第32話 再戦!!
「祠の番人を倒しに行こうと思う」
別荘の一室に集まったミウとミサキに向かって、俺は自分の決意を述べる。
2人の真剣な眼差しを受け、俺は続ける。
「ギルドの討伐隊で多数の犠牲者が出た。あの時もう少しうまくやっていれば助けられた命かもしれない。俺はもう後悔したくない」
俺の言葉を聞き、ミサキが口を開く。
「……わかった、私も行く。でも忘れないで。あの時の私たちは全力で戦った。もう少しうまくなんて言うのはカナタの自惚れ」
珍しく饒舌に、ミサキが続ける。
「……出来なかったと思うなら、これから努力して出来ることを増やせば良い。ただ、私たちは万能ではない。どうしても出来ないこともあることを覚えておいて」
ミサキに諭されてしまった。
でも、その通りだと思う。俺は少し自惚れていたのかもしれない。
出来ることを全力でする。
それ以外に出来ることはない。
努力しよう!
俺はそう決心した。
「ミウも行くよ!」
疎外感を感じたのか、ミウが大声でアピールしてくる。
俺はミウの頭を撫でながら答える。
「ああ、わかった。俺たちはチームだからな」
ミウが気持ちよさそうに目を細める。
「……作戦は?」
ミサキの問いに俺は答える。
「いや、考えてない」
「……やはり私がいないと駄目。出来る嫁には感謝が必要」
いや、嫁はともかく普段から感謝はしてますよ。
こうして俺たちは作戦会議へと入っていった。
王都から南西に向かいおよそ数十キロ。
そこには未だ未開拓な深い森がある。
セフマールの森と呼ばれるその森は、ちょうど2つの国の境界線に位置する。
境界線にあるが故に、お互いの国が牽制し合い、未だに開拓が進んでいない。
その為、森に入るのは、国に対して中立なギルドの冒険者がほとんどである。
だが、ギルドはあくまで中立組織、魔物の素材の調達のみで、本腰を入れて開拓などするつもりはない。
そんな未開の森を突き進む人影が2つ、いや3つが、森の中心部へと向かっていた。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「もうそろそろか…」
何となく見覚えがある景色だ。たしかこの奥に岩場があるはず。
まだそこに番人がいるかどうかは分からないが、警戒するに越したこたはない。
さらに奥へと進むと、なぎ倒された木々が所々に転がっている。
おそらく討伐隊との戦闘の跡なのだろう。ザックリと爪痕のついたその木々は、前回の戦いで見た、番人のパワーを彷彿とさせる。
「……カナタ、多分いる」
ミサキが俺に伝えてくる。
さらに警戒を強め進んでいくと、例の祠の跡が見えてくる。
いた!
番人は祠の跡を守るかのように、微動だにせずその正面に佇んでいる。
まだ俺たちの存在には気づいていないようだ。
「よし、2手に別れよう」
俺はミウとミサキをその場に残し、番人の後ろ側に回るべく移動を開始する。
ゆっくりと時間をかけての移動が完了、2人に合図を送る。
しばらくして、ミウとミサキが一定の距離を取ったまま番人の正面へと現れる。
すでに魔法の詠唱が終わっており、多数の火の玉が番人に向かって襲いかかる。
ズドドドドドッ!
番人の巨体に火の玉がほぼ全弾命中。
だが、番人には全く効いておらず、のそりと2人に向かって前進を開始する。
2人は後退し、さらに呪文を唱える。
番人が長い腕を振るうが、2人には届かない。
痺れを切らした番人が大きく口を開ける。
シャーーーーーーーーッ
野太い氷のレーザーが一直線に放たれる。
今だ!
剣に最大級の魔力を通わせ、奴の背後から襲いかかる。
シュパッ!
見事に番人の右腕を切り落とす。
ズズゥン!!
その大きく丸太のような腕が、地響きとともに地面に落下する。
グォォォォォォン!!!!!!
大きな悲鳴にも似た咆哮が辺りに木霊する。
ビリビリとした振動が俺に伝わる。
「カナタ!」
ミウとミサキが駆け寄ってくる。
「ああ、上手くいった。これで奴の攻撃力は半減だ」
いや、上手くいきすぎだ。まさかあんな簡単に腕を切り落とせるとは――。
作戦では、腕にダメージを与えて、片腕の攻撃、ならびにあの回転力を無くすのが目的だったのだが、嬉しい誤算だ。
ここまでの切れ味なら、そのまま背中を斬りつければ勝てたかもしれない。
まあ、そこまで望むのは贅沢だな。
番人が俺たち目掛け、残った片腕を真上から叩きつける。
ドカァァァァァン!!
予想は出来ていたので難なく避けられた。
ここで一旦距離を取る。
「ミウ、ミサキ! 魔法で牽制してくれ!」
2人の魔法が番人に命中する中で、俺は再び剣に魔力を込め、死角となった右側から攻撃する。
シュパッ!
奴の胴を切りつける。
グォォォォォォン!!!!!!
大地を揺るがす咆哮が辺りに響く。
俺はバックステップで後退し、さらに魔力に剣に込める。
刀身は真っ赤に染まり、魔力が溢れ出しているのがわかった。
再度番人に接近、スキルを使う。
「スラッシュ!」
その横薙ぎの剣筋が見事に奴の胴を捉える。
グォォォォォォン!!!!!!!!!!
最後に一際大きな咆哮を上げ、番人は仰向けに地面へと崩れる。
ズゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!!!
そしてとうとう、ピクリとも動かなくなった。
「やった……」
俺はその場で尻餅をつく。
「カナタ〜♪」
ミウが嬉しそうに駆け寄ってくる。
「すごい! 倒したよ!」
「ああ、ミウのおかげだ。もちろんミサキもね」
ミウの後ろに立っているミサキへのフォローも忘れない。
「……ううん。これはチームの勝利。特にカナタは頑張った」
「うん! カナタは頑張ったよ!」
2人のお褒めの言葉に素直にお礼を言う。
「ありがとう」
その中には、俺のわがままに付き合って一緒に戦ってくれたお礼も含まれていた。2人にはそれが分かったようだ。
「……私たちはパーティ−。当然」
「そうだよ、カナタ」
2人の返答に、俺は思ったことをそのまま口にする。
「そうだね。仲間がミサキとミウで良かったよ」
チームの結束がさらに固まった1日となった。
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