第1話:1枚の詩
私は今高校生なんだけど、そんな学校生活を送ってる中でとても生きがいにしていることがある・・・・
それは、今部活の軽音楽部で活動している私たちのバンドだ。
私はボーカルで双子の妹とデュエットしてるんだけど・・・あ、えっと、で、やっぱり双子って事で一卵性双生児ということなので、
同じを恰好をしたりすると見分けがつかなくなるから、今ではずいぶんと違う格好をしている。
それで話を戻すと、他のメンバーには普通のバンドみたいにドラムとギター、まぁアコースティックなんだけ
どね。それとドラム、ベース、キーボードって事になってるんだよね。んで私がボーカル兼キーボードって訳。
さっきデュエットって言ったけど、ほとんどが妹主体で私はコーラスだけなんだよね、たまーにメインで歌ったりもするんだけどね。
そして私たちが活動の拠点としているライヴハウス『双葉』では、みんながお金を出し合って練習をしている。
なんかもう長いこといるせいか、お得意さんになっちゃっている。
ちょくちょくそこのミニライヴなんかにも出させてもらって、友達に聞くとファンも出来ているらしい。
機材的な面では、みんな必死にバイトして各自いい楽器を手に入れた。
私のキーボードは結構値が張ったので、自給700円の微妙な収入を必死に貯めていった挙句やっと買えた代物だ。
中には、ギターを手に入れるために親にせがんで借金をしてまで買った人までいる。
以後その子は、バイトを頑張って今も地道に借金を返済しているところだ。
そして一番楽をしている輩は私の妹の藍香だ。藍香はほとんどボーカルのみということなので細かいものは買
うとしてもこれと言って高価な物は買ってないわけで、懐を痛めずに・・・とゆうか労働をせずに今がある輩だ。
まぁそんなことはともかく私は今日も『双葉』さんで皆で練習する予定だ。
それと今まで言い忘れていたけど、私の名前は野宮和枝とゆう名前だ。昔に学校の行事だったか宿題だった
かで自分の名前の意味を親に聞いてくるといったもので親に名前の意味を聞いたところ、
『和』を入れたからおっとりとしてほしいのと、『枝』の意味としては、いろいろな才能が伸びていってほしいといった意味があるから
らしい、親のその時の態度はすごい動揺が見られたからその場でどうにか考えたんじゃないかと私は思っている。
と、そんな事は置いておいて、私は今とても生きがいにしていることがもう一つあった。
それは、同じバンドのメンバーのベースを担当している藤田っていう男子に恋らしきものをしているということ。
どうも最近、藤田の奴が近くにいると気になってしまう。そんなことはライヴハウス『双葉』でもよくある。
例えば、練習中に皆で音を合わせる時があるんだけど、その時にそいつの事を気にしているせいか、
音が走ってダメ出しくらってしまう。まぁそんな時に真剣な表情をしている彼もかっこいいとか思っちゃうんだよね。
まぁそんなとこで、私、野宮和枝は一人の男子の事が好きになってしまったようですね。
とりあえずそろそろ藍香と家を出る時間なので話を切り上げることにします。
じゃあ行ってきます。
「藍香ー、もう家を出るよー。早く用意をして下に降りて来ーい」
やたらと言葉に伸びが多くて、だるそうにしている姉だが、実際のところは早く『双葉』に行きたくてうずうずしていた。
「はぁ〜い・・・今行く、ちょっと待って」
それとは逆に妹の方は本当にだるそうな声をあげ、2階から姿を現した。
「かずえー、用意するの早すぎる。あたしもうちょっと寝てたかったんだけど」
「知らないよそんなの、今日はもう『双葉』の予約とってあって、一時間無駄にするお金もないでしょうが」
藍香は眠け眼をごしごしと手でこすりどうにか完全に起きようとしながら、入口かけてある上着を羽織った。
「よし、じゃあ行きますか〜和枝」
エイエイオーとでもするかのように腕を天にかざし気合いを入れた藍香であった。
「あんたがそれを言うな、とゆうか全部藍香待ちだったんでしょうが」
「たしかにそうだったね」
まったく罪悪感がなかったかのように天にかざした手を下ろし、
玄関にある自分の長い間履いている靴を何の造作も無く履き、早々とドアノブを開け外へ出ていった。
「まったく勢いはいいんだから」
そんな藍香を見ながら、和枝はぶつくさと藍香の後を追うのであった。
そして辺りは、冬のためか寒々しい風が彼女達を取り巻いていた。
遠くに見える大木も葉を散らし木だけの寂しい姿を見せていた。
「うわっ、寒い。やっぱり今日はやめにしない?」
さっきの勢いは一体どこに行ったのか、既に帰宅モードに藍香は入っていた。
「何言ってんの、帰る訳ないでしょ。とゆうか今日はキーボードは運んであるからいいじゃない」
「うー、でも運んだっていうか放置っていうんじゃない?」
機嫌を損ねたようか、皮肉った口調で藍香は言葉を返した。
「うっさい、あれは運んだって言うの」
そんな事を言った直後に和枝はこんな事を思っていた。
まぁ確かに、一週間もあそこに置いておけば放置っていうのもあながち間違ってないけどさすがに気にしてる事
をストレートに言われると誰だってムッとくるでしょうが。
「あ・・・じゃあとりあえず『双葉』に行こうか」
「そうだね」
そう言って短く言葉を切った、和枝はスタスタと先に歩いていった。
そして色々とごたごたもありながらも、近くのバスを経由して、
歩いて少しの所にあるライヴハウス『双葉』に到着した。
「じゃあとりあえず、中に入るよ」
「うん」
やはりこういう時は姉が強いのか、和枝が先導してライヴハウスに入っていった。
「おはよう、和枝ちゃん、藍香ちゃん」
「おはようございます、双葉さん」
和枝はそういってぺこりと頭を下げ、藍香はワンテンポ遅れて会釈をした。
それとここ、ライヴハウス『双葉』は店長の苗字をそのまま使っただけだから店長の名前はもちろん双葉だ。
「あの〜、藤田君とかってもう来ていますか」
別に意識するわけでもなく、勝手に彼の名前が口に出ていた。
最近はメンバーの事をいう時になにかと藤田という名前を強調してしまう。
「ああ、もういるよ。君たちが一番最後だよ」
「あっ、そうなんですか。ありがとうございます」
軽く会釈した和枝はそそくさとみんながいる部屋へと向かっていった。
後ろでは店長の双葉さんが軽く振っているようであったが、それを見ていたのは藍香だけであった。
いつも通りにゆっくりと二人は廊下を進んでいった。みんながいる部屋に近づくにつれてギターやらドラムの音
が聞こえてきた。そして二人はいつも使っているスタジオの防音用の重たい扉をゆっくり開けた。
扉を開けるとすぐさま一人の男の声がとんできた。
「おせっせーぞ二人共、今まで寝てたのか?」
第一声を発した茶髪の長髪の男、そいつは和枝が恋愛中の彼、藤田ではなく、ギター担当の上条健であった。
「寝てたって・・・寝てたのは藍香で私は起きてたから」
「じゃあさっさと起こして来いっての」
「違うよ、和枝が寝てたんだよ」
すかさず藍香が嘘の訂正を流した。
「違うでしょ、藍香が寝てたんでしょうが、というか私は早く起こしたよ」
「分かった・・・とりあえず黙れ」
そんな事を言っている彼だが、実際はこの中で一番練習熱心でほんとは仲間思いである・・・たぶん。
「まぁ、そんなことゆうなよ上条。じゃあとりあえず二人とも自分の準備でもしてくれ」
そう、これが私が今とても気になっている彼、藤田直樹である。
「お、おはよう藤田君。今日も頑張ろうね」
少し動揺気味ながらもなんとか返事を返せた和枝であった。
そして彼女は藍香に放置してあると言われた、2段式のブルーのキーボード引っぱり出した。
正直値が張っただけに、機能は充実しているし、音は良いということなので自慢のキーボードだ。
「そんじゃ、このあと合同練習するから二人はすぐにでも出来るようにしといて」
「あいあいさー」
適当に返事をする藍香をしり目に和枝は指を慣らしていった。
そういえばドラムの紹介をするのを忘れていた、ドラムの担当は私の親友でもある天野咲だ。
なんでドラム担当になったのかというと、一番最初の段階のメンバーの中でずば抜けてリズム感が良かったからだ。
裏話をすると他にドラム志望の人がいなかったからというのもある。しかし、音楽に関しては天性のものを持っている・・・気がする。
「じゃあそろそろ合わせますか」
上条は気合いの入った声でそう言い、周りを活気づけた。
「了解」
活気づいたスタジオ内は外が冬という事を忘れさせるほど熱気で暖まっていた。
私たちのバンドは何故か上条がアコースティックギターを買ってきたためロック系が出来なくなってしまい
ゆったりとした、バラードが中心となっている。
それで、アコースティックを買った本人は皆にそれを言われたためにいつの間にかものすごく上達していた。
最初はコードのFが弾けないと嘆いた彼であったが、今ではかなり難しいアルペジオでもこなせるようになっていた。
そして話は戻るが、そんなバラード系の歌主体でやってる私達であるけど、その曲はカバー曲だけでなく
自分たちのオリジナル曲もある。大概のオリジナル曲の詩を書いているのは、藤田であった。
そしてそれに私と上条と天野が演奏をつけて、妹の藍香がそれに歌という命を吹き込んでいるわけだ。
そんなかんじで、プロと比較したら大したものじゃないけど、自分たちでも曲を作っている。
ほとんどの曲はドラムが出だしで一定のリズムを刻んでいって、その後にギターとベースが入っていくのが主体となっている。
そして私のキーボードはちょこちょこと曲入ったりとか、出だしから曲に参加するなどいろいろな形で役立っている。
もちろん私は、藤田のベースラインだとか歌の歌詞が気に入っている訳で、それとかもあって彼の事が恋愛対象になったんじゃないかと思っている。
「よし!!今日はこれで上がりかな」
元気よく藤田が終了の時間を告げた。
時計を見るとちょうど12時に差し掛かろうとしていたところであった。
「そうだな、今日はこれで終わりだな」
続いて上条もエレアコのシールドの先にあるアンプの電源を落としてギターをケースにしまい始めた。
皆が一斉に片づけに入っていた。
そんな中、藤田が急にドアを開け外に出ていった。そしてなんと私を手招きしていたのであった。
♪
「え、え?何藤田君?」
完全に動揺しきっている和枝は、今周りから見たら唯の変人であろう。
「えっと・・・その、この前さ、詩を作ったんだけどこれ皆で音つけて、みやが歌ってみない?」
「ふぇ?・・・えぇ〜〜〜!?・・・私でいいの?」
ありえないといった表情の和枝はいつものドキドキはどこにいったのか、藤田に迫った。
「うん、たまにはみやがソロで歌ったたらいいんじゃない?演奏の方は皆が頑張ればいいものが出来ると思うし」
「・・・うん、頑張ってみるね」
そして二人は皆がせっせと機材を片づけているスタジオに戻っていった。
どうしよう、私あんなもの頼まれてしまった・・・私にはたして歌うことは出来るのだろうか?
けど、まだ歌詞とか見たわけじゃないから、できないなんて分かんないもんね。
とりあえず藤田君の期待に応えられるように頑張らなくちゃいけないのかな。
そうだよね、前向き考えれば平気だよね、ポジティブシンキング、ポジティブシンキング。
そして片づけを終えたメンバーは店長の所に退出のあいさつをしに行くところであった。
「双葉さん、もう上がります」
そう言うと、奥の方から双葉さんがそそくさと出てきた。
「あぁ、まいど今日もお疲れさん」
店長のその言葉の後、5人はお疲れさまでしたときまったように言い店を出ていった。
「そんじゃあ、今日はこれで解散」
上条の言葉で皆が一斉に家に帰っていった。
家への帰宅途中のバスの中、人がまばらになってきたバスの中で出来れば聞かれたくないことを藍香が尋ねてきた。
「そうだ和枝、さっき藤田になんて言われてたの?」
「え?えっと・・・それは」
もじもじとして答えようしない和枝を、藍香の鋭い一閃が突き抜けた。
「もしかして、曲を作ってくれって言われたの?それとも付き合ってと」
藍香が最後まで言い終わらないうちに、和枝がものすごい勢いで口を塞ぎそれを止めた。
「おまえ!最初の方は大体あってるとして、つつつ、つ、付き合っ・・・・てとか」
「和枝、声でかい」
藍香の宥めるようなその声で我に返ったのか、周りを見渡すと怪訝そうにこちらを眺める人があちこちにいた。
和枝は先ほどの失態からか、声をひそめた。
「ごめん、で、藤田君に言われたことはボーカルやってみないか?って言われたんだよ」
「へぇ・・・で、それを承諾したと」
そう言いながら目で問い詰めると、藍香はしょぼくれながらも、うんと頷いた。
「まぁ頑張りなよ、私も手伝うから」
「そうだね」
「あ、でもそれは付き合うという事を前提に頼んだのかな?ねぇねぇ?」
「うっさい!黙れ」
乗客たちは、お前が黙れと言った表情で和枝を凝視していた。
そんな話をしながら二人で笑いながらも、バスは冬の景色を突き進みながら家の方向へと帰っていくのであった。
試験がとても近いので更新は遅いかもしれません。
それと、一応4話程度で話を終わらせる予定でいますので、
ここまで読んでくれた方は次回も読んでくれると嬉しいです。




