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第2話:曲作り


そんなこんなで藤田君に曲作りを任された私なんだけど、一体どうすれば…


とりあえず藤田君から渡された、歌詞が手書きで書かれた一枚のメモ用紙を見てみたんだけど、


そこにはいつもみんなでワイワイ書いているのと少しずれた恋愛系の歌詞が書かれていた。


やっぱり歌詞って歌に乗せてメロディとして聞くといい曲だなぁとか思うけど、歌詞だけでみると、なんていうか、とても恥ずかしい文みたいに思えるんだよね。


それで歌詞の内容としては、ある一人の女の子と男の子がいて、その男の子はその女の子の事が好きなんだけど、


なかなか踏み出せなくて片思いに終わっているんだけども、ある日にやっと思いを伝えることが出来て


やっと付き合い始めてこれからもよろしく、っていう感じの内容かな?私の解釈だとこんな感じなんだよな、


人によっては違う解釈もあるかもしれないけどさ。それでこれは裏話なんだけどこの歌詞を部屋で見てて、


その歌詞の中の登場人物を私と藤田君に当てはめてたら…恥ずかしくてなんか顔を枕にうずくめちゃってた訳ですよ。


そんなこんなでこの歌詞に演奏をつけていこうと思います。







「・・・・・ね・・・いて・・・・・かず・・・」


「ねぇ?聞いてる?」


「えっ?あっ?何?」


咲のその言葉で私はさっきまでファミレスで彼女と曲作りについて話していたという現実に戻された、


咲が何回も私に話し掛けていたということはどうやらずいぶん長い間、思想に耽っていたらしい。


「一応聞いておくけどさ、今の話聞いてた?」


「ごめん、聞いてなかった」


私は完全に彼女の言うことを聞き流していたらしく、これといった事が全く頭に入っていない。


そして場に嫌な空気が流れる。


「どうせまた、藤田君とのことについて考えていたんでしょ」


一瞬咲が何を言っているか分からず固まったが、√2秒後に頭がフル回転。


「ち、違うよ!・・・なんで皆そっちに持っていこうとするかなぁ」


「ごめん、ごめん、とりあえずお客さんがうるさそうにしているから声のトーン落としてね」


「あっ、ごめん」


前にもあったような事が繰り返された。つまりはデジャビュ。


「じゃあとりあえずさっきの事を最初から話すね、めんどいけど・・・まぁ曲作りの事なんだけど和枝はどんな感じのテンポの曲にしたいの?」


穏和な彼女は何も聞いていなかった和枝に対して怒ることもなく、また一から話を始めてくれた。


それはそうと、彼女は普段は穏和な性格で大声で叫ぶ事や、体を思いっきり動かすとかはないんだが、


ドラムスティックを持っていざ演奏に入ると急にキャラが変わり、細くて華奢な体からは想像できないようなパワフルなプレイをする、


曲によってなんだけどね。


「テンポねぇ、私はやっぱりバラード系のゆったりとして感じのやつがいいかな」


その間に咲は、目の前にあったジュースを飲みほしていた。


「へぇ、じゃあとりあえずその歌詞のメロディを考えて、それにドラムをつけるか」


咲は、指先をクロスさせドラムを打つような姿勢をとった。


「じゃあゆっくりメロディを考えるかなー」


「そうだね、それはそうと和枝〜ジュースおかわりする?」


彼女は空になったプラスチック製のコップに入っているストローをカラカラさせて、


咲とテーブルを挟んで向かい側に座っているイスから立とうとしていた。


「あ、じゃあするわ」


「何飲みたい?」


「ん〜、じゃあジンジャーエールで」


「うん」


私は手元にあったコップを横に立っている咲に渡した。


そう言うと、咲はジュースを補充しにドリンクコーナーへと消えていった。


「曲作りか・・・」


私にボーカルは務まるんだろうか、周りは和枝ならできるよとか言ってるけど本当に平気かなと思う時がよくある、


私なりにはいつもボーカルをやっている藍香がハマリ役なんじゃないかと、歌詞見ながら藍香がそれを歌う姿を想像した。


そんな事を思っている間にも、咲が冬だけに氷の入っていないジュースがなみなみと入ったコップを持ってゆっくりとした歩調で近づいてきていた。


「持ってきたよ〜」


そう言いながらコップをゆっくりとテーブルに置き、咲は椅子に腰を降ろした。


「そういえばさ、なんで藤田君は和枝に曲作りを頼んだんだろうね?」


咲が掛けている眼鏡が一瞬キランと光ったように見えた後、彼女は意味深な表情を浮かべた。


「さぁ、なんでだろうね」


私に至っては、そんな事は全く考えてなかったのでその事については深く考えていない。


「もしかしたら・・・もしかするかもね〜」


にやついた笑みを浮かべながら咲がそのことの真理についてを語ろうとしているようであった。


「いや、そういうことはないと思うな・・・っていうかまたそれか」


「またそれだよ、しつこいだろ。だけど意外と気があったりするんじゃないの?」


咲の表情は一向ににやついたままだ、それと彼女は歌詞を書いた本人が私の事が好きなんじゃないかと見立てを立てているようだ。


もしそうだったらすごいうれしいんだけれども、そんな本みたいな展開は期待できないので、


もちろん自分の中ではその考えは却下されていた。


「たぶん違うと思うな、だって藤田君は誰にでもやさしいし・・・」


「確かにねぇ、彼本当に誰にでも優しいんだよね。なんていうかみんなに平等っていうかさ」


あんな事を言ってきた彼女であったが、最終的には考えていることは一致していたようだ。


「そうだよね・・・」


ちなみに言っておくと私の親友である彼女、天野咲は私が藤田君に思いを寄せているということは見ての通り知っていて、


たまに相談などもしている。よく会う場所は場所はどちらかの家かで、ここ行きつけのファミレスとかでは(おも)に相談をしている。


こういった事では彼女には本当にお世話になっている。


そして彼女は私が藤田君と話しているとよく、先ほど浮かべていたようなにやついた顔をしながら横目で見てくることがある。


「まぁとりあえずそういうことは抜きして、曲作りを頑張ろうか」


こういった切り返しが早いところも彼女の売りだ。


「そうだね、とりあえず自分で考えてみたり皆と相談したりしながらやってみるよ」


テーブルにぽつんと二つ置かれているコップは、外は寒いというのに室内で暖房をつけているためか、表面上


を水滴が滴り落ちコップに纏わりつきながらも確実にテーブルを濡らしていた。







「ここってこんな感じで音を上げればいいかな?」


目の前にあるキーボードで自分の思い浮かんだ主旋律を奏でながら周りにいる藍香と咲に問いかけた。


「ん〜、・・・それじゃあサビで高音に入る時に、なんていうかズレた感じで移らない?」


隣に座っている藍香が彼女なりの修正点を言った。


「たしかにね、自分でもそう思ったけど・・・やらなきゃ損な気がするし、これで当たりだったら良かったんだけどな」


和枝は(なお)も色々なメロディを頭の中で考えふと思ったメロディを感覚で弾いていた。


「あ、そうだ、こんなんとかどうだろう?」


横に座っていた藍香がキーボードに手を延ばし、和枝とは違った旋律を奏でた。


「結構いいんじゃないかな、咲はどう?」


咲が賞賛の声を顔が同じであるもう一人の私、つまり藍香に浴びせた。


「そうだね、けどなんかなぁ・・・そこの歌詞をちょっと変えて音をもうちょっと減らしたらどうかな?」


「う〜、和枝は厳しすぎるよ。咲だってOK出してるからいいじゃんか、この中で一番センスがいいのは咲だし」


その直後二人の後ろに立っている咲はにやついたのかは分からないが照れていた。


「そう?ありがとね。まぁ全員の意見が一致したらでいいじゃん、それとまだ野郎にとやかく言われるよりマシでしょ」


「あ、確かにね」


それもそうだといった感じで藍香は自分の音の世界に戻っていった。


そういった色々の意見を聞きながら今回の曲をどんどん作り進めている私達。


いつもながらこういった作業に関してはまったく妥協は許されないのである。


ましてや人様に見せることもあるために、一曲を作る時は悔いを残さないようにいつでも真剣である。



このような作業を時間をかけながらやっていき、何週間がたった辺りでやっと私たちが思い描いたような旋律を作り出すことが出来た。


あと残すのは楽器隊の演奏のみである、といっても私はボーカル兼キーボードということなので演奏の方も考えなくてはならない。


またボーカルのみの藍香は今回はメインではないのでとりあえず現段階で出来上がった旋律のハモリのパートを作っている最中であった。


主旋律が出来てしまえばハモリをつけるのは主旋律作りと比較すると大したことはないので今は一人で作っている。








今日は何故皆が張り切って『双葉』にいるかというと、各自考えてきた演奏のお披露目会みたいなものをするためだ。


つまりそこで皆で相手の修正点を述べたりして、意見を取り入れながら自分の所を改善したりするのだ。


そして一人一人が和枝のキーボードで弾くメロディに乗っかって演奏することになっている。________________







「と、まぁこんな感じなんだけどどうよ?」


上条が所々アルペジオ混じりの感じで主体がバッキングの演奏を皆に披露したところだった。


昔を思い返せば本当にうまくなったんだぁと近頃よく思う。


「結構良かったよ、まぁあとはソロを入れるか入れないかだね」


上条は、藤田から意外にも高評価を貰えたせいか、きつい顔をしているようであったが顔がほころんでいた。


「来たよソロ・・・まぁそれは後で考えるわ」


次は私の番なんだけど私が主旋律を弾く役だから必然的に歌いながら弾き語りみたいな感じでみんなに聞かせなければならない。


正直まだちゃんと出来上がってないものを歌うのは気が引けるが、どうにかここはやらなければいけないらしい。________________








「こんなんですけど、どうでしょう・・・」


急にかしこまったような態度で皆に感想を聞いた。ライヴでも緊張はするけどこっちの時のが下手をすると緊張するかもしれない。


「いいじゃない?」


ドラムでスタンバっている咲が嘘か本音かそう洩らした。


「ほんと?あんまり自信なかったんだよね」


「いや、結構良かったよ、歌も良かったしね」


藤田君が笑いながら私が気にしていた歌の事を褒めてくれた。


「ありがとう」


私はそう言われた瞬間うれしさのあまり飛び上がりそうになったが、そういった事は今はできないと分かっているので、


とりあえずは胸にそれをしまいこみ『ありがとう』と、一言伝えた。


その後咲がドラムを叩いたが、彼女のあまりのセンスの良さに皆がいい意味で声を失った。


このメンバーの中では確実に群を抜いて彼女が最もそういった才能持っている事はこの中の全員が分かっていた。


また藤田君も演奏を披露したがこれといった問題点は見つからなかったようなのでとりあえずはギターのソロ入れるか入れないのかという話に変わった。





「とりあえず話をまとめるとよ、ソロは2回目のサビが終わった辺りで入れて、


そのソロの感じはサビのメロディに少し手を加えた感じのやつでいいんだよな?」


「そういうかんじかな」


ソロの内容を決めたのは上条自身であったが、ソロをどのタイミング入れるかは私たっての希望だった。


何故かというとその辺で休憩を入れておかないと私自身がとても疲れるからだ。


なんたって今回の曲はサビでの盛り上がりを重視してか、サビでかなりきつい高音が続くからだ。


この後皆でソロの事について上条が弾きつつも考えていたが今日中には無理なので、


ソロは上条の家での宿題といった形になった。ちなみに宿題と言った方は私の妹の藍香である。








「おまえらこれでいいだろ!!結構今回は自信あるぞ」


弾き終えた上条は疲れ切った声でそう言った。


何故『今回は』と言っているかというと、この数日間上条は考えたソロを皆に聴かせたのだがすべて却下されていたからだ。


今ではもうやけくそ気味になっていて次々にソロを作り出している。


「今回は“以前”よりは結構良かったよ。OK出てよかったね〜」


藍香は以前という言葉を強調して小悪魔気味な笑みを浮かべていた。


「うるせぇよ、おまえは今回大してなんもやってねぇだろ!」


上条が若干キレ気味ながらも自分のソロを自慢げに弾いていた。


「失敬な、ハモリパートをつくるっていう大役をこなしているじゃないか?というか今ミスっただろ」


藍香はもはや口調まで変化させて細かいミスをつっこんだ。


「ち、ちげぇよ、アレンジだよ馬鹿野郎」


「はいはい、じゃあこんな感じでいいよな皆?」


本当にキレそうな・・・いや、泣いてしまいそうな上条に藤田は助け船を差し出した。


その言葉に全員はコクンと頷いた。さすがにこれで首を縦に振らなかったら上条が逃げ出すであろう。


「じゃあまだいまいちだけどとりあえず皆で合わせてみますか!」


変に上機嫌な上条はいつもの定位置につき皆がそれぞれに位置につくように促した。


そしてドラム担当の咲がメンバーを先導して曲を切り出していった。


「そんじゃいきますよ〜、ワン、ツー、スリー、フォー」


咲のいつもと違ったテンションで勢いよく各自が作ったメロディを奏でていった。


そして今回のボーカルという大役を担っている和枝は練習だけに通った声で歌詞をなぞっていった。


歌っている最中はみんな自分たちが作った曲なだけにとても楽しそうに自分の楽器を鳴らしていた。







__________そして、毎度毎度曲を作り終わった後はこのライヴハウス『双葉』の店長である


双葉さんに最初に演奏を聴いてもらい、OKが出たら曲の完成という事にしている。


みんなで合わせた後に数々の微調整を行ったため出来具合はかなりいいと思っていた。


はたして双葉さんの評価はどうなんだろう?これがみんな今考えていることだろう。




「・・・・・いいじゃないかい?」


しばし沈黙があったが、それが長かった分だけ嬉しさがさらに跳ね上がったようにも感じた。


いつも優しい店長だが、曲に関しては妥協を許さない彼だが、今回は皆の自信作というだけあってそれ相応の


評価が店長から貰えた。


「よっしゃ〜、双葉さんソロとかどうでした?」


「あぁとても良かったよ」


普段はそこまで笑顔をつくらない上条であったがこの時ばかりは顔全体が満面の笑みで埋め尽くされていた。


「それと和枝ちゃん、歌の方もなかなか良かったよ」


「ありがとうございます」


やはり人は褒められると嬉しい気持ちになるのかやはり全員が笑みを浮かべていた。


「ところでさ君たち」


いきなり双葉が話を切り替えて皆が一瞬キョトンとなったがどうやら真面目な話だそうなので全員が静かに双葉の次の言葉を待った。


「今度またこのライブハウスでミニライブをやるんだけどね、そのミニライブには今回はそこらでは結構名の知れてるバンドが出る予定なんだけど・・・


君たち、その前座をやってみないか?」


5人はあまりにも急の事で最初はポカンとしていたが事の重大さに気付いたのか、驚きの声を上げた。


「いいんですか双葉さん!?」


和枝は目を見開き、興奮気味に双葉に詰め寄った。


「あぁいいよ、どうせだからその曲もやってみるといい」


全員全員頭を下げて言った言葉はこれだった


『ありがとうございます!!』


5人とも一点の曇りもない声でそう言い、詳しい日時などを聞いた。


全員はクリスマスにサンタからとっておきのプレゼントを貰ったような顔をして5人とも別々の帰路のついた。


5人からすれば本当にそれはサンタのプレゼント・・・いや、それ以上の贈り物だったのかもしれない。







そしてどうもライヴの日程は今から2ヶ月と20日後らしい、私たちはその日のために日々練習中だ。


なにを練習しているかというと、楽器隊を安定させることと、ライヴでどんな感じでMCをするか等だ。


どうやら今回のMCはお調子者の藍香だそうだから、変に緊張して声が出なくなると言ったことはないだろう。


むしろ私の方が歌う時に声が出なくなるのではないのかと思う。


ライヴ当日までまだ時間はあるがその日までの期間が自分たちにとってはとても短いもののように感じられた。


物事は目標があるから頑張れる訳で、今の私たちはものすごいことに挑戦しようとしているからみんなが興奮気味だ。


ましてや自分たちのオリジナルを曲を聴いてもらってそれが拍手され褒められたら絶対に顔がほころぶに違いない、


これは皆に対しても言えることだ。今私は恋愛そっちのけで練習に励んでいる。
















『ねぇ・・・この後私に何が起こると思う?』




それは誰にも分からない、未来はどんな地位や権力や財力を持っていたとしても見えるものではない、


だが人にはもしかしてと予想を立てるという行為は誰にでもできる。そう・・・だれにでも。


人間の性質上、なかなか固定的な見方でしか周りをを見れないのだが・・・どうだろう一歩足を引いてみれば・・・


ほら、なにかが見えてこないかい?


ふとした偶然でもそれが出来る人間は少しぐらいは先が読めるものなんじゃないだろうか。


果たして、野宮和枝にはそれができるのだろうか?



試験1週間前になりました。


まだまだ文が拙いですが、最後まで見てくれ方は本当にありがとうございます。

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