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元トレーダー、金アレルギーなのに金本位制の異世界に翻弄される  作者: 夜明け一葉
第4章

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第111話『班決定』

依頼のない日、店の帳簿をつけていると、裏口から聞き慣れた声がした。


「ケイ、いる?」


顔を出すと、リナが立っていた。手には、ギルドの紙束を持っている。


「メンバー、決まったのか」


「ええ。予定より早く揃ったわ」


カウンターに紙を広げながら、リナが説明を始める。


「あなたを入れて五人。引率は、予定通り私」


「決まったのか」


「志願したのが、私一人だったの。他に手を挙げる人がいなかったから」


あっさりとした言い方だったが、それだけ手間のかかる仕事だということなのだろう。ダンジョン研修の引率は、地上の研修よりも責任が重い。


「他のメンバーは」


「二人は、知った顔よ。ノナとセラ」


意外な名前に、少し驚いた。


「あの二人も志願したのか」


「あなたが受けるって聞いて、二つ返事だったみたい。もう一人は、サムという子。今日、ギルドで顔合わせをする予定なんだけど、来られる?」


「行く」


即答すると、リナが軽く目を見開いた。


「今日は、店の日じゃなかった?」


「顔合わせくらいの時間はある」


短く答えると、リナが小さく笑った。


「相変わらずね」


奥から、ミレイが顔を出した。


「ケイさん、出かけるんですか」


「少しだけだ。すぐ戻る」


「行ってらっしゃい」


見送りの声に頷き、リナと連れ立って店を出る。


ギルドへ向かう道すがら、リナが横目でこちらを見た。


「緊張してる?」


「していない」


「顔に出てるわよ」


「していない」


繰り返すと、リナが小さく笑った。ギルドに着くと、講堂の隅に、見覚えのある二人の姿があった。


「ケイさん!」


ノナが、真っ先に気づいて手を振ってくる。隣には、セラの姿もあった。


「お前らも志願したのか」


「うん! ダンジョンなんて、なかなか経験できないし、ケイさんと一緒なら心強いなって」


「わたしも、同じ気持ちです」


セラが、静かに頷く。ノナとセラなら、既に呼吸の合った連携ができ、心強い顔ぶれだった。


その少し後ろに、見知らぬ男が一人、立っていた。


「時間通りね。揃ったみたいだから、紹介するわ」


リナの声に、男がこちらを向く。


「私が、この班の引率を務めるリナよ。よろしく」


「よろしくお願いします」


小柄な男が、丁寧に頭を下げた。


「サムという。討伐依頼はFランクまで受けた」


短く自己紹介すると、サムが少し驚いた顔をした。


「もしかして、緑の雫の店主さん?」


「知ってるのか」


「ポーション、使わせてもらってます。安いのに効きがいいって、評判で」


素直な言葉に、少し面食らった。こんな場所で名前が出るとは思っていなかった。


「五人揃ったところで、簡単に説明するわ」


リナが、紙を配りながら続ける。


「今日から数日、座学と模擬環境での実技。それから、浅い階層での実地訓練を経て、研修修了になる。日程は、それぞれの依頼状況に合わせて調整するから、遠慮なく言って」


「俺は、討伐依頼を受ける日と店に立つ日を分けてる。調整が要る」


「聞いてるわ。だから、今日みたいに、店の日に予定を入れることが多くなると思う」


「構わない」


リナの言葉に、サムが感心したように言う。


「店の経営と両立って、大変じゃないですか」


「慣れの問題だ」


短く返すと、サムが小さく笑った。


「頼もしいっすね」


「わたしも、頑張ります」


ノナが、拳を握って気合いを入れる。セラが、その隣で穏やかに微笑んでいた。


「詳しい日程は、また連絡するわ。それぞれ、都合のいい日を教えてちょうだい」


リナの言葉に、四人が頷く。研修班とはまた違う顔ぶれだが、見知った二人がいるだけで、随分と気が楽だった。


顔合わせが終わり、講堂を出る。


「思ったより、緊張してなかったわね」


リナが、隣で軽く言う。


「ノナとセラがいたからな」


「あら、素直」


リナが、少しからかうように笑う。悪い気はしなかった。


店へ戻ると、ミレイが顔を上げた。


「おかえりなさい。どうでした」


「班が決まった。引率はリナだ。あとは、ノナとセラ、それにサムという新顔が一人」


「ノナさんとセラさんも! それは心強いですね」


ミレイの表情が、ぱっと明るくなった。


「サムという子は、うちのポーションの客だったらしい。安いのに効きがいいと言っていた」


「そうやって、評判が広がっていくんですね」


「悪い気はしない」


素直に答えると、ミレイが嬉しそうに頷いた。


窓の外は、いつも通りの通りの喧騒だった。班が決まったことで、ダンジョン研修が、いよいよ具体的な形を持ち始めている。


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【借金メモ・111話終了時点】

前話(110話)終了時:資金銀貨四十一枚と小銀貨九枚・残債なし

111話収支:本話内での増減なし(店舗は通常運営、班決定のみ)

ケイの資金:銀貨四十一枚と小銀貨九枚

残債:なし

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【賃料管理メモ】(110話から一日経過)

緑の雫(店舗):次回支払いまで残り1日

試作場:次回支払いまで残り8日

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