第11話 日照りの装置 接敵
「私に1つ考えがあるので聞いてほしい」
作戦としては非常にシンプルだが、居住区と商業地区を同時に調べるためチームを2つに分けることにした。
あくまでも範囲が絞られただけであって、厳密には場所はまだ分かっていないので、詳しく調べる必要があった。
居住区の方は、私、シュウ、シホ。商業地区の方はジェイグ、ゲン、サイキである。ノワールとナラタは、直接的に戦闘には慣れていない事から留守番してもらうことになった。
ジェイグは、私から離れる事を中々認めてくれなかったが、まだゲン達は館に住み始めて日が浅いため、顔なじみも少ない。私とジェイグであれば、殆どの人は見知っているので、住民の協力を仰ぐ事も可能である事とシュウがこちらのチームに入ることによって、常にテレパシーで連絡を取り合える事から、
緊急事態にはすぐに合流できるという担保を説明しようやく納得してくれた。
居住区に入ったところで見知った人間が声を遠くからかけてきた
「ラフィー!」
「ティア!」
アルティアが手を振りながらこちらへ来る。
「シュウさんとシホさんもこんにちは!」
「こんにちはアルティアさん」
「こん~」
何度か視察の仕事を手伝ってもらっているので、全員顔なじみとなっている。
「ラフィは今日もこれから視察?」
「いや、今日は少し用事が違って、ここだけの話なんだけど実は…」
「……。許せない!本当なの?その話は?」
「うん、証拠も出ちゃってるし、少なくとも日照りの原因が装置なのは間違いないと思う。」
「そっか……。私にも手伝わせて!街の事ならみんなより詳しいと思うから」
「確かに一緒に探してくれれば心強いけど、危険な目に合うかもしれないから連れては行けないよ」
私の予想であれば、今回はバカーンの部下と戦闘になる確率が高い。アルティアを危険な目に合わせられないため、断る事にした。
「私のギフトは戦闘向きだし、それに腕には自信があるから大丈夫!」
すごく顔を近づけながらアルティアは言い放った。
(うっ…顔が近い…)
何度か断ったのだが、勢いで押し切られる形で渋々オッケーしてしまった。
「よし、じゃあ行きましょう!おおよその場所は分かっているの?」
「うん、たぶんこのあたりだと思う」
地図を指さしながらアルティアへ説明する。
「うーん、結構範囲は広いね…。でも、この近辺で人目のつきにくい場所なら、ここの林の部分しかないかも?」
(なるほど…。これは協力してもらって大正解かもしれない)
アルティアに導かれながら、その林の部分へ一同は向かった。
目的地の直前で突然シホが声を上げた。
「みんな~待って~!そこの林のところに二人の男がいるよ~」
突然のシホの報告に、びっくりして声を挙げそうになる。
『待って…!みんな落ち着いて…!そこの影に隠れて…』
【意識念話】により、シュウがみんなに同時に呼びかける。
『ラフィアット君 ギフトで相手の素性調べられる?目的や所属が分かればいいんだけど』
『なるほど…。やってみるよ』
正直、急な事だったのでパニックになりかけたが、シュウが冷静に指示してくれて助かった。
【市場調査】
Q:範囲内の男の目的は?
A:天晴箱の回収 50% 見張り 50%
Q:範囲内の男の所属は?
A:ゴルギロム領 100%
Q:範囲内の男の雇い主は?
A:火の絶傑リッシー 100%
あっさりと今回の装置と関係する相手だという事が判明した。私とシホのギフト【人物探知】を組み合わせると索敵として最強かもしれない。
『結果が分かった。一人は天晴箱の回収。もう一人は見張りが目的らしい。所属はゴルギロム。隣の領地出身みたい。雇い主は火の絶傑リッシー…。何にせよ目的の装置がそこにある事が分かったのと、犯人も同時に分かったね』
『ありがとう。隣の領地出身か…。雇い主が居るという事は、山賊や愉快犯ではなく何かしらの意図がありそうね…。雇い主の名前は私は知らないわ。それらの件は後で領主様に相談しましょう。まずはこの敵二人の対処をしましょうか、ラフィアット君とアルティアさんはここで隠れてて。わたしとシホで捕まえるわ』
『大丈夫?ジェイグを待った方がいいんじゃ…』
『一応、ジェイグさんたちにも【意識念話】を飛ばしたけど反応が薄いの。ギリギリ範囲外にいってるのかもしれない。シホもある程度は戦えるから大丈夫よ』
「ふぁ~。お腹減って来た…」
(シホ…本当に大丈夫なのか…?)
シュウとシホがゆっくり行動に移す。
基本はシュウがシホへ指示しながら動いているようだ。
シュウはゆっくりと動きだし、少し窮屈そうに見えたが、脇に抱えていた槍を用意した。
シホは遠距離武器が得意らしく背中に担いだ弓を構えていた。
作戦は一瞬で一人を行動不能にし、もう一人を2対1として数の有利を取り押し切る作戦のようだった。
作戦が開始された。
シュウは判断能力に優れていると思う。文字通り電光石火のごとく最初の一人は一瞬で無力化が成功していた。
ただし誤算だったのは、もう一人の天晴箱回収係が予想以上に逃げ足が早かった事と、私とアルティアに向かって逃げてくることだった。
『シホ!』
『無理~。二人に当たっちゃう~』
逃げる回収係に弓を打つよう指示をしたが、私たちが的になる事を懸念し、その指示は叶わなかった。
「まずい!こちらに来る」
「なんだお前たちは!邪魔だ!」
そう言いながら、回収係は残った手の方で剣を握り振り回してきた。
しかし…。
「タァー!」
アルティアが、綺麗な飛び蹴りを回収係の顎にかまし、吹き飛ばした。
「えっ…」
(……)
私もシュウも目が点になった。
7歳の女の子の蹴りの威力ではなく、ゆうに5メートルほど吹き飛び、回収係は気絶していた。
「ラフィー大丈夫?」
「う、うん。ティア今のは?」
「ん?ただの飛び蹴りだよ!言ったでしょ!腕に自信があるって!」
『私もさすがにびっくりしたわ…。けどごめんなさい。わたしがミスしたばっかりに危険な目に合わせてしまって』
シュウも混乱し、もう戦闘は終わったのに【意識念話】で会話してしまっていた。
「でも、誰も怪我がなくてよかった。ティアありがとう。とりあえずこの2人の男たちは縛ったうえで、ジェイグ達と合流しよう」
「お腹すいたね~」
「ハハハ、全部片付いたらみんなでご飯を食べよう!ティアも一緒にどうかな?」
「ありがとう!みんなが良かったら是非ご一緒させてほしいわ!」
後で分かったことだが、アルティアのお父上はもともと有名な拳法家だったらしい、訳あってこの町に流れ着いたとの事だった。
そしてもう一点アルティアの強さの秘密は、ギフトが【格闘達人】という格闘系のギフトの中では最強クラスのギフトを受け取っていたという事であった。
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