表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
twin love  作者: 夢遥
1/3

2人の恋

 ひらひら……。


 桜の花びらが、蝶のように舞い降りてくる。

 そんな中、第一高校の入学式が始まった。



「新入生代表挨拶。香川琉聖りゅうせい


 先生の言葉に、あたし、宮崎桃香ももかは、一気に男の子に目を向けた。


 男の子の名前が、元カレと同じだったからだ。



 整った顔立ちに眼鏡をかけた男の子が、淡々と新入生挨拶をする。


 琉聖は、小5の時、始めて付き合った男の子だ。でも、琉聖君は引っ越してしまって、自然消滅になってしまった。


 昔は眼鏡なんてかけていなかったのに、何か変な感じだ。





 そして、入学式が終わると、みんな、それぞれ自分のクラスに戻って行った。


「はあー。校長の話、長かったねー」


 自分の教室に入ると、隣にいた由羽ゆうが、机の上で頬杖をついた。


 高瀬由羽。中学からの友達で親友でもある。


「琉聖君、新入生挨拶。格好良かったよー」


 女子達が、男の子を囲みながら、教室に入ってきた。


「香川君って、中学の時もモテたみたいー」


 由羽は、独り言のように呟いた。


「……」


 同じクラスだったんだー。

それにしても、昔も今もモテてるのは変わりない。


 琉聖君は、あたしの横を通り過ぎると後ろの席に座った。


 しかも、後ろの席なんて、どうしたらいいんだろう……。


「どうしたの、桃香?」 あたしが、気まずい顔をしていたら、由羽が心配そうにあたしを見た。


「じ、実は……」


 あたしは、由羽の耳元で訳を話した。


「えっ、元カレ!」


「しっ!声が大きい」


 あたしは、慌てて人差し指を唇にあてた。


「思いきって話しかけてみたら?」


「う、うん……」


 由羽に言われて、あたしは後ろを振り向いた。


「りゅー、琉聖君。久し振り!あたしのこと覚えてる?」


「……誰?」


「小学校が一緒だった宮崎桃香だよ」


 名前を言ってみたけど、琉聖君は、


「俺は知らないけど。人違いじゃないのか?」


 と、きっぱりと言ってのけた。


「ちょっと!琉聖君の気を引こうとしているわけ?」


 琉聖君の周りにいた女子達が、一斉にあたしの方へ視線がとんだ。


「えっ、そんなんじゃー」


 あたしは、慌てて前を向いて座り直した。


 忘れられていたなんて、ショックもいいとこ!!


 琉聖君が、引っ越ししてから、2、3ヵ月くらいは手紙のやり取りはしていたけど、その後、向こうからの連絡は途絶えてしまったし、仕方がないのかな……?


「大丈夫?桃香ー」


 由羽が、また、心配そうにあたしの顔を覗き込んだ。


「うん……」


「あたしで良かったら、香川君が思い出せるように協力するよ」


「ありがとう。由羽」


 もし、思い出してくれるなら、どうして急に手紙が来なくなったのか訳を聞きたいー。




「宮崎、日直だよな?先生が英語のプリントを配るようにだって」


 翌日の昼休み。


 お弁当を食べ終わって、教室で由羽とくつろいでいると、琉聖君がプリントを持ってきた。


 担任の先生がくじ引きが、好きみたいで、何でも、くじで決めようとして、日直もくじ引きをした結果。初日から、日直をやるはめになってしまった。


 あたしは、プリントを受け取った。


「俺、学級委員だから、半分配るから」


「うんー」


 あたしが頷くと、横にいた由羽が、


「ねえ、香川君。本当に、桃香のこと知らないの?」


 と、言った。


「いくら聞かれても、知らないけど」


「知らないってー。そんなはずないでしょ?香川君。桃香の元カレだったんでしょ?」


「ちょ、ちょっと!由羽」


 あたしは、慌てて止めようとした。


「俺が、宮崎の元カレだって?冗談だろ?」


 琉聖君は、唖然としている。


 ガーン!!


 何かで頭を殴られたみたいに、ショックをうけたみたいな気分だ。



「由羽……。もう、いいよー」


 あたしは、由羽の袖をくいくいと引っ張った。


「え?だって……」


 由羽は、チラッとあたしを見る。


「ほら、もう授業が始まるし、席に座ろう!」


 その場から逃げるように、あたしは、自分の席に戻った。


 何か、話せば思い出してくれるのかなと思ったけど、やっぱり、琉聖君が、思い出してくれるまで待とうー。




「日直ー。使った教材を準備室に運んどいてくれ」


 英語の授業が終わると、谷口先生が、あたしに向かって言った。


 見ると結構、量が多い。


「これ、全部、運ぶんですかー?」


 思わず、もう一度、聞き返してしまった。


「宮崎、独りでは無理かー」


 あたしに言われて、先生はやっと気づいたらしく、


「じゃあ、学級委員!運ぶの手伝ってやってくれないか?」


 と、琉聖君に声をかけた。


「はい」


 琉聖君は、返事をすると、先生が教室から出て行った後、教材を持って、あたし達は、英語準備室に運んだ。


「あ、あのー。ごめんね、あたしが頼まれたのに、運ぶの手伝うはめになってー」



 あたしは、気まずそうに、琉聖君の後からついて行く。


「別にー。学級委員だし、仕方がないよ」


 琉聖君は、前を向いたまま言った。


「……」


 何だか、話が続かないなー。


 これじゃ、あたしのこと、思い出してくれそうな雰囲気じゃない。


 とにかく、琉聖君と何か接点があればいいんだけど……。




 そう思っていたら、その日の6時間目の学活の時間のことだった。


「来月に体育祭があるので、実行委員を決めたいと思います。男女1名ずつ、誰か立候補してくれる人はいないかー?」

 担任の白石先生が、みんなに呼びかけた。


 でも、誰も手を上げる人はいなく、教室中、静まり返っていた。


「何だ。誰もいないのかー?」


 先生が、もう一度、聞いてみた。

 


 やっぱり、みんな手を上げる気配はない。


「じゃあー。先生が決めるぞー。そうだな……委員長にやってもらうけど、香川、どうだ?やってくれるか?」


「はい」


 琉聖君が返事をすると、クラスの女子が次々と手を上げた。


「琉聖君がやるなら、あたしもやります!」


「あたしも!」


「こんなにいてもなー。よし、誰か推薦してくれないかー?」


 先生は、1つ提案を出す。


 すると、由羽が手を上げた。


「お、高瀬。誰かいるかー?」


「桃ー、宮崎さんがいいと思います!」


 由羽が、あたしをチラッと見た。


「宮崎、やってくれるか?」


 先生は、あたしに目を向けた。


「はいー」


 あたしが返事をすると、さっき手を上げた子達が、


「いいなー」


 と、羨ましそうに声を上げた。


「みんな、静かに!実行委員は、今日の放課後に集まりがあるから宜しくなー」


 え!さっそく、集まりがあるのかー。


 あたしは、小さな溜め息をついた。



「ごめんね。桃香!香川君と一緒にやれば、きっかけが作れると思って」


 帰りのホームルームも終わり、委員会に行く準備をしていると、由羽が慌てて来て、両手を合わせて謝った。


「ありがとう、由羽。何かきっかけがあればって、思っていたんだ……。とりあえず、行ってくるね」


 あたしは、筆記用具とメモ帳を持って教室を出た。


 いつの間にか、琉聖君、教室にいなかったけど、もう、先に行ったのかなー?


 集合場所の第2会議室へ向かった。


「失礼します」


 会議室へ行ってみると、やっぱり、琉聖君が先に来て椅子に座っていた。


 琉聖君の隣の席が空いていたので、あたしは、そっと座った。


「琉聖君、先に来てたんだ……」


 あたしは、メモ帳を開きながら口を開いた。


「職員室に用事があったから、直行で来たんだ」


 第2会議室は、職員室の通りにある。



 3年生の実行委員の人が来ると、委員会が始まった。


「まず、始めに審判員を決めたいと思います」


 3年生の実行委員の委員長が、淡々と話し合いで決めていく。


「残った、1年生の、香川君と宮崎さんは救護の方をお願いします」


 ほとんど、役割を決めると、最後の救護は、あたしと琉聖君に決まった。


 救護は、まんがいち、足に怪我をする人がいると、おんぶすることもあるので、男子の手も借りることがあるから、男女1名ずつらしい。


 あとは、学活がある日に、各クラスの実行委員が、種目別の競技に出る希望者を決めることが決定した。


「良かったー。仕事の分担がすんなり、決まって」


 委員会が終わり、あたし達は、途中まで一緒に帰ることになった。


 琉聖君も、家がこっちの方だったなんて知らなかったー。


「琉聖君は、何の競技をやるの?」


 あたしは、何か話そうと、琉聖君に話しかける。


「俺?俺は、リレーかな」


「そうなんだー」


 確か、琉聖君は走るのが速かった。


「宮崎はー?」


「あたしは、足が速くないから、借り物競争くらいかなー」


 リレーと違って、出された出題を早く見つければ何とかなりそうだしー。



「じゃあ、俺、こっちだから。また、明日ー」


 途中で、琉聖君はあたしにそう言うと、別の方向へ歩いて行った。


「また、明日ね!」


 あたしは、琉聖君に向かって手を振った。




「その後、香川君とはどう?」


 2、3日が経ったある日。


 由羽が、興味津々にあたしに聞いてきた。


「どうって、委員会がある日は、途中まで一緒に帰る日もあるけど何も……」


「何だー。さっき、競技を決める時、桃香に対する香川君の態度が、柔らかくなったような感じがしたから、少し、思い出したのかと思ったー」


 由羽は、つまんなさそうな顔をさせた。


 確かに、最初に逢った時より、優しく接してくれるようにはなった。


「そんなに急に、思い出さないよ……」


「でもさぁー。どうしてそんなに、香川君に思い出してもらいたいの?」


「……」


 最初は、どうして手紙が来なくなったのか知りたくて、思い出してもらおうとした……。でも、今はー?


「わかった!思い出したら、香川君と、また、寄りを戻したいとか?」


「えっ!」


「違うの?」


 由羽は、キョトンとした顔をさせた。


「自分でも、よくわからない……」


「そうなんだー。でも、思い出してくれなくても、桃香がまだ、好きなら応援するよ」


「ありがとう……」


 ぎこちなく言ったものの、応援すると言われても、琉聖君を好きだったのは昔の話だー。



 実行委員の集まりがあるたびに、昔みたいに、琉聖君との会話が増えていった。


 でも、いっこうに思い出してくれそうにないまま、体育祭の日。


 何個かの種目が終わって、男子の騎馬戦が始まってすぐのことだった。



「宮崎ー!こっちの奴を先に、保健室に連れて行って」


「わかった!」


 琉聖君に言われて、あたしは大きく頷いた。


 上に乗っていた子が、争っているうちに、二組くらい上から崩れ落ちて怪我をした。


 幸い、どの子も足の膝や肘を擦りむいて、血が出た程度だった。


 あれこれと委員の仕事をしているうちに、借り物競争の番になってしまって、あたしは慌てて校庭へ向かった。


「桃香!頑張れー!」


 由羽が、近くで手を振りながら、応援してくれていた。


「いちについてー。よーい」


 パーン!!


 ピストルの音が空に響き渡った。


 あたしは、課題が書いてある紙に向かって、一目散に走った。


 目的地に着くと、紙を広げてみた。


 紙には、『眼鏡をかけている人』と書いてあった。


 眼鏡をかけている人かー。結構、眼鏡をかけている人がいるけど、誰を連れて行こう?


 一番近くにいる人で眼鏡をかけた人ー。


 あたしは、辺りを見渡した。

「……」


 琉聖君が一番、近くにいたからか、あたしの目に映る。


「琉聖君!お願い。一緒に来て」


 あたしは、琉聖君の所へ行くと、手を掴んだ。


 急に、あたしに連れて行かれそうになって、始め、琉聖君は、びっくりしていたけど、無言で一緒にゴールまで走ってくれた。


「やったー!1番だよ」


 すぐに、琉聖君が一緒に走ってお陰で、みんなが、あれこれと探しているうちに先にゴールできた。


「良かったな。それで、何て書いてあったの?」


 琉聖君が、あたしが持っていた紙を覗き込んだ。


「ふーん。眼鏡をかけている人ねー」


「あ、あの。たまたま、近くに琉聖君がいたから、つい……。ごめんなさい」


 あたしが謝ると、琉聖君は苦笑いをする。


「いいって、謝らなくても。宮崎の役に立てたんだし」


「うんー」


 そういえば、小学生の頃も、似たようなことがあった。


 体育の時間、、運動会の練習で走っている時、ゴール目前だったというのに転んでしまった。


 でも、そこへ琉聖君来て一緒にゴールまで走ってくれた。


 今日の借り物競争で、一緒に走って、あたしのこと思い出してくれたりしてー?


 チラッと琉聖君を見たけど、そんな様子はなく、さっさと仕事に戻って行った。


 やっぱり、思い出してくれないかー。


「桃香!良かったね。香川君と一緒に走れて。それも、1位なんて」


 由羽が、ニヤニヤしながら、あたしの肩をポンと叩いた。


「由羽ー」


「香川君も、桃香に連れて行かれるの、まんざらでもない顔してたし、このまま、もっと親しくなれば、もうすぐ、思い出すんじゃないの?」


「そうかなー?」


「でも、香川君と親しくするのも、敵が多くて大変かね。さっき、一緒に走ったことで、さらにに敵を増やしたみたいよ」


 由羽は、チラッと、周りを見る。


「……」


 確かに、こっちを睨んでいる子達がいる。


「まもなく、男女混合リレーを始めます。出場する選手はー」


 あたしが、溜め息をついた時、校庭にアナウンスが流れた。


「リレー、香川君も出るんじゃないの?見に行こう」


 由羽が、あたしを促すと、見える場所へ移動した。


 見える場所へ行くと、赤い鉢巻きをした琉聖君が、準備しているのが見えた。


 赤い鉢巻きってことは、アンカーかー。


「きゃー。琉聖君!頑張ってー」


 女子達は、芸能人の追っかけのように、周りに集まって声援をあげている。


 そして、競技が始まると、一斉に走り始めた。


「あたし達のクラスは、3位かー」


 由羽は、残念そうに呟いた。


 でも、最後の琉聖君に渡と、一気に前の1人を抜かしたと思ったら、1位の人を抜かして、琉聖君がトップになった。


 それには、クラスのみんなが大喜び。


「琉聖君。おめでとう!」


 女子達が、軽くボディータッチした。


「おめでとう!」


 あたしも、みんなに混じって、琉聖君にタッチした。


 すると、周りの子がジロッと一斉にあたしを睨みつけた。


「……!?」


 怖いー。これじゃ、琉聖君に近づけないよー。


「宮崎。サンキュー!」


 琉聖君が、あたしの頭に手をやった。


 またまた、みんなの視線があたしに飛ぶ。


「あ、あたし。委員会の仕事に行ってくる!」


 あたしは、気まずくなって、逃げるように琉聖君から離れた。


 せっかく、委員会が一緒で、前より仲良くなれたと思ったのに、何だか、遠い存在に感じてしまう。




「今日は、席替えをするぞ!前の席から順に、くじを引くように」


 先生が、教壇の上にくじ引きの箱を置くと、みんなに呼びかけた。



 順番に引いていって、あたしの番が回ってくると、箱に手を入れてさっとくじ引いた。


「8番か……」

 黒板に書いてある番号を見ながら、移動した。


 場所は、窓際の2列目の前から3番目。


 席に座ると、後から、左側の隣の席に琉聖君が座った。


「琉聖君ー」


「あれ?今度は、宮崎の隣かー。また、よろしく」


「よ、よろしく!」


 琉聖君と離れると思っていたのに、隣になれるなんて嬉しい。


「桃香。よかったね!香川君の隣で」


 そう言いながら、由羽があたしの後ろの席に座った。


「よかった!由羽は、後ろの席なんだ」


「うん。あたしも、桃香の近くで良かったよ」


 由羽は、嬉しそうに微笑んだ。


『あと、香川君も隣で良かったね。また、思い出す確率が上がるじゃない』


 由羽が、内緒話するように、こそこそとあたしの耳元で言った。


『そのことなんだけど……。思い出さないなら、このままでもいいかなと思えてきたんだよねー』


 いつになっても思い出してくれないし、最近、諦めかけてきたのは事実だ。


『桃香は、それでいいの?』


『うんー』


 あたしは、小さく頷いてみせた。



「この間のテストを返すぞ」


 その日の、英語の時間のことだった。


 先生は、次々とテストを返していく。


「宮崎」


「はい」


 先生から返してもらった答案用紙をみると、がっくりと肩を落とした。


「このクラスでトップは、香川!98点だ」


 先生が、みんなに公表した。

 凄いなー。琉聖君。


「50点以下の人は、明後日、再テストをやるから勉強しておくように」


 あたしは、48点……。追試だぁー。


「桃香はテストどうだったー?」


 由羽が、後ろから聞いてきた。


「あたしは、追試だわー」


 あたしは、少し落ち込んだ顔で言う。


「桃香、英語苦手だもんねー」


「由羽は、テストどうだった?」


 あたしは、チラッと由羽のテストを覗き込むと、68点と書いてあった。


「追試、あたしだけかなー」


 更に、落ち込んでしまう。


「そんなに落ち込まなくても、何とかなるって」


 由羽が、意味ありげに、あたしに言う。


 その意味は、休み時間にわかることになるー。


「香川君。桃香に英語を教えてあげてくれないかな?」


 英語の授業が終わって、次の授業の用意をしていると、由羽が琉聖君に声をかけた。


「ちょ、ちょっと!由羽」


 あたしは、慌てて後ろを振り向いた。


「桃香ねー。追試になっちゃって、このままだとやばいみたいなのー」


 しばらく、沈黙していた琉聖君は、あたしの方を振り向くと、


「俺でよければ、教えてあげるよ」


 と、言った。


「あ、ありがとう」


 あたしは、お礼を言う。


「今日の放課後からでもいいか?」


「うんー」


 あたしは、放課後、教室で英語を教えてもらう約束をした。



「わからない所があったら言って」


 放課後、誰もいない教室で、琉聖君と勉強会。


 静まり返った教室で、勉強をしている。


「あの、琉聖君。ここがわからないんだけど……」


 あたしは、わからない所を指差した。


「あ、これは、過去形だから……」

 琉聖君が、あたしの横で説明を始めた。


 時々、琉聖君の肩があたしの肩に触れて、あたしの心臓はドキドキと高鳴った。


 昔も、わからない所があったら、こうして、教えてくれた。


 でも、あの時よりも、心臓の鼓動が速くなって、琉聖君のことを意識してる自分がいた。



「ーで、こうなるんだけど……。宮崎、聞いてるか?」


 説明が終わると、琉聖君はあたしの方を振り向いた。


「え?う、うん」


 あたしは、慌てて琉聖君を見た。


 その時だった。


「あれー?琉聖。まだ、帰ってなかったんだー?」


 声のする方を振り向くと、ロングヘアーで、凄く綺麗な子が教室に入ってきた。


 確か、同じクラスの朝陽あさひなさんだ。


美玲みれい


 琉聖君は、朝陽さんの方を振り向くと、そう呼んだ。


 今、下の名前で呼んだよね……?


 あたしは、ただ2人を見つめる。


「宮崎さんの勉強を見てあげてるんだ?」


 朝陽さんは、あたしのノートをチラッと見た。


「宮崎。英語が追試みたいで、困ってるみたいだったからー」


「そうなんだ?琉聖、教え方上手だもんねー」


 朝陽さんは、琉聖君の肩に手をやった。


 名前で呼び合ってるし、2人とも仲が良いみたいだ。


 そう思ったら、急に胸の奥が締め付けられた。


「宮崎ー。同じクラスだから、知っているとは思うけど、こいつは朝陽美鈴」

 琉聖君は、あたしに自己紹介をした。


 琉聖君に、こんな綺麗な友達がいるなんて知らなかった……。


「で?美玲は、何か忘れ物か?」


「図書室に行ってたから、荷物をとりに来たの」


 朝陽さんは、自分の席へ行くと鞄を掴んだ。


「琉聖は、まだ、かかりそうなの?お母さんが、帰りにうちに寄って行くように言ってたんだけど」


 朝陽さんは、あたしの方をチラッと見た。


「琉聖君。あ……あたしは、大丈夫だから、朝陽さんと帰っていいよ……」


 あたしは、遠慮がちに言う。

「本当に大丈夫?」


「うん……」


 あたしは、こくりと頷いた。

「じゃあ、ごめん。明日は教えるから」


 琉聖君は、すまなさそうに頭を下げた。


「ごめんね。宮崎さん」


 朝陽さんも、あたしに謝ると、琉聖君と教室から出て行った。


 2人が帰った後、あたしの胸が、きゅーと締め付けられる。


 会話からすると友達じゃない。きっと、彼女だ……。


 そう思ったら、胸が苦しくなった。


 あたし、琉聖君のことがまだ、好きなんだ……。やっと、自分の気持ちに気づいた。




 そして、英語の追試の日。


「頑張れよ。宮崎」



「うん」


 琉聖君に、応援されて、あたしは大きく頷いた。


 昨日、琉聖君は、約束通り勉強を教えてくれて、何とか、追試を受けられる。


 追試を受ける人は、あたしの他に5人くらいいた。


「はじめ!」


 先生の合図で、問題を解く。


 あれー?前より、解けてる!


 あたしの鉛筆を持つ手が、すらすらと問題を解いていった。


 追試のテストが終わると、何分か待っているだけで、すぐにテストを返してくれた。


 テストを見ると、68点と書いてあった。


 良かった!


 嬉しくて、琉聖君にすぐに、報告したい。


「もう、帰っちゃったかなー?」


 あたしは、急いで帰りの支度をすると、教室を出た。


 昇降口まで行くと、琉聖君が、靴箱に寄りかかりながら、本を読んでいた。


「琉聖君……」


「追試どうだった?」


 琉聖君が、本を読むのをやめて、顔を上げた。


「琉聖君のお陰で、合格したよ!」


 あたしは、嬉しそうにVサインをした。


「よかったな」


「琉聖君は、わざわざ、待っててくれたの?」


「教えた責任あるし。ちょっと、気になったからね」


 琉聖君は、はにかんだ顔で背を向けると歩き出した。


「待って!琉聖君」


 あたしは、急いで靴に履き替えると、琉聖君の後をついて行こうとした。


「あっ!」


 慌てていたのか、段差につまづいて転びそうになった。


「危ない!!」

 琉聖君も、慌てて手を伸ばす。


 ドキンドキン……。


 あたしは、琉聖君の腕の中に抱き締められていた。


「セーフ!」


 琉聖君が、大きく深呼吸をする。


「あ、ありがとうー」


 あたしの心臓が、一段と速くなる。


「宮崎って、意外とそそっかしいよなー」


 あたしを抱き締めたまま、琉聖君が苦笑いをする。


「悪かったわね……。そそっかしくて」


「ごめん。悪い意味じゃないんだ。そそっかしい所も可愛いってこと」


「えっ……」


 琉聖君に言われて何だか、こっちが恥ずかしくなってしまう。


「ごめん!何言ってるんだろう……俺」


 琉聖君は、パッと、あたしから離れた。


「ううんー。嬉しいよ!」


「宮崎……」


 昔も、可愛いって言ってくれたよね……。


「あたし……。琉聖君のことが、好きー」


 あたしの口から、ポロッとこぼれ落ちた。


 何、言ってるんだろう。あたし!


「ご、ごめん!琉聖君には、朝陽さんがいるのにこんなこと。あ、あたし……。先に帰るね!」


 あたしは、慌てて、琉聖君に背を向けると、身体を翻して走り出した。


 今は、告白するつもりはなかったのに、どうして告っちゃったんだろう!


 今は、琉聖君には、朝陽さんがいるのにー。




「おはよー、宮崎」


 翌日。学校へ行くと、琉聖君がいつもと変わりなく挨拶してくれた。


「おはよ……」


 あたしは、気まずそうに挨拶をする。


「宮崎。話があるんだけど……」


「あたし……先生に呼ばれてたんだ!」


 あたしは、逃げるように教室を出た。


 逃げて来ちゃったー。多分、琉聖君の話って、昨日の返事のことだ……。


「おはよー!桃香。どうしたの?こんな所で」


 廊下で考え事をしていたら、後ろから由羽に肩を叩かれた。


「おはよー、由羽」


「で、こんな所でぼーとして、何があったの?」


 由羽が、興味津々にあたしの顔を覗いた。


「それがねー」


 あたしは、昨日のことを打ち明けた。


「へぇー。そんなことがあったんだー?」


「返事を聞きたくなくて、つい、逃げちゃった……」


 あたしは、小さな溜め息をついた。


「でも、本当に朝陽さんが彼女なわけ?香川君が言ってたの?」


「ううん。でも、2人とも仲良さそうだったし、それに、お互いの家にも行ったりしてるみたいだし……」


「確かに、それは彼女の確率が高いねー。もう一度、香川君に彼女かどうか聞いてみたら?」


 聞くって言っても、ちゃんと聞けるか自信がない。


 その時だった。


「ねえ、聞いた?うちのクラスに、転校生が来るんだって!」


「男?女?」


「男みたいだよ!」


 クラスの女子達が、ワイワイ話しているのが聞こえてきた。


「転校生、来るんだー」


 由羽は、女子達の話に耳を傾けた。



 この時は、まだ知らなかった……。転校生が、あたしにとって、ハプニングを起こす人だなんてー。




 そして、朝のホームルームが始まった。


「今日は、転校生を紹介するぞ!入って来なさい」


 先生が、転校生を呼ぶと、サラサラした髪に整った顔立ちの男の子が入ってきた。


「かっこいいー」


 後ろに座っていた由羽が、ボソッと呟いた。


 クラスの女子達も、キャーキャー言っている。


「香川琉聖君だ!みんな仲良くしてやってくれ!」


 と、先生が黒板に名前を書いた。


 えっ!琉聖君が2人ー!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ