第57話 森の危機
ようやく休みに入りました。
今のうちに書かなくては……
ガサッ、ガサッ!
パキッ!
枯草の敷き詰められた森の中を進む。
周りは見事に朝靄がかかっており、視界は良好とはいえないのでその分慎重に進む。
さすがに朝早く出発しすぎたか?
俺の勝手なイメージだが、「魔物は夜行性、だから朝はあまりいないよね」って事で早く出発してみたのだけれど……。
「……それはカナタの思い込み。人里近くならそうかもしれないけれど、森の中は関係ない」
ミサキに真っ向から俺の考えを全否定された。
その割には朝早くの出発に反対しなかったよね。
「……いつ出発しても一緒なら早い方がいい。今回は急を要するかもしれない」
そうだな、今回のクエストは嫌な感じがする。
あくまで俺たちの感だが……。
だが、その感はこれまであまり外れたことがない。
――なので、その感覚を大事にしている。
「カナタ、あっちの方が何かおかしいよ」
ミウの示した方向に足早で向かう。
近づくにつれて、何やら嫌な空気が濃くなっている感覚がある。
少し歩く速度を落として、周りを警戒しつつ前進を続ける。
「うわぁ、こりゃひどい」
いま俺の目の前に広がっている景色は、一言でいうと異質。
怪しい紫色の水たまりが、ポコポコと泡を出しながら存在し、今までその周りに咲き誇っていたであろう草花は萎れ、枯れている。
逆に、見るからに毒々しい草花が、勝ち誇ったように存在感を示していた。
「……カナタ、浄化を」
ミサキに言われるまでもなく、俺は魔法の詠唱を開始する。
今まで湧き出ていた紫色の水たまりが浄化され、辺りを覆っていた空気が格段に良くなる。
「ふぅ……」
浄化が終わり、一息つき辺りを見回す。
残念だが、枯れた草花はさすがに元には戻らない。
「カナタ、だれか倒れてるよ!」
ミウの叫びに、俺は慌てて駆け寄る。
そこには、六・七歳くらいの少女がうつ伏せに倒れていた。
俺は少女を仰向けにして寝かせ、息を確認する。
大丈夫、まだ息はある。
ミウが治癒の魔法を少女にかける。
少女の悪かった顔色が若干良くなった気がする。
だが、少女は目を覚まさない。
「いったん別荘に引き揚げよう。この子を置いてまた戻ってくればいい」
ミサキ、ミウの同意を確認して、俺はゲートを開く。
俺は少女を抱え、その中に飛び込んだ。
「わかりました。この子は見てますので、安心して下さい」
まだ目を覚まさない少女をベットに優しく乗せ、スラ坊に看病を頼んだ。
戻ってからもう一度回復魔法をかけておいたので、大分顔色がよくなっている。
もう倒れているというより寝ているかのようだ。
しかし、こんな小さい子が何であんな所に倒れていたんだろう。
「……アウラウネ。植物の妖精」
ミサキが解説を入れてくれる。
人間にしか見えないんだが……。
植物の妖精か――、見た目人間と変わらないんだな。
妖精ならば、あの森の異変も何か知っているかもしれない。
強引に起こすのも良くないので、そこは目が覚めたら聞いてみよう。
俺たちは、再び森に戻ることにする。
「いってらっしゃいませ。お気をつけて」
スラ坊に見送られ、俺たちは再びゲートに飛び込んだ。
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その後、幾つかの地点を浄化した俺たちは、ギルドへ報告する。
「調査ありがとうございます。こちらが今回の報告の報酬です、お受け取りください。尚、浄化もして頂いたとのことですので、そちらは確認でき次第、追加報酬をお支払いします」
ギルドのお姉さんに引き続きの調査と浄化をお願いされた。
確かに、森をあのままにしては置けない。
調査は継続の方向で動くことにして、今日は帰ることにした。
「お帰りなさいませ」
「ただいま。あの子は――」
「ええ、まだ眠っております。特に体調に変化は無さそうです」
「そうか、ありがとう」
自分の目でも確認するため、少女を寝かしつけている場所へと向かう。
「……カナタ、おいたしてはダメ」
「するかっ!」
ミサキの言葉に即座に突っ込みを入れる。
「……念のため、確認」
――しなくてよろしい!
不毛なやり取りをしているうちに、部屋へとたどり着く。
少女はまだ眠っているが、確かに顔色はだいぶ良くなった。
これなら問題ないだろう。
俺たちはそっと部屋から出て食事へと向かった。
「カナタさん、あの子が目覚めました」
翌朝、スラ坊の報告を受け、急ぎ少女の元へと向かう。
少女はベッドの上で上半身を起こし、不思議そうに俺たちを見ている。
「……ここ、……どこ?」
「ここは俺たちの家だよ。君は森で倒れていたんだ」
倒れていたという俺の言葉に、少女は「はっ!」と目を見開く。
「行かなくちゃ!」
慌てて立ち上がり出て行こうとする。
しかし、長らく倒れていたせいか足元がおぼつかない。
「おっと、危ない」
俺は少女を片腕で支えてあげる。
「……その体では無理。まだ休息が必要」
「そうだよ! まだ寝てなよ」
「でも――、このままでは森が――」
アウラウネの少女は真剣な表情で行かせて欲しいと訴える。
「事情を話してくれないかな。森の惨状は僅かながら俺たちも確認した。なれるものなら力になりたいんだ」
俺の言葉に少女は考える。
時間にして数秒、少女は俺に返答する。
「――わかりました、お話しします」
少女はよろよろとベットに腰掛け、現在、森で起こっている事について語り始めた。
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