ストレス耐性ってどうやって手に入るのだろう?
短くなりました。すいません。
「要約すると、だ」
ファランはミールィさんの容姿を気に入った。そして、自分のジョブは《芸術家》で、彼が持つスキルは『絵画』。是非ともミールィさんの絵を描きたい、出来たものは譲るから。お願い、マイエンジェル!
という訳か。尚、ロリ巨乳は認めない!ロリはちっぱいだ!だそう。知らんがな。
「お願いします!従者殿!」
「ええい!僕は従者じゃない!他を当たりなさい!ミールィさんはこれから用事なの!」
ファランから事情というか理由を聞くと、思った以上にしょうもなさそうだったので、思いきって切り捨てる。
「そんな殺生な!?」
「はーなーれーろー!」
こら、服を引っ張るな!伸びるじゃないか!
「なんで今なのさ。これから僕達用事が本当にあるから出来たら昼頃には着きたいんだけど!」
「では着いていきます!」
「来なくていい!」
「九十九クン、連れていったらどうかな?私は構わないよ」
「はい!?」
僕にしがみつくファランを振りほどこうとしていると、ミールィさんから驚きの言葉をかけられる。
なんであなたが了承しちゃうの!?
「天使様ぁ!」
「ただし!手短に、素早く終わらせること!あと、私達はこれから用事があるから、それが終わったあとね。良い?」
「了解です!」
「ええー……」
と、なし崩しでミールィさんが受け入れてしまった。
大丈夫、かなぁ?そこはかとなく不安なんだけど。いや結局の所、ミールィさんの自己責任なわけだから僕が口出しするのはお門違いなわけなんだけどさ?面倒事に巻き込まれそうな予感がするのは気のせいだと思いたい、なぁ……。
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そんな訳で、とりあえずとばかりにファランとフレンド登録を僕とミールィさんは交わした。何故僕も?別に良いんだけどさ?
「ほら、ここが俺の知り合いのいる所だ」
「ほー」
「へー」
で、一歩引いて静観していたフェルトが案内したのが今僕の目に映る鍛冶場だ。あー、うん。イメージの鍛冶場と大体同じ感じかな?奥の方からカンカンカンと鉄を叩く音が聞こえてくる。
「おーい、来たぞー」
「はーいはいはいはーい!」
フェルトの声に前のめりで返事をしたのは、艶やかな女性の声だった。勢いよく、奥から飛び出してきた。
「フェルトー!気まずいー!助けてー!」
「なんだよ一体?」
「タード君がなんかピリピリしてるのよー!一人黙々と謎アイテム作ってるしー!」
「あいつが?ふーん……。まあ、そんなことよりお前らに客だ」
「客ぅ~?そんなことよりって本当あなた酷い、わ……ね……」
「?」
「…………か」
「か?」
「か?」
「可愛い!」
「させん!」
「うひゃぁ!?」
瞬間、僕達は交錯する。女性はミールィさんに獣の如く飛びかかり、僕はややこしい話はごめんだとミールィさんを抱え、ミールィさんは驚きに悲鳴をあげる。
「ちょっとっー!」
「いい加減後にしてよ!」
こっちは今日面倒事にあってばかりなんだよ!少しはまともな奴出て来いよ!
僕の平穏は何処に行ったんだろう。
「ふんふんふ~ん?」
「なんでしょう?」
品定めをするように僕をじろじろと見つめる女性。なんだおらと若干イラついて目もとの鋭くなる僕。
数秒ほど対峙すると、にこーっと発泡スチロールで作ったような笑顔を浮かべてくる。見覚えのある笑顔だった。お返しに紙粘土の模型のような笑みをプレゼントした。
どうやらこの人とは、とーっても仲良くなれそうだ。間違いない。
「あなたのこと気に入ったわ~。是非名前を教えてくれない?」
「九十九です。どうぞよしなに」
「よろしくね~?私はμ蘭っていうの。フレ登録しない?」
「しな~い」
「残念ね~。じゃあとりあえず工房の案内しましょうか?」
「よろしく」
「りょ~か~い」
「ほら、行くよ?」
「あ、う、うん」
「お、おう」
「はい」
「?」
どうしたのだろう?ま、良いか。μ蘭なる彼女に気を配っておこう。恐らくだけど、彼女はあの人と同じ享楽に身を委ねて破滅する人だ。適度な距離を保って接しよう。
「(おい、九十九のやつ一体どうした?なんか今まで見たことの無い笑みを浮かべてたんだが?)」
「(私もよく分かんないよ!むしろμ蘭なるあの女史が気になるんだけど?)」
μ蘭に着いて行くと、鍛冶場の奥に案内される。生産職の秘密とか無いのか?いや、生産に手を付ける気は0の僕やミールィさんには関係無いかつ理解できない話か。フェルトは知り合いなので除外するとして……さっき知り合ったばかりのファランか。ん~、でもミールィさんが一言言えば済むと思うんだよなぁ。あの態度からして。最悪、僕秘蔵のミールィさんコレクションを売れば問題無いか。
「タードく~ん、お客さ~んって聞いてないか」
「失礼しまーす……うわぁ」
なんだこれ?僕達の目に、大量の雑多かつ謎の物品が積まれているのが映る。僕の後からそれらを目に入れたミールィさんやフェルトも同じように驚きの声を洩らす。
当然か。謎の物品は、僕達の知る物の面影を残しつつも、全く別物になっている。三叉槍の穂先を斧の刃と入れ換えたような武器、剣の刃が腹の部分からも出ていて計4つの切る部分が存在する異形の剣、獣の牙を模した刃が二枚ある鋏に似た形態の短剣、etc……。
その山のみではなく、その向こうにも積まれた山がある。あちらは……釘バットがある。作ったの!?釘バットを!?……槌術対応してたら使いたいな。後で鑑定しとこう。他にも、面白そうな物がちらほらと……うん、ここ楽しいね!
「μ蘭とかいうのがいると思ったら、意外と楽しめそうで良いねここ!」
「九十九クン、そういうのは小声で言うんだよ」
「あ、そうだね」
「……いや、そもそも口に出しちゃ駄目だと思うけどな?」
僕とミールィさんが目を合わせてしーとしてると、横からフェルトに言われる。
あーあー聞こえなーい。




