散に駆け出し、そのままの勢いで小屋のドアを蹴破った。


木片が飛び散り、衝撃で小屋の柱が微かに軋む。


ハリス「ああ……またすぐ行く……!」

付き人「は……早い……」


レヴィンが小屋に突撃し、中を見渡すと宙に浮いたフェルナンドが……!

フェルナンド「暗黒騎士さん……!!」

レヴィン「フェルナンドさん……! 少し待ってて下さいね…!」

「は…はいっっ!」

怯えながらも体に力を込め、落下しないことを祈るフェルナンド。


レヴィンは周囲を鋭く見回す。

気配が…ひとつ…ふたつ…いや、もっといる。


突然、薄暗い小屋の奥から、一瞬の影が飛び出す。


「ぐっ…!?」

レヴィンの背後を狙い、鋭利な刃物や棒状の武器が一斉に飛んできた。


だがレヴィンは蹴り一閃でいなす。

武器は軋む音とともに壁や床に突き刺さる。


さらに複数の気配が室内に襲いかかるが、レヴィンは動じず、武器を抜くことすらせずに攻撃をかわすように叩き当てる。


ドスッ、ドスッ、数人が床に倒れる音が響く。

倒れた者を小型ライトで確認すると、単なる山賊のようだ。


レヴィンは眉ひとつ動かさず、淡々と言った。

「……山賊か。少し期待外れだな。」


その間も、宙に浮かされたままのフェルナンドが微かに震えている。


まだ隠れているな……


「そこにいるやつ、全員出てこい……」

さっきまでのレヴィンとは別人のような、冷たく鋭い迫力を帯びた声に、薄暗い小屋の隅から複数の者の戸惑いの吐息が漏れる。


「俺の時間を無駄にするな。」

その言葉に、隠れていた者たちの足が微かに震え、武器の握りも揺れる。


レヴィンはその隙を見逃さず、片手を軽く前に出すだけで、一歩踏み出した者を壁に叩きつける。

「次は容赦しない。」


その圧倒的な威圧に、山賊たちは互いに目を合わせ、迷いの色を濃くしていた。

レヴィンは冷静に、しかしまるで獲物を狙う鷹のような眼差しで、全員の動きを見極めている。

小屋全体に、静かで重い緊張が張りつめていた。


レヴィンは壁を殴りつける!!!


ドオン....!!

小屋の壁が大きく崩れ、木くずが舞い上がる。


煙と埃の向こうに視界が開け、そこに立っていたのは、怯え切った山賊たちと、明らかに異質な空気を纏った人物――箱をしっかり抱え、動じることなくレヴィンを見据えていた。


「…お前か...」

レヴィンの声は冷たく、しかし静かな怒りを含んでいた。


異能者の目が一瞬光を帯びる。箱の中の宝石が微かに反射してきらめき、周囲の空気をわずかに歪ませる。


レヴィンはゆっくりと前に踏み出し、眉ひとつ動かさず異能者を挑発する。

「箱を置け。さもなくば、ここで全て終わらせる。」


異能者らしき人物の笑い声が、ホコリにまみれてこだまする。

「ひひ…ふふ…」


「…?」

その不気味な笑みに、一瞬だけ後ずさる動きを見せるレヴィン。


宙に浮かされていたフェルナンドは、ようやく床に下ろされ尻もちをついた。

ハリス「大丈夫ですか!?」

フェルナンド「いつつ...何とか」

腰を打ったようだが大事には至らなそうだ...。


ハリスはすぐさま彼を抱き起こし、守るように立つ。


「おい…金と宝石の交換じゃないのか? なぜこの人に危害を加えようとした…」

レヴィンの声は冷静だが、内に潜む警戒がにじむ。


異能者はゆっくりと箱を抱えたまま、薄笑いを浮かべる。

「要望通り…暗黒騎士を連れて来てくれたんだなあ…?」


ハリスはフェルナンドの顔を見つめ、眉をひそめた。

「フェルナンド…お前、まさか…もう金をもらって…?」


フェルナンドは目を見開き、震える声で答える。

「し…知らない…まさか…お前…」


付き人は気まずそうに俯き、声を震わせる。

「申し訳ありません…フェルナンド様のためを思って…」


フェルナンドの顔に怒りと困惑が交錯する。

「貴様…」


その瞬間、ハリスは自分の心の中で冷静に反省した。


――フェルナンドの思考を読んでも、何も出てこなかった。

暗躍していたのは付き人の方だったんだ!!

「僕は…馬鹿だ…付き人の方も読むべきだった…!ごめん....レン...!」


ハリスは深く息を吸い、状況を瞬時に理解した。

――あいつの目的は、暗黒騎士をおびき寄せることだけだったんだ…!


小屋の空気が一瞬にして張り詰める。


覆っていた煙と埃が沈みこみ...異能者の姿が薄らと浮かび上がる。

不気味な笑みを浮かべ、空気ごと周囲をねじ曲げるかのような異質な気配。


レヴィンは静かに一歩前に踏み出す。呼吸ひとつ変えず、全身に張り詰めた緊張をまとい、まるで獲物を狙う鷹のように、相手の動きを見据える。


「……そんなのどうでもいい、かかってこいよ」


その声に、異能者がより一層口元を歪ませた。


辺りの空気がさらに張り詰める――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ