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地龍を見つけたトールス達

 リチャードの友人、魔法使いであるアルギスの主導で湖の周囲に罠を仕掛け始めた頃。

 先行していた冒険者達に、エドラの街の領主の軍や、トールス達主力冒険者達が追い付いていた。


 国境沿いの砦はまだ先だが、砦に向かうまでのなだらかな山道が大岩で塞がれ、先行していた冒険者達が立ち往生していた。


 迂回しようにも片や急斜面、片や鬱蒼うっそうと茂った森林地帯で馬車が動けず、魔法などで大岩を排除しようと作業していたが、道を塞ぐ大岩があまりにも巨大で頑丈だった為、困り果てていた所に後続が追い付いてしまった状況だ。


「落石か? こんなタイミングで、運が無いな」


 後続の先頭にいたトールス達のパーティ、緋色の剣の面々が竜車から降車して大岩に近付いて行く。

 白銀に金縁の鎧の腰から下だけを装備し、黒いタイトな長袖シャツを着用しただけのトールスが、リチャードの剣と同様に龍の牙と希少金属、アルティニウムを混ぜ合わせた合金製の大剣を肩に担ぐ。


 リンネとミリアリスはそんなトールスの行動から次の行動を予想して「岩から離れて」と誘導を開始。

 その後、先行した部隊が退がるのを確認した2人は二重にトールスと先行部隊の間に障壁魔法を発動すると、トールスに向かって頷いて見せた。


「よっしゃ。そんじゃあまあ、一丁やりますか」


 肩に担いだ大剣の柄を両手で掴み、腰を落としたトールスは爪先に力を込め、やや前傾姿勢に。

 その姿勢のまま身体強化魔法を発動したトールスの身体は、師匠であるリチャードと違い、少々ではあるが筋肉が膨張して血管が浮かび上がる。

 そして同時に氷魔法と水魔法のから派生した雷撃魔法を発動した。


 雷を体と大剣に纏わせ、トールスはその大剣を振り下ろした。


 直後、大剣による衝撃波と横薙ぎの雷電が発生。

 稲光と耳をつんざく雷鳴が周囲に響き渡り、先行部隊の冒険者達の視界を遮った。


 しばらく続いた雷鳴て稲光が収まり、思わず目を閉じてしまった冒険者達が恐る恐る瞼を開くと、視界を遮らんばかりの大岩は跡形も無く消し飛んでいた。

 トールスのたったの一撃が魔法使いの数多の魔法の威力を当たり前のように上回った証左であった。


「よっしゃ! 絶好調!」


「毎回毎回騒々しい技よね」


「そう言うなよミリア。まだ本気じゃ無いだけマシだろ?」


 振り下ろした大剣を肩に担ぎ直し、恋人であるパーティリーダーのミリアリスに笑いながら近付いていくトールス。

 そんなトールスに幼馴染のリンネが「おい」と声を掛けて空を指差した。


「なに、なんだよ」


「まだ仕事は終わってないみたいだけど?」


「ん?」


 リンネの指差した上空を振り返って見上げるトールス。

 その目にはどこから飛んできたのか、樹木が生えた地面をそのまま引っぺがした塊が迫っていた。


「なんだあ⁈」


「地龍の仕業かも知れないわね。相当巨大だって領主様は言ってたし」


「トールス、もう一度頼める?」


「おうよ! 任せなあ!」


 こちらに迫る巨大な土塊つちくれにトールスは再び大剣を構え、今度はその土塊に向かって走り、そして地面を蹴って跳び上がった。


 大岩にそうしたようにトールスは再び雷撃を込めた大剣を土塊に振り下ろす。

 岩が吹き飛ぶ威力だ。土塊はもっと容易に消し飛んだ。

 

 だが、上空まで跳び上がったトールスはその時、遠方に蠢く地龍を目の当たりにして驚愕する。

 過去に自分達が討伐した地龍。

 小さく見積もっても王都の城程もあった、かの地龍。

 そんな個体が可愛く見えるほど巨大な龍が地面を爆ぜさせながら迫って来ているのが見えたのだ。


「で」


「で?」


 仲間の元に着地したトールスがミリアリスやリンネの元に興奮した様子で駆け寄った。


「デッケエ! スゲよアレ! 初めて見たぜあんなデカいの!」


「待って待って、何を見たって?」


 興奮するトールスを宥めようとするリンネの肩を、トールスが掴む。


「地龍だよ地龍! 城なんてもんじゃ無い、山が動いてるみたいだ。 多分この先の坂の上からでも見えるぞ」


 トールスの言葉に「そんなわけないだろ」とリンネは飛翔魔法を発動。

 トールスが膂力りょりょくで跳んだのに対し、リンネは魔力を使い上空へと飛ぶ。

 その間にミリアリスは軍の指揮官に情報を共有。

 部隊をとりあえず坂の上まで動かしてくれるように伝えた。


「巨大、なんて表現は生ぬるいかもね」


「な! スゲェよなアイツ! あんなデカさを強化魔法一つで支えてるんだろ? スゲェ出力じゃん、俺とどっちが上だ⁉︎」


 地上に戻ってきたリンネに、トールスが掴み掛からんばかりの勢いで迫り声を上げた。

 そんな様子にリンネは苦笑し、冷や汗を流しながらトールスに向かって「落ち着け」と両手をかざす。


 魔物は巨大になればなるほど、その重量を支える為に常時強化魔法を使用するようになる。

 そんな相手と、常日頃から鍛錬し続けている脳筋トールスは是非力比べをしてみたいと心から願っていた。


「先行して良いか? 仕掛けてみてえ」


「駄目よ。また飛来物があるかも知れないし。この先の平地で陣を敷くまでは私達は防衛にあたるわ」


「ええ〜。まあミリアが言うならしゃあないか。分かった、我慢する」


「あら。今日は嫌に聞き分けが良いわね」


「まあ後ろにみんないるしな。更に後ろには妹弟子達や先生もいるし、独断じゃ動けねえよ。余計な事して状況悪化なんてゴメンだしな」


 こうしてトールス達は予定より随分早く拠点を設営する事になる。

 そしてミリアリスの言う通り、しばしば訪れる飛来物の襲来から皆を守る為に、他の冒険者達と共に進んだ先の平地にて設営中の拠点の防衛に専念する事になった。

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