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第33話 ランクアップ

 深い深い闇の中、その奥には1つの扉、その隙間から漏れ出す光は、この闇を照らす唯一の光源である。

 扉の中にはひとつの空間、その岩壁には古代文明から這い出てきたような壁画が施されている。

 奥の台座には1体の像が鎮座しており、その像が空間の異質な雰囲気を加速度的に増大させていた。

 像の突き出した右手には、紫色の玉が置かれている。

 その玉は、みるみるうちにその色と輝きを失い、やがて音と共に粉々に砕けた。


「どうだい、・・・・・・。上手くいった・・」


 その空間には人影が2つ、いや、人影と言って良いのだろうか? 2つの生命体が存在していた。


「ああ、上手く・・・・・。これでまた一歩、・・・・・・・・・・・近づいた」


「よか・・・。・・・・・楽園の・・・・・・」


「キャハハハハッ!」


「アハハハッ!」


 2つの笑い声は、その空間に長時間、飽きることなく響いていた。





※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





「えええっ!?」


 その大声に、無骨な冒険者たちが何事かと振り向く。


「倒したって、2人だけでですか!?」


 巨大な爪を目の前にしたギルドの受付のお姉さんが、見間違い、聞き間違いを確かめるべく、再度確認してくる。


「いや、2人というか、3人です」


 頭の上のミウを指差し、2人という部分のみを否定する。


「いや、そうじゃ無くてですね。その怪物相手に編成された討伐隊は30人いたんです! しかもリーダーはBランク! その人たちが倒せなかったどころか、ほぼ壊滅したんですよ! それを3人で倒したって!!」


 お姉さんが興奮して捲し立てる。ちょっとまずかったかなぁ。


「いやぁ、運が良かったんですよ。怪物はすでにかなりダメージを負ってましたし。討伐隊の人たちと戦った後だというのなら納得です」


 手遅れかもしれないが、大げさなことにならない様に、ちょっと嘘を入れてみる。


「えっ!? そうなんですか。それなら……。 いや、でも凄いですよ。少なくともFランクやGランクでできる仕事ではありません。ちょっと待っててもらえますか?」


 そう言うと、お姉さんは奥へと引っ込む。

 面倒くさい展開にならなければ良いが――。




 しばらくしてお姉さんが戻ってきた。


「こちらをお受け取り下さい。今回は依頼ではありませんでしたが、討伐対象の怪物を倒したということで特別報酬です」


 どうやら袋の中身はお金のようだ。有り難く貰っておこう。


「それとランクなんですが、お2人は特別にEランクに昇格が決定いたしました」


「えっ! いいんですか?」


「はい。相手にダメージがあったとはいえ、あれ程の魔物を討伐出来る実力を評価しての結果です」


 さらに話を聞いていくと、どうやら裏があるようだ。

 討伐隊の全滅により、王都ギルドの現在の人材不足は切実で、特に中間層がごっそり減ってしまった。

 使えそうな人材は、早く昇格させようとのことらしい。

 お姉さんはそうは言っていなかったが、態度でバレバレだった。

 こちらとしてはメリットが多いので、謹んで受け入れるけどね。


「では、フレンズの更なる活躍を期待しております」


 ギルドカードを更新した俺たちは、カードを受け取り、掲示板へと向かった。







 ギルドを出て、宿を取るべく歩いていると、2人組の冒険者らしき男たちが進路を塞いでくる。

 偶然かと思い、避けようとするが、また進路を塞がれる。

 どうやら偶然ではないようだ。


「よう! 兄ちゃん。金回りが良さそうじゃねえか。俺らにも少し恵んでくれねえかなぁ?」


 下品にニヤつきながら、男は俺に話しかけてくる。

 周りを見ると、横、後ろからも仲間らしき冒険者が現れ、俺たちは取り囲まれた。


「いくら欲しいんです?」


 試しに聞いてみる。


「ヒャハハハッ! 有り金全部に決まっているだろ!」


「隣の嬢ちゃんも置いてきな。可愛がってやるよ」


ボワッ! ボウッ!


 突如現れた火の玉が、冒険者たちをおそう。


「うわっ! 何だ!」


「あちっ! あちちっ!」


 冒険者たちは、大量の火の玉に対処できず、火消しに躍起になっている。

 後ろを振り向くと、満足げなミサキの顔があった。


「……大丈夫、手加減した」


「ミウも手加減したよ♪」


 俺の頭の上からも声がする。なかなか頼りになる仲間たちである。

 俺たちは、騒ぎになる前にその場を離れる事にした。



 宿を借り、その一室から別荘へと移動する。

 番人を倒してから、さらに拡張された別荘が俺たちを出迎えた。

 まわりの土地も、さらに拡張されており、北側には森が出現、西側には川が流れている。

 その川の水は、まるで水が水を洗い流したかのように綺麗に透き通っており、魚がたくさん泳いでいるのがひと目でわかった。

 オークの子供たちが一生懸命、その魚を(すく)おうとしているのが微笑ましい。

 その中の一人が、俺たちに気づいて駆け寄ってくる。


「お兄ちゃん、こんにちは!」


 グランが元気に挨拶をしてくれる。


「こんにちは。魚は捕れたかい?」


「うん。2匹捕れたよ」


 グランが少し自慢げに答えた。


「すごいね~♪」


「えへへっ! ありがとう、お姉ちゃん」


 ミウの褒め言葉にグランが嬉しそうに笑う。

 ん!? たしかミウってまだ1歳にもなっていなかったと思うんだが……。


まあ、いいか。


 一通り話した後、グランはまた魚を捕りに戻っていった。

 後で魚釣りでも教えてみよう。




 今日の夕食は、宿で取らずに別荘で取ることにする。

 ミウ、ミサキ連合に押し切られた形だ。俺も美味しいものを食べたいから良いけどね。

 宿での情報収集は、毎日でなくても問題ない。

 さて、スラ坊お手製夕食、今日のおかずのメインは鮎の塩焼きだ。

 オークの子供達のおすそ分けとのこと。

 子供達に感謝し、美味しくいただきました。





 夜も更け、自室のベットで横になる。

 ミサキも何食わぬ顔で入室しようとしたので、丁重にご退出頂いた。

 俺の隣では、ミウがもう寝息を立てていた。

 この穏やかな寝顔には、アロマ以上の癒しを感じる。


 さて、俺も寝るか。


 明日は平和でありますように…。







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