陶器姫
この世界料理と動物はこちらの日本とほぼ同じです。疑問は…持たないでください!
大国ルーラン、大きい国であるだけに、政策が行き届かぬところは嫌でも存在する。そんな治安が悪く生活困難の物が集まる貧民街に、「陶器姫」と噂される少女がいた。年は14。7歳に両親を事故で亡くし、孤児院などという制度はまだないこの国では近くの貧民街での生活を余儀なくされた子供である。貴族と一部の偶然力を授かったものにしか使えないはずの魔法が使えるようではあるがどのくらい才があるかは不明。少しでも使えるならば受け入れたいと願う貴族がこの年まで現れなかったのは不思議な話であるが、それは彼女の容姿にあるのだろう。7歳までは割と良い育ちだったようで、立ち居振る舞い、読み書きなどの教養は備わっている。しかし、事故のショックなのか7歳までのきつい教育で感情を隠すようになってしまったのかはわからないが、彼女の顔にはまるで血というものが通っていない。血が凍っている、などと評するものもいるが、そもそも血が通っていないのではないか、というのが一般的に使われる「陶器姫」という二つ名の由来だ。本来の名はトレーリンらしい。持ち物に書かれていたのを、森の中から保護した人が発見したそうだ。その人は人は良いが財がなく、残念ながら保護してあげられなかったが。本人が町を通りかかる人に話したことによると、教養に関することなどは覚えているものの、何に熱中していたのかも、生い立ちに関することも何もかも覚えていないのだという。まあ、ポーカーフェイスは貴族の強みともいうのだが彼女ほどになると流石に無愛想だ。そんなわけで引き取られないのである。
この世界には階級制度がある。
フィー:貴族
フィナ:王
フィニ:王族
フィヌ:上級貴族(公爵家、侯爵家)
フィネ:中級貴族(伯爵家、子爵家)
フィノ:下級貴族(成金男爵家)
メー:平民
メナ:貴族向けの大商会、宮廷御用達職人、超大規模農家
メニ:平民向けの大商会、平民に人気の老舗職人、大規模農家
メヌ:中商会、そこそこ売れている職人、中規模農家
メネ:小商会、売れていない職人、小規模農家
メノ:家もなく、物乞いでその日その日を生きていくような貧民
フィノがなぜ成金男爵家なのかというと、ある程度功績を上げ続けていれば嫌でも王の目に止まることで、内戦で地位が空いたり、外国と戦った時にあちらに裏切ったりしたものの場所に入れて子爵家以上にはなるものだからだ。まあ、トレーリンは言うまでもなくメノであるが。
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「んんっ。おはようおじい」
「ああ、おはよう」トレーリンはお爺とともに路上の、屋根が抜け落ちた家にいる。いる、と言うのは雨風を全く防がない場所の軋んだ木の床の上で寝るのにしか使えないからである。お爺は私を保護してくれた人。だがメノ同士では苦しい生活しかできない。当たり前である。お爺は10年ちょっと前まではメネの木工職人だったそうだが、妻子もいない。技術もない。若さもない。ないない尽くしでメノに落ちてしまったようだ。
「トレーリン、お客様だ」
「またか…」このところトレーリンのもとには客がよく来る。そして私を見て何やらコソコソつぶやいて、好奇の目で見つめてくる。トレーリンの表情筋は死んでいない。ただ動かすに値するようなことが起こらないだけで…。いきなり来て世間話をしていく謎の者たちにニッコリ微笑みかけられるのはよほど鋼のメンタルの人だけだろう。お爺の前ではいつも微笑を浮かべているが、彼らに対しては表情が抜け落ちて真顔になってしまう。そんな当たり前の理由と彼女の不思議なくらいの冷静さのせいで、陶器姫なんて呼ばれているのは、トレーリンに知る由もない。トレーリンは金髪に黒い瞳を持っていた。金髪はよくいるが黒い瞳は珍しい。そのせいもあって常に噂の対象だった。
「客は?」
「広場にいるよ」
広場とは、王都の中のメノ街の中心地だ。まあ中心と言ってもそこで物乞いをするとメノを通って王都のメナから燐領のメナへ行く人が多くやりやすいと言うだけなのだが。広場には噴水がある。水は出ていないが、かつてはそこに住む人々の憩いの場であったのであろうそこに腰掛ける人物を見つけた。
「こんにちは」
「あ、こんにちは」
「あなたが陶器姫?」
「そう呼ばれているみたいですね」話しかけてきた人は綺麗な女の人だった。フィーだろうか。その後ろには従者が控えていた。
「これはまた号泣したガマガエルとくしゃみをしかけた深海魚のオジサンを足して二で割ったような…
体は…牛?いや、豚だ!」
「何か」
「あ、いえ。なんでもありません」
話す人がお爺しかいないせいか、トレーリンは独り言が出やすい。特に聞いたら怒られる系の…。
「陶器姫、これをあげるわ」そう言って差し出してくれたのはシンプルなフランスパン二つだった。トレーリンが有名になり始めたのは10歳のなかば。いつもはおじいがしていた物乞いを老化し始めた彼に変わってしだしたところ、美しいが愛想のない子供がメノにいる。どうやら魔力の片鱗も見えるらしい。などと囁かれるようになった。それからと言うもの、このように何もしなくてもあちらから必要最低限の食べ物を恵んでくれるのだ。物乞いはこの世界では当たり前だし、この世界では貧しいものに衣食住をあげることも富を持つものの勤めだったことも関係しているのだろうか。
「ありがとうございます。」するとオジガエルが進み出てきた。
「この後2人で話せますか?」声はなかなかにイケボだ。
「はい。オジガエル」
「お、オジガエル?」
「あ、…すいません」
「まあいい。こっちへ」
連れて行かれたのは細い路地裏だった。
「陶器姫、メヌになりたいですか。」
「へ?」
「メヌになりたければ私の屋敷で下働きとして雇ってあげますが。」
これまでもこうした誘いはたくさん受けてきたが、雇っている側の階級よりも二つ階級が下がる下働きでもメヌということは…この人、メナか。主人はフィーのどれかで間違いなさそうだ。今まで待遇がさらに下がることを警戒してこれ関連の誘いは断り続けてきたが、メヌというのは魅力的である。
「なんなら共に暮らしているらしいおじいさんの木工作品をうちの商会で取り扱ってあげてもいいですよ。ウチはフィー用家具専門の商会なので。」
この言葉に私は即決した。
新しい作品を初めてみました!主人公は基本的に冷静ですが人情はあるタイプの基本的に無表情な少女。オジガエルとの関係性はいかに…?結構長編になる予定です!気に入っていただけたらお付き合いお願いします!




