第36話 操る者
ドガァン!!
入り口近くにあった無人の家々が、巨人によって壊され、踏み潰されていく。
「キャハハハ! 進め進め〜♪」
命令に忠実に従い、巨人は無人の荒野を行くが如く突き進む。
応戦する術のない村の人々は、ただ逃げることしか出来なかった。
誰も止めることが出来ないと思われていたその前進は、ある建物の前で終わりを告げる。
巨人はその歩みを自ら止め、その場で停止した。
「ここだ、間違いないね。カンタンカンタン♪ ソドム、壊しちゃいな!」
ソドムと呼ばれた巨人は、命令に従い何かを祭っているであろう建物を、その巨大な拳で破壊する。
破壊し尽くされたその跡地には大きな穴、下に続く石の階段のようなものが見えた。
「ビンゴ♪」
声の主は嬉しそうに空中で一回転をする。
「結界ももう作用していないみたいだね。後は……」
ガキィン!!
その時、音と共にソドムの右手の拳が体から離れ、地に落ちる。
そこには1人の少年が剣を構えてソドムと対峙していた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「くっ! ミスったか!」
頭を狙ったのだが、巨人の右腕で防がれてしまった。
俺は巨人のステータスを確認する。
岩の巨人 LV−
HP :4000
MP :0
力 :750
体力 :-
かしこさ:5
運 :-
スキル:再生
俺は地下に続く階段を背に巨人と睨み合う。
すると、先程切断した拳がみるみるうちに元の形へと戻っていく。
なるほど、あれが再生か。
そうすると何か弱点を見つけなければならない訳だな。
ドドドドドッ!
巨人に複数の黒い矢が炸裂する。
どうやらミサキたちも到着したようだ。
「ソドム! 蹴散らしちゃえ!」
上空から聞こえた声に合わせて、巨人は大きな拳を突き出す。
俺はそれを横に大きく避ける。
拳はちょうど後ろにある階段を攻撃する格好となる。
「ば、馬鹿っ! 入り口は壊すんじゃないよ!」
上空から慌てた声が響く。
「ライト!」
俺は上空に向かって呪文を唱える。
辺りは明るくなり、巨人の上空にいた生物の姿が明らかになる。
一言で言うと悪魔。
体型は小学生くらいだが、つり上がった目と口、そこから見える牙、体型の割には大きなコウモリのような羽、頭から生えている2本の角はまさにそのものだ。
コデビル LV20
HP :700
MP :1000
力 :150
体力 :350
かしこさ:800
運 :70
属性魔法 暗黒
スキル:飛行
「ミウ、ミサキ! あいつの方を頼む。俺は巨人を押さえる」
2人の了承の合図を見て、俺は巨人に再び向かっていった。
ブォン!!
巨人の拳が俺の頭の上を通り過ぎる。
パワーはあるのだろうが単調な動き、避けられない程ではなかった。
命令系統をミウ達が相手をしてくれている為かもしれない。
俺は剣に魔力を流し、巨人の伸びきった腕を斬りつける。
スパァン!!
第二関節から先が地面へと転がる。
どうせまた再生してしまうのだろうが、時間稼ぎにはなる。
「ん!?」
こいつ、何かひと回り小さくなっていないか?
いや、気のせいではない。
どうやら再生といっても、体を作っている岩の総量は変わらないみたいだ。
切り落とすのも存外無駄ではなかった。
それならば、切り落とした破片に近づけさせないよう、注意しながら戦おう。
むざむざ再生の材料を補充されたら厄介だからな。
そう思った矢先、巨人は急に動きを停止させる。
俺は警戒を解かず、状況を確認する。
何があった!?
その答えはすぐに出た。
「……逃げられた、残念」
こちらに歩いてきたミサキが残念そうに呟く。
どうやら巨人は、自らを操る者がいなくなって停止したようだ。
しばらくすると、巨人はみるみるうちにその形を変え、最後にはただの岩の塊になり果てた。
「カナタ、だいじょうぶ?」
ミウが俺を心配してくれる。
「ああ、大丈夫だよ」
そう言い微笑むと、ミウは俺に飛びついて頭の上の定位置へと収まる。
「よし、村の人たちを探そう」
村の人たちの無事を確認するべく、俺たちは村を探索することにした。
村の人たちはすぐに見つかった。
巨人の歩みは遅かったので、人的被害はほとんど無かったみたいだ。
「あの階段は何ですか?」
俺は先ほど戦った場所にある穴を指して質問をする。
しかし、その質問には誰も答えてくれない。
「この村が襲われた原因かもしれない。どなたか知りませんか?」
村人の輪の中にいた村長が代表して答える。
「すいませんが、これ以上お答えできかねます。この村を救って頂いたことは感謝しております。報酬はお支払いいたしますので、どうぞお引き取りください」
そう言うと、俺は報酬の入った袋を渡され、村を出るように促される。
先ほどの穴には、何人かの村人がもう見張りに立っている。
気がつくともう明け方になっていた。このまま出て行けという事のようだ。
「わかりました。報酬は確かに受け取りましたので、俺たちはこれで失礼させていただきます」
このまま話しても平行線をたどるだけだと判断した俺は、自分たちの馬車の止めてある方へと向かう。
「いいの?」
ミウが聞いてくる。
「いいわけ無いだろ。ただ、とりあえず一旦村を出よう」
俺たちは馬車に乗り込み、巨人に壊された建物を横目に見ながら村を出て行った。
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