14話 冒険者 その2
ラングウェイ・ドルオーラ……Bランク冒険者パーティ「ヴォイド」のリーダーである。面識自体は薄いけど、あまり良い評判を持っていない人物だ。冒険者全体の評判を落としてしまっている人物の一人なのは間違いないだろう。
「なんとか言えよ、カイン君よ」
「なんとかって……別に話をする間柄でもないだろう?」
「何をビビっているんだよ? はははははっ! 心配すんなっての、俺はシウスみたいに虐めないからよ!」
シウスは俺を虐めていたんだろうまあ、まあ、追放はある種の虐めみたいなもんか。それよりもラングウェイは俺が尻込みしていると思っているらしい。言い返してもいいが、シャルナの前だしここは大人の余裕を見せておこう、うん。
俺は謎のプライドでラングウェイとの口論を避ける方向で調整した。
「……」
「しっかし、そっちのメンバーはあの冒険者パーティのグリムハウトの一員だろ? どういう経緯で繋がったんだよ? 似合わねぇけどナンパでもしたのか? もしもナンパに成功したんだとしたら、俺にも分けてくれよ。他にグリムハウトには女がいるだろ?」
「……」
ラングウェイは物凄く俺を見下しているようだった。以前からそうだったが、グリムハウトのメンバーであるシャルナが目の前にいるのに臆している様子はない。シャルナが16歳の少女であることと、グリムハウトがこんな公の場で手を出すはずがないとタカをくくっているのか。
「ねえ、カイン」
「なんだい、シャルナ?」
そんな時、シャルナが明らかに迷惑そうな表情で話し掛けて来た。
「なんなの、この人は?」
「Bランク冒険者パーティのリーダーを務めている男だよ。名前はラングウェイって言うんだ」
「ラングウェイ・ドルオーラだ。よろしくな」
ラングウェイはシャルナを見ながら自信満々に話していた。彼女の見た目はスレンダーな美少女といった印象なので、自分の方が力は上だと思っているのかもしれない。
「しかし、あんたも友人は選んだ方が良いぜ。ナンパで釣られたのかもしれないけどな。男は狼だからよ、ふはははははっ!」
ラングウェイは下品に笑っていた。驚きなのが、俺が本当にナンパを成功させたと思っているらしい。実力でSランクに入るよりはまだそちらの方が現実的だということか。普通に考えれば俺程度の顔でシャルナみたいな美少女をナンパできるはずがないんだけどな……。
「どうでもいいけど、あんたみたいな奴が居ると冒険者全体の評判が悪くなるのよね。もう少し自重してくれないかしら?」
「ああ、なんだとこの女……誰に向かって口を利いているんだ?」
「誰も何もよく分からない奴が絡んで来ているだけなんだし、敬語使う必要ないでしょ」
「てめぇ……」
明らかに場の雰囲気が変わった。ラングウェイは本気で怒っているようだ。まあ、完全にこの男が悪いのでシャルナの意見は正論でしかないのだが。ただ、この手の人間に正論は通用しない。
「カイン、随分とこの男に舐められているみたいだし、少しだけ現実を教えてやったら?」
「現実って……」
「死なない程度に手加減してコテンパンにやっちゃえばいいのよ、こんな奴」
おおよそ、彼女の麗しい外見からは想像できない挑発の言葉。見え透いた挑発ではあったが……。
「いいぜ、面白いじゃねぇか……表に出な、カイン。俺様が直々にぶっ殺してやるよ」
ものの見事にラングウェイは釣られていた。ナンパで釣られるシャルナを注意していた奴がこんなにも簡単に挑発に乗るとはね……。
俺は溜息しかでてこなかった。




