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崩落の中の暗躍

年季の入った木造の小屋が、森の奥にひっそりと佇んでいた。

壁や梁には深い傷や煤が残り、長年人の手で使われ続けてきたことを示している。


数名が身を潜めても余裕がありそうだ...。



「あそこの小屋で受け渡す約束をしました...」

フェルナンドがそう言い古びた小屋を指さした。


不穏な空気が漂う小屋に、思わず身を強く縮めるレヴィン。


彼はハリスに、心の中でテレパシーのように思考を送った。

ハリスの能力――精神系異能のひとつで、相手の思考や感情を読み取る力――を使うためだ。


レヴィン(どうだ…?あの中に誰かいるか…?)

ハリス(複数いるみたい…でも思考が読みにくい…)


ハリスは、相手が異能者の場合、思考が乱れて読みにくくなることを知っている。


フェルナンド「……あの、受け渡しは私だけと忠告がありました……何かあれば、すぐ来てくれますよね?」

不安げに、フェルナンドは二人を見上げる。


レヴィン「もちろんです!!!」

ハリス「合図か、何かありますか…?」


付き人が手にした小型の警報機を示す。

付き人「フェルナンド様の靴を脱ぐと、こちらに音が鳴る仕組みになっております」


レヴィン「わかりました……俺たちはこの辺から見守っています」


フェルナンドは深く息を吸い、こくりとうなずくと、箱を抱えて小屋の中へ向かった。

木の軋む音が、森の静寂に微かに響く。

茂みの影から、レヴィンとハリスは息を潜めて視線を送り続ける。


フェルナンドは小屋の中を一歩一歩慎重に歩く。


「箱だけ置け……確認する」


どこからか、低く冷たい声が聞こえ、思わず体がビクッと硬直するフェルナンド。


震える手で宝石の入った箱をごと……っと置いた瞬間、

「よかろう……だが小賢しい者が数匹いるな……」


その声に背筋が凍り、フェルナンドの目は宙をさまよう。

次の瞬間、見えない力にフワッと持ち上げられ、小屋の天井付近でピタリと止められた。


「うああっ!?」

足をバタつかせる音が、木造の小屋にかすかに響く。

誰の姿も見えないのに拘束され、息を呑むしかできない――この力の主は、一体……。



フェルナンドは足を何度もバタつかせ、革靴を少しずつズラしていく。


ズルッ……ッ!!

その瞬間、革靴が上手く脱げ、付き人の手元の警報機がビービー!!!と音を鳴らした。


「!!!」

レヴィンは風を切るように一目散に駆け出し、そのままの勢いで小屋のドアを蹴破った。


木片が飛び散り、衝撃で小屋の柱が微かに軋む。


ハリス「ああ……またすぐ行く……!」

付き人「は……早い……」


レヴィンが小屋に突撃し、中を見渡すと宙に浮いたフェルナンドが……!

フェルナンド「暗黒騎士さん……!!」

レヴィン「フェルナンドさん……! 少し待ってて下さいね…!」

「は…はいっっ!」

怯えながらも体に力を込め、落下しないことを祈るフェルナンド。


レヴィンは周囲を鋭く見回す。

気配が…ひとつ…ふたつ…いや、もっといる。


突然、薄暗い小屋の奥から、一瞬の影が飛び出す。


「ぐっ…!?」

レヴィンの背後を狙い、鋭利な刃物や棒状の武器が一斉に飛んできた。


だがレヴィンは蹴り一閃でいなす。

武器は軋む音とともに壁や床に突き刺さる。


さらに複数の気配が室内に襲いかかるが、レヴィンは動じず、武器を抜くことすらせずに攻撃をかわすように叩き当てる。


ドスッ、ドスッ、数人が床に倒れる音が響く。

倒れた者を小型ライトで確認すると、単なる山賊のようだ。


レヴィンは眉ひとつ動かさず、淡々と言った。

「……山賊か。少し期待外れだな。」


その間も、宙に浮かされたままのフェルナンドが微かに震えている。


まだ隠れているな……


「そこにいるやつ、全員出てこい……」

さっきまでのレヴィンとは別人のような、冷たく鋭い迫力を帯びた声に、薄暗い小屋の隅から複数の者の戸惑いの吐息が漏れる。


「俺の時間を無駄にするな。」

その言葉に、隠れていた者たちの足が微かに震え、武器の握りも揺れる。


レヴィンはその隙を見逃さず、片手を軽く前に出すだけで、一歩踏み出した者を壁に叩きつける。

「次は容赦しない。」


その圧倒的な威圧に、山賊たちは互いに目を合わせ、迷いの色を濃くしていた。

レヴィンは冷静に、しかしまるで獲物を狙う鷹のような眼差しで、全員の動きを見極めている。

小屋全体に、静かで重い緊張が張りつめていた。


レヴィンは壁を殴りつける!!!


ドオン....!!

小屋の壁が大きく崩れ、木くずが舞い上がる。


煙と埃の向こうに視界が開け、そこに立っていたのは、怯え切った山賊たちと、明らかに異質な空気を纏った人物――箱をしっかり抱え、動じることなくレヴィンを見据えていた。


「…お前か...」

レヴィンの声は冷たく、しかし静かな怒りを含んでいた。


異能者の目が一瞬光を帯びる。箱の中の宝石が微かに反射してきらめき、周囲の空気をわずかに歪ませる。


レヴィンはゆっくりと前に踏み出し、眉ひとつ動かさず異能者を挑発する。

「箱を置け。さもなくば、ここで全て終わらせる。」


異能者らしき人物の笑い声が、ホコリにまみれてこだまする。

「ひひ…ふふ…」


「…?」

その不気味な笑みに、一瞬だけ後ずさる動きを見せるレヴィン。


宙に浮かされていたフェルナンドは、ようやく床に下ろされ尻もちをついた。

ハリス「大丈夫ですか!?」

フェルナンド「いつつ...何とか」

腰を打ったようだが大事には至らなそうだ...。


ハリスはすぐさま彼を抱き起こし、守るように立つ。


「おい…金と宝石の交換じゃないのか? なぜこの人に危害を加えようとした…」

レヴィンの声は冷静だが、内に潜む警戒がにじむ。


異能者はゆっくりと箱を抱えたまま、薄笑いを浮かべる。

「要望通り…暗黒騎士を連れて来てくれたんだなあ…?」


ハリスはフェルナンドの顔を見つめ、眉をひそめた。

「フェルナンド…お前、まさか…もう金をもらって…?」


フェルナンドは目を見開き、震える声で答える。

「し…知らない…まさか…お前…」


付き人は気まずそうに俯き、声を震わせる。

「申し訳ありません…フェルナンド様のためを思って…」


フェルナンドの顔に怒りと困惑が交錯する。

「貴様…」


その瞬間、ハリスは自分の心の中で冷静に反省した。


――フェルナンドの思考を読んでも、何も出てこなかった。

暗躍していたのは付き人の方だったんだ!!

「僕は…馬鹿だ…付き人の方も読むべきだった…!ごめん....レン...!」


ハリスは深く息を吸い、状況を瞬時に理解した。

――あいつの目的は、暗黒騎士をおびき寄せることだけだったんだ…!


小屋の空気が一瞬にして張り詰める。


覆っていた煙と埃が沈みこみ...異能者の姿が薄らと浮かび上がる。

不気味な笑みを浮かべ、空気ごと周囲をねじ曲げるかのような異質な気配。


レヴィンは静かに一歩前に踏み出す。呼吸ひとつ変えず、全身に張り詰めた緊張をまとい、まるで獲物を狙う鷹のように、相手の動きを見据える。


「……そんなのどうでもいい、かかってこいよ」


その声に、異能者がより一層口元を歪ませた。


辺りの空気がさらに張り詰める――。




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