空腹とレストラン
誠「…おーい?セナー?」
今、俺達はセナの部屋の前で集まっている。実はセナはくすぐり倒されたあと、フラフラと自分の部屋に戻り鍵を閉めてしまったのだ。まあ…要するに拗ねてしまったのだ。
ベル「…返事してくれませんね。」
千夏「まあ…やりすぎちゃいましたからね…。」
アイラ「誠、どうするんだ…?」
誠「どうするって言われてもな…。」
剣聖「…なんかお腹空いてきちゃったな…。」
誠「のんきだなお前は…。」
アルス「…でもかれこれ一時間位経ちましたよ?」
アルスの言うとおり、実際かなりの時間が経っている。正直俺もお腹空いてきちまったし…どうするかな…。
誠「…まあ、とりあえず皆は飯食って来なよ…。」
ベル「いいんですか?誠さんもお腹空いてるんじゃ…。」
誠「俺は別に大丈夫だよ…。」
剣聖「お腹擦りながら言われても…。」
誠「だ、大丈夫だって…だから行ってこい。」
アイラ「へー…珍しく優しいな。」
誠「…一言多いぞ…。」
そんな会話をしたあと俺は、一人セナの部屋の前で立ち尽くしていた。はあ…腹減ったなあ…飯食いたいなあ…。
誠「…セナー?出てこいよー…出てきてくれよ…頼むよマジで…。」
俺はお腹を擦りながら、死にそうな目でドアを見つめた。どうせ開かないだろうと思っていた、のだがドアはゆっくりと開きセナが現れた。
誠「セ、セナ!やっと来てくれ…」
セナ「お腹空いた…甘いものも食べたい…。」
誠「そ、そうすか…。じゃあギルドに…」
セナ「いや…。」
誠「…へ?」
セナ「ギルドのじゃなくて…クルールのレストランがいい…。」
誠「いや…でもレストランなんて凄い高…」
セナ「レストランがいい…!」
誠「あ…はい…。」
俺は準備を終えたセナと、転移魔法でクルールに向かった。それからはセナに案内してもらい、物すごーく高そうな建物に到着してしまった。
誠「なんすか…ここ…。」
セナ「レストラン…。」
誠「…高級ホテルか何かに見えるんですけど…。」
セナ「そんなことない…とにかく入る…!」
誠「う…うぃっす…。」
俺はセナに強引に手を引かれ、レストランらしき建物の中に入った。中は食欲をそそるいい臭いが広がっていた。
誠「…で、何頼むの…?なるべく安く済ませてね…。」
セナ「わかった…じゃあ…」
セナはテーブルに置いてあったメニューを開き、俺に向けて人差し指をメニューの端に指した。…まさか…
セナ「ここから…ここまで…。」
誠「全部じゃねーかっ!!」
セナ「だ、だって…どれも美味しそうだから…。」
誠「確かにそうだけど限度があるだろ!限度が!」
セナ「の、残さず食べるから…。」
誠「そういう問題じゃないわ!金の心配をしてんだよこっちは!」
セナ「…レストランでうるさくしたらダメ…。」
誠「…お前な…。」
俺はため息をつきながら顔を落としたあと、テーブルに置いてあったボタンを押した。数秒経つと店員が注文を受けに来た。
店員「ご注文は?」
セナ「ここから…ここ…。」
店員「えっ!?ぜ、全部ですか…!?」
誠「すみません…お願いします…。」
店員「わ、わかりました…。」
店員は早足で何処かへ行ってしまった。その直後、周りにいた店員達が急にあたふたとし始めた。…ほんとすみません…。
店員「お、お待たせしました…。こ、こちらで最後になります…。」
誠「ど、どうも…。」
セナ「……!」
店員は1メートルはあるかもしれないパフェを、テーブルに置き一礼して何処かへ行ってしまった。
誠「あ、あの…これ一人で食うんすか…?」
セナ「…?当たり前…。」
誠「お、俺にも一口…」
セナ「ダメ…!」
誠「即答!?なんでだよ!?」
セナ「ダメなの…!」
誠「ひ、一口でいいから!」
セナ「…ほんとに一口…?」
誠「ああ、約束する!」
セナ「…じゃあ…」
セナはパフェに刺さっていたスプーンを手に取り、巨大なパフェの一部を掬って俺の方に差し出してきた。
セナ「はい…あーん…。」
誠「…えっ!?あ、あーん…。」
セナ「美味しい…?」
誠「お、美味しい…。」
セナ「そう…。」
誠「も、もうひとく…」
セナ「ダメ…!」
誠「…うぃっす。」




