ギャルとオタク、ショッピングに行く 壱
「待たせたな」
「ギャル君、本気と書いてマジで遅いのだが」
駅前で、待ち合わせた二人は、ショッピングに向けて、歩き出した。
「すまんすまん、まあ、お菓子上げるから、許せよ」
オタクは、お菓子をバクバク食べる。
そして、モグモグしながら、
「はっ、何言ってんだよ、十分も遅れといて、俺が、菓子程度で許すわけないだろうが!!」
オタクは、全て食べきり、箱をゴミ箱に捨てた。
「いや……体と心がアンマッチ過ぎるだろ!!」
「細かいこと、気にしてんじゃねーよ、ぱぱっと、買い物して、サクッと終わらせるぞ、さっきの菓子の、歯応えのようにな」
オタクは、強烈などや顔を披露する。
「上手くないし、面白くないし、しかも、女の子との買い物をサクッと終わらせるとか、言うんじゃねーよ」
「はい、出ました、女の子宣言。ギャルは、女の子じゃなくて普通に女だから、どこに(子)の要素あるんだよ」
「テメェ、なんつった? 今なんて、言ったのかなー?」
「ごめんなさい、ごめんなさい、頭握り潰さないで、(子)の要素満載、凄い量、何か、思いつかんけどヤバイくらい多い」
「もっと、誉めろ、そしたら頭から、手離してやる」
「えっと、力が強くて、素敵だし、その、野性的な逞しさに、心が、引かれる、憧れる♪」
「ふざけてんなーこのまま、あの世に行きな」
「痛い、ナチュラルに痛い、何かミシミシ言ってる」
オタクは、真面目な顔になり、
「言動や、行動はチャラそうに見えるけど、実は、しっかりと自分を持っていて、一貫性があるところが、素敵だと思う。頭も良くて、俺の質問にも適当に返さないで、しっかり考えて返してくれることに、俺はいつも感謝している、ありがとう」
ギャルは手を離して、指をツンツンしながら、
「何だよ、やれば出来んじゃねーか」
頬っぺたを少し赤くして、照れていた。
「今さら、女の子らしくしても無駄だわ。先ほど逞しい握力を披露してた事実は消えないぞ」
「もう一回、やってほしいのかなー?」
「ちょ、いやな、待て、落ち着け。俺は貶してる訳じゃない、むしろ誉めてるんだ」
「聞こうじゃないか」
「女は自立して、自分の意思で動ける人格者だ。女の子の(子)は、子供の子だろ、ギャルは自分の意思で動いてるから(子)ではないだろ」
「めんどくせーな、まあいいわ、許してやるよ、このテンション疲れるから、もうやめるぞ」
*
「ギャルは、エスカレーター派、エレベーター派どっち?」
「深くかんがえたことないなー、いつも乗るのは、エスカレーターかなー」
「そうか、まあ今回はギャルスカート短いしエレベーターで行こうぜ」
「いい気の使い方だな、プラス一ポイント、百ポイント貯まると良いことがあります」
「貯めんのめんどくさそうだから、考えないでおくわ」
ギャルとオタクは、エレベーターに乗り込む。
オタクは、最上階のボタンを、物凄い勢いで、痙攣連打し始めた。
「オタクさん、今すぐその奇行をやめなさい」
「ギャル君、知ってるかい」
「何だよ」
「ここのエレベーターは最上階を連打すると、天空の城ラポタに行けるのだよ」
「マジで、スゲーな」
「ああ、隠しコマンド的なやつだ」
「天空の城ラポタ楽しみだな、頑張れオタク」
「おお、見とけよ」
オタクは、最上階までボタンを連打し続けた。
チンと、音がなり、ドアが開いた。
「ついたぞギャル君、ラポタにようこそ」
「わーい、って、普通の服屋が並んでるだけじゃない?」
「天空の城ラポタも、リニューアルしてな、まあ、こんなもんだ」
「これ以上嘘ついたら殴るぞ」
「嘘です、ごめんなさい」
「今日荷物持ちしたら、許す」
「わかりました、やります」
*
ギャルは服を両手に持ち、オタクに見せる。
「どっちがいいと思う?」
「ギャル君、君は根本を間違っている」
「何が?」
「センスのない俺に聞くのはナンセンスだ」
「別に良いじゃん、選べよ」
「じゃあ、右手のやつの方が可愛いと思う」
「そうかい、じゃあこっち買おう」
ギャルはオタクが選んだ逆の服を持っていこうとする。
「俺が選んだ方、買うんじゃないんかーい」
「うそうそ、オタクが可愛いって言ったやつ買うよ」
「それはそれで、複雑だな」
「オタクは、服買わないの?」
「俺は、ネットで買うから大丈夫」
「風情がないな、今日買おうぜ、選んでやるからよ」
「今日の俺の服そんなにダメ?」
オタクは、ジーパンにシャツ一枚のシンプルな服装である。
「いや、悪くないよ」
そして、ギャルは自分を指差して、
「私はどうよ?」
ギャルは肩が出る大きめのスウェットに、ミニスカである。
「ああ、可愛いと思うよ」
「そういうのは先に言えよな」
「それって、やっぱり必要なんかな?」
「女は可愛いって、言われたい生き物なのだよ」
「じゃあ可愛くない女の子はどうすんだよ」
「オタク君、大きな間違いをしているようだな、可愛くない女の子はこの世にいないのだよ」
「いや、いるだろう」
「いない」
「いる」
「いない」
ギャルは拳を突きだし、グーパーして脅す。
「わかった、仮に可愛い女の子しか、この世にいないとして」
「そう、それで良い」
「いないとしたら、いちいち可愛いと言う必要なくね? それは、あなたは人間だねって、言ってるのと同じ意味になると思うけど」
「オタク君、可愛いと言うこ言葉は、もはや、(おはようございます)なのだよ」
「マジで、挨拶なの?!」
「そうだ。心のメモ帳に刻んでおきな」