第12話 晩餐と決行
商業地区のへ向かったジェイグ達も無事装置の回収を終え、館へ戻る際に私たちと合流していた。
最初は間に合わず既に回収された後だったとのことだったが、サイキのギフト【所持品感知】により回収係を発見したとのことだった。
その後戦闘になったとの事だったが、結果は言うまでもない。ジェイグとゲン二人で瞬時に無力化したとの事だった。
「とりあえずこれで良しと」
捕まえた4人を邸宅地下の牢屋へ閉じ込め、装置についても父上に報告を済ますことができた。
これで少しは日照りが収まってくれるだろう。
その日の夜は、約束した通りゲンたちの家でごはんを食べる事にした。
食材はありものでしかなかったが、おいしそうでバリエーション豊かな料理がテーブルには並んでいた。
「9人分も料理を用意するとなるともうクタクタだぜ…」
「え?この料理全部サイキが作ったのか?」
「ああ、ゲン兄もシュウ姉もひどい料理しか作れないからな。いつも俺が作ってるんだ」
意外だった。確かにサイキは器用なところがあるのでわかるが、普段完璧に見えるシュウが料理下手だとは思わなかった。
「まぁ、俺もシュウも一時期雑草を食べたり、そこらの虫を食べたりして過ごしてたからな。あんまり味が分からねえってのはあるな」
「あなたと一緒にしないで、私は味は分かるわ。どうせ胃に入ると同じになるんだから、全部混ぜればいいと思っているだけよ」
恐ろしい会話をしているが、聞かなかった事にしよう。
食事を開始し、一口料理を食べてみる。
「おいしい…!家のシェフが作るやつよりおいしいかもしれない…」
シェフに対しては失礼かもしれないが、率直にそう思えるくらいおいしかった。
「お…おぅ。このくらいなら、いつでも作ってやるよ」
「バカだけど、料理だけは上手…」
「おいしいね~」
「ZZZ…」
(ナラタは寝ながら食べてるのか…?)
こうして、楽しい食事も終え一休憩していたところ…。
コンッコンッ!と外からノックをする音が聞こえたのでサイキが開けに行く。
「はいよー!」 ガチャッ
「ラフィアットや 楽しそうにしておるな」
「父上!」
意外な来客に一同驚いていた。
「皆に改めてお礼したいと思ってな。今日は一日ご苦労であった。ジェイグもラフィアットに良く仕えてくれていて助かる」
「そんな、滅相もございません。これからも私の命に代えてでもお守りさせて頂きたいと思っております」
「ハハハ、そうか。心強いなそれは。他のみんなもありがとう。君がアルティアかいつも息子より話を聞いている。今後も力になってやって欲しい」
「そ、そんな!領主様!私にはもったいない言葉です…!」
アルティアは緊張でしどろもどろしていた。
「落ち着いた際に改めて皆に褒美を送りたいと思う。ラフィアットも欲しいものがあれば遠慮なく言うがよい。では邪魔したな」
皆頭を下げる。そして父は退出していった。
「かー。緊張したな!つい先日までひどい暮らしをしていたのに、領主様にお礼を言われる日が来るなんてな。全てラフィアットのおかげだな。なんでも困ったことがあれば言ってくれよな大将!」
「そうね、私もいつでも力になるわ」
「私もみんなに負けないくらい力になるからね!」
ゲンとシュウに張り合ってアルティアが大きい声を挙げた。
「みんなありがとう!これからもよろしく頼むよ!」
こうして、絆が深まっていくのを実感した。
食事を終えた後、少し遅くなったので、シュウとシホがアルティアを家まで送っていってくれるとの事だった。
サイキは一人で食事の後片付けを行っていた。相変わらずナラタは寝ていた…。
「ふぅ……。よしっ…始めようかな」
緊張からか、少し体が強張る。
私はこの後やる事を決めていた。ただし一人では危険が伴う事から、ジェイグ、ゲン、ノワールへ説明し、この後の事を手伝うようお願いした。
目的地はもちろん…。
** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** ** **
バカーンは自室で焦っていた。
「ムムムハァ。このままではまずい。ギロム様に叱られてしまう…」
汗だくになりながら今後について策を練るのであった。
「それにしても、あのクソガキどもめ…。干ばつの策がこれで無駄になってしまった…ムムム…絶対に許せん…。あの息子の方は、早めに手を打っておくべきだった。ギフトのせいか?思った以上に面倒な障害になりそうだ」
乱暴に手に持った魔導書をテーブルの上に置き、そのまま独り言を続ける。
「それにしてもギロム様は、なぜこんな貧相な領地に干ばつを起こすよう指示をしたのだろう…。まぁ考えても仕方ない。とりあえずギロム様への報告は後回しにして、捕まったものから情報が漏れないよう早急に手を打たねば…。少し手荒になるが、その後で息子の方を対処しよう」
暴力的な思考をしていた矢先の事だった。
コンコンッ
突然のノックに驚き、バカーンは転びそうになる。
「ム!誰だっ!」
転びそうになったことに腹を立てたため、乱暴に扉を開けた。すると、先ほどまで言っていた恨み言の相手が目の前に立っていた。
「こんばんは、バカーン」
本作をお読み頂きありがとうございます。
少しでも面白いと思って頂けましたら、
ブックマークの追加とページ下部にある評価をお願いいたします。
特に評価ポイントは、作者のやる気に直結します!
宜しくお願い致します!