↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sランク冒険者に育てられた少女は勇者を目指す  作者: リズ
寒冷期事変

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/116

クラテル地帯に迫る地龍

 シエラ達が魔法陣を設置し終わり翌日の朝。

 テントで体を寄せて眠っていたシエラとマリネスは地鳴りと震動で目を覚まし、飛び起きるように重ねて被っていた毛布を取り払うとテントから飛び出した。


「お父さん、来たの?」


「いや。まだ距離はあるようだ、しかしコレは、軍やトールス達でも止められんとはな」


 テントから飛び出し、慌てて装備を装着しようとするシエラを手で制したリチャードはそれでも視線は野営地から西、トールス達が向かった方に向けていた。


 立ち昇る黒煙や、その黒煙に巻き付くように疾る稲光。

 時折光るのは魔力の奔流か。遥か遠くで戦闘が行われているようだったが、シエラにはそれが何か別の災害のように見えていた。


「あそこに兄ちゃん達が」


「うむ。皆戦っている。私達も戦闘準備といこう。だが、その前に」


 言いながら、シエラと遥か向こうに見える黒煙を眺めていたリチャードがテントの方に振り返った。

 そこに立っていたのはシエラが飛び起きたのに続いて眠りから目覚めた子供達。

 普段なら寝惚け眼を擦り、あくびをするようなまだまだ薄暗い時間。

 そんな時間だと言うのに、子供達の表情は真剣そのものだった。


「今のうちに言っておくが、帰るなら今だぞ皆。相手がただの魔物ならまだしも、相手は龍、それも前代未聞の巨大龍だ。正直な話をすると今の君達ではろくな戦力にはならないからね。どうする? 今帰っても誰も君達を責めないぞ? むしろ英断だったと褒められるだろう。君達で決めなさい、シエラもな」


 その言葉に、シエラは睨むように父の顔を見上げる。


「お父さん。私は逃げないよ?」


「相手はトールス達でも止められない化け物だ、それでもか?」


「逃げない。私は戦う」


「はあ、全く。頑固に育ったものだ」


 出来れば危険から遠ざけたい父の心を理解していないわけではない。それでもシエラは父と、兄弟子達と戦いたかった。

 神達に勇者と見初められたからではない。

 一介の冒険者として、父の娘として、どんな敵からも逃げたくないと、そう思ったのだ。


「すみません先生、俺も帰りません」


「確かに私達の力なんてなんの役にもたたないかもしれませんけど」


「それでも私達は、エドラの街の冒険者で、シエラちゃんのパーティのメンバーですから」


 リグス、ナースリー、マリネスの順でそう言うと、3人はリチャードの目を真っ直ぐに見つめた。

 そんな3人の様子に微笑むと、リチャードはシエラの頭に手を伸ばしてガシガシと撫でる。


「良い友達を持ったな」


「ん。みんな大事」


 リチャードを睨んでいたシエラの顔が、その一言でフニャッと崩れて微笑みを浮かべた。


「よし、なら装備を点検、着用したあと野営地を撤収。余計な荷物は全てシエラのポーチに片付けて必要な物だけ携帯するようにな」


 リチャードの言葉に子供達は一様に「はい!」と答え、言われた通りに装備を点検、着用するとテントやら毛布やらをシエラのマジックポーチに片付けていく。


 そんな時だった。

 黒煙の上がっている方向から低く、腹に響くようなドーンという音が響いてきたかと思うと、その黒煙を裂いて雷光が空へと伸びた。

 リチャード達から見えたわけではなかったが、それがトールスの雷撃を纏った一撃だというのはリチャードにはなんとなく察する事が出来た。


「派手にやってるなトールス」


「アレ兄ちゃんがやったの? 凄い、ここからでも見えるよ」


 空に伸びた雷撃に感嘆の声を漏らすシエラ。

 父が育てた兄弟子の力を目の当たりにした娘は、背中に担いだ聖剣の柄に手を伸ばし、腰に携えた魔銃剣の柄に手を添えた。


「焦るなシエラ。シエラなら鍛錬を続ければいつかトールスの域に達するさ、まずは目の前の事に集中するんだ」


「ん。大丈夫、分かってるよ」


 言いながら、シエラは聖剣と魔銃剣を抜く。

 その様子を怪訝な表情で見るが、リチャードも何か嫌な予感がして「ああ、なるほど、そう言う事か」と肩を落とすと自分の愛剣を抜いてシエラに背を向け、黒煙の上がる西の空を仰いだ。


「みんな武器を取れ、地龍の進行の余波から逃げてくる魔物が来るぞ」


「リチャード、いま探知魔法使ってないよね? なんで分かるんだい?」


 武器を持ち、言い放ったリチャードに、探知魔法を使用したアルギスが聞く。

 その瞬間だった、西に広がる森から鳥の大群が飛び立ち、四方に散っていった。


「私じゃないよ。何か感じたのはシエラだ。まあ確かに考えれば分かった話ではあるんだがね、地面が揺れる程の巨体が移動しているんだ、冬眠で眠りこけている動物も魔物も流石に目を覚ますし、逃げ出しもするさ」


「うん、確かにいろんな反応がこっちにも来てるねえ。どうするんだい?」


「逃げていくだけなら攻撃はしないが、もし土手を上ってきてこちらを襲ってくる様子があるなら、それは迎え撃つさ」


 そう言い放ち、リチャードはアルギスと子供達を連れて移動を開始。黒煙が上がる空を西に見ながら、湖を挟んで東へと土手の上を歩いていく。


 そんなリチャード達の頭上を無数の四枚羽根の黒い鳥が飛び去っていった。

 異様な光景にシエラを含め、子供達は息を呑む。


 トールス達の攻撃を受けながら、それでも確実に巨大地龍はリチャード達のいるクラテル地帯を目指していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=53746956&size=300
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。