鋼鉄の磁蛇(アイアン・サーペント)
ポルックスが投げた投げ縄は弧を描きポイントレバーに向かって伸びてるが距離と勢いが足りない。
列車の速さの流れを断ち切れない。ゆるゆる衰えるスピード。
コマ送りのように見える投げ縄。
失敗だ――脳が一瞬そう判断した。
だが、ポルックスは諦めてなかった。
「届かない――だが、諦める気は微塵もない。」
ムチのように腕から力をワイヤーへと伝えた。
大きく振り抜いた勢いを受け、ワイヤーがしなり、波を打ちながらレバーへ飛ぶ。
足りない部分は引き寄せればいい。次の瞬間、ワイヤーに強烈な磁気を流し、先端を磁石へと変えた。
微かな引力が走る。
空気が震え、ワイヤーの先端が金属を求めて吸い寄せられる。
「引き寄せろ……! 『鋼鉄の磁蛇』!!」
手に力を集中させる。
磁力がワイヤーを駆け抜け、レバーの金属が反応する。
磁光を帯びた鋼の蛇、レバー部分に惹かれる。
ワイヤーの先端が、金属の柄に引かれる。
――入れ。
カンッ。
細い音とともに、ワイヤーが柄をかすめ――通った。
「入った!」
先端は柄をかすめ、そのままグリップ部分へとゆっくり滑り落ちる。
すぐさま引き絞る。
ワイヤーが締まり、レバーのロックが軋む。
ギギギ、と金属が悲鳴を上げた。
ワイヤーから重い抵抗を感じ取る。
車掌から合図が出た。 一気に引っ張る。手にワイヤーが食い込むが気にしてられない。
たわんでいたワイヤーが一気に張り、力がレバーへと伝わる。
簡単にはレバーは切り替わらない。
腰を落とし、体重をかける。
ガッ、チャアアアァァァンッ!!
雨音の中で響き渡る。
――切り替わった。
先頭車両が右へ流れていく。
ポルックスは息を吐く間もない。
だが、終わりじゃない。
まだ――切り返しがある。
「カウント入るぞ!!」
車掌の声が飛ぶ。
ポルックスはワイヤーを握り直した。




