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元サラリーマン、南米やアフリカ、アジア各地の空母を検討する(1)

 私の名は市ヶ谷岩雄、かつてはただのしがないアラフォーサラリーマンをしていたが、今は違う。

 今はその生涯に幕を閉じ、転生後の新たな人生を歩むための一歩を踏み出している。


 その一歩とはつまり、転生後の異世界に連れて行く現代空母を選ぶ事だ。


 とはいえ考慮の末にアメリカ海軍のワスプ級強襲揚陸艦がベストではないか? との結論にいたったが、まだ結論を早急に出す時ではない。


 アメリカ以外の国の空母も検討すべきであろう。


 とはいえ、これまでイギリス、イタリア、フランス、スペイン、ロシア、インド、中国と世界の空母保有国はほぼ検討し終えた。

 ならばもう他に空母を保有している国はないのではないか? と思うかもしれないが、そんな事はない。


 まだまだ世界には空母が存在しているのだ!

 そんなわけで今回はそんな空母たちを検討してみようと思う。


 という事でまず最初にブラジルの空母を見てみよう。

 とはいえ、ブラジル空母についてはすでにイギリスとフランスの空母を検討した際にすでに軽く触れている。


 ブラジルは南米唯一の空母保有国であったが、2017年2月に空母サン・パウロは退役。その後継である空母アトランティコはイギリス空母でも触れた通りヘリ空母だ。

 ウェルドックを有していないとはいえ、インヴィンシブル級軽空母をベースとして設計されているため、全長203.4m、最大幅34.4mとそれなりに大きく、艦載するヘリは最大で18機ほどである。


 ブラジル海軍はS-70B哨戒ヘリやエグゾセ対艦ミサイルの運用能力が付与されたUH-15輸送ヘリを搭載するなどし、一定の航空攻撃能力を与えているが、これをもって空母の代役を担うというのは無理があるだろう。


 そのためか、ブラジル海軍は現在、空母アトランティコでの無人機UAVの運用を検討している。

 そういった事もあって、空母アトランティコはブラジル海軍で就役した2018年当初は多目的ヘリコプター空母という分類であったが、現在多目的航空母艦へ分類を変更している。


 恐らくは将来的にUAVやオスプレイのようなティルトローター機を搭載した姿が見られるだろう。

 しかし、現時点でヘリ空母でしかない空母アトランティコは検討に値しない。


 そこで今度はアルジェリアに目を向けてみよう。

 アルジェリア海軍はイタリア海軍が持つ全通飛行甲板とウェルドックを有するサン・ジョルジョ級強襲揚陸艦の準同型艦であるカラート・ベニ・アベス級強襲揚陸艦を保有している。


 カラート・ベニ・アベス級は揚陸艦兼補給艦、さらには人道支援、医療支援も可能な多目的揚陸艦であり、アルジェリア海軍の要望でイタリア海軍のサン・ジョルジョ級よりも兵装が強化されている。


 さらにサン・ジョルジョ級が全長133.3 m、最大幅12.9 mなのに対し、カラート・ベニ・アベス級は全長142.9m、最大幅21.5mと大型化している。

 航空機搭載能力は中型輸送ヘリが5機搭載可能とされ、ウェルドックにはLCMが3隻収容可能であり、左舷ダビットにはLCVPが3隻搭載可能であるらしい。


 しかし、現在カラート・ベニ・アベス級に固有の輸送ヘリは搭載されておらず、必要に応じて海軍航空隊からヘリが派遣される形をとっているようだ。

 また、カラート・ベニ・アベス級は2014年9月に就役したが、もう1隻の建造オプションも契約で残っている。


 とはいえ、アルジェリアの経済事情から2隻目の建造は実現には至っていない。

 そして、このカラート・ベニ・アベス級は当然ながらヘリの運用しかできないため、検討には値しないだろう。


 そして、このカラート・ベニ・アベス級であるが、この姉妹艦ともいうべき艦艇を取得しようという国が存在する。

 それが中東のカタールだ。


 カタール海軍は現在、海軍拡張計画を進めており、イタリアとカラート・ベニ・アベス級とほぼ同サイズの姉妹艦の建造契約を2016年に結んでいる。

 この艦艇は2022年5月17日に起工し引き渡しは2024年の予定だ。カタール海軍においてこの艦艇が就役すれば中東でのシーパワーバランスに変化が生じる可能性がある。


 カラート・ベニ・アベス級と比べ、対空探索レーダーが充実していたり、機雷探知・回避用ソナーが装備され、これらの装備追加に伴って艦橋周りに艦容の変化が生じる見込みという。

 とはいえ、航空運用能力はカラート・ベニ・アベス級と大差はないようだ。


 何より、この艦艇はまだこの世に誕生していないため、当然ながら検討しようがないだろう。


 では次にイランの空母を見てみよう。

 うむ、イランに空母など存在したか? と思うかもしれないが、当然ながらイラン海軍が空母を保有した事など一度もない。


 じゃあなんでイランの空母と言ったかといえば、イランはこれまでに2度、巨大な空母モドキを海に浮かべて演習をおこなっているのだ。


 最初にそれが確認されたのは2014年3月。

 衛生写真に写し出された画像にはイランの造船所で建造されている、アメリカのニミッツ級空母にそっくりな全長200m、幅50mとニミッツの約2/3の大きさの艦艇が確認できた。


 後に造船所がメディアに一般公開した際には艦橋は白い壁で遮断されていたり、飛行甲板上には艦載機の実物大模型が満載していたりと、どうみてもハリボテなのはあきらかであった。


 アメリカもイランがこれを造った目的を挙げるのは難しいと述べるも、イランがこのクラスの空母を造ることはできず警戒には値しないとしていた。

 実際、この国家規模の模型プロジェクトともいうべき空母建造の目的は映画の撮影のためのセットと造船所は語っている。


 しかし、このハリボテ空母は実際には2015年2月にイスラム革命防衛隊(IRGC)が行った「Great Prophet(偉大な預言者)9」演習において機関銃やロケットを装備した高速艇が突撃した後、対艦ミサイルを撃ち込んで沈めるという演習の目玉の国威発揚に使われた。


 その後、このハリボテ空母はドックにて修理され、2020年1月に再び目撃される。

 この頃、イラクのバグダッド国際空港近くではイランの司令官がアメリカのドローンによる攻撃で暗殺され、イラン側が反発するなどアメリカとイランの緊張状態はいつ開戦してもおかしくない程に高まっていた。


 そんな中、イラン海軍は100隻以上の高速水上艇が納入されたことを公開し、2月にはイラン南部でハリボテ空母が港で停泊しているのを衛星写真に捉えられている。

 7月27日にはハリボテ空母がホルムズ海峡を航行しているのを確認しており、翌28日、イラン海軍は「預言者ムハンマド14世」と名づけられた大掛かりな軍事演習を行った。


 これを受け、湾岸地域の2つの米軍基地は一時的に警戒態勢を取ったが、その演習の内容は2015年のものと大差はなかった。


 イラン軍は大量の艦艇でハリボテ空母を囲み、ミサイルを地上を含めたさまざまな角度から発射。

 国営放送の映像にはヘリから発射されたミサイルがハリボテ空母の側面に命中している。

 さらにミサイル攻撃後は大胆にもヘリボーンして空母の飛行甲板に兵士を降下させ、強襲乗艦・制圧訓練まで行っているのだ。


 米空母相手にそんな事ができる状況はまずもって訪れる事はないと思うが、イラン革命防衛隊の総司令官は「今日の空軍と海軍の演習で攻撃能力が示された」と国営テレビで述べている。

 仮にアメリカとイランとの間で戦争が勃発したとして、今回の演習はまったくもって実戦では役に立たないであろう……プロパガンダだからこそできる演出というわけだ。


 そしてこの演習で沈められたハリボテ空母であるが、沈めた位置がなんとも運悪く水深が浅い場所であり、自国の船舶の航行の邪魔になってしまうというオチが待っていた……


 なんとも言いようがないハリボテ空母であるが、当然ながらこんなもの検討には値しない。

 しかし嘆息する事なかれ、イラン海軍もちゃんとした艦艇は取得しているのだ。


 それが2021年1月に就役したヘリ空母? マクラーンだ。

 その内容から、どちらかと言えば前線基地艦と言うべきだろうか?


 見た目はどう見てもタンカー船に巨大なヘリの飛行甲板を載せた姿であり、実際タンカーを改造した艦艇である。

 元は原油タンカー「ペルシャ湾」であり、これを建造したのは住友重機械工業。日本製タンカーが原型なのだ。


 しかし、このマクラーンは運用面では疑問符が多くつく。まずヘリ甲板にはエレベーターがないため船内に格納庫はなく、ヘリは露天駐機するしかない。

 そしてエレベーターがないという事は艦内に弾薬や燃料が搭載されている可能性は低く、これらの補給、さらにはしっかりとした整備もできないという事だ。


 もちろん洋上の移動ヘリパッドとしては十分機能するだろう。

 整備や補給の必要がない場合、地上と艦艇を往復する必要はなくなるし、何よりペルシャ湾は乾燥した地域で気候や海況も安定しているため露天駐機していても問題はない。


 とはいえマクラーンには現在公表されていないため実際のところはわからないが、防空システムは搭載されておらず、防空能力の欠如は大きな問題だろう。


 そんなマクラーンは2021年6月、付随するフリゲート艦アイリス・サハンドとともにロシア海軍創設325周年を記念する海軍記念日に出席するためサンクトペテルブルクに向かった。

 このサンクトペテルブルクへの航路でマクラーンとアイリス・サハンドは国際港にドッキングせずに大西洋に到達した最初のイラン海軍艦艇となった。


 そんなマクラーンであるが、当然ながらヘリの運用も怪しい状態では検討以前の問題だろう。


 では次にシンガポールの空母を見てみよう。


 とはいえ、シンガポールに現在空母など存在しない。

 しかし、シンガポールの企業は空母と同じような全通飛行甲板を持つ強襲揚陸艦「エンデュランス170」を2017年にシンガポールで開催された国際海上防衛展示会IMDEX Asia 2017で提案している。


 これは元々あった全通飛行甲板の強襲揚陸艦「エンデュランス160」の設計案を向上させ、人道支援、災害救援、捜索救助活動のための指揮および後方支援船として機能する多目的指揮支援船としたものだ。

 全長は170m、最大幅は30mあり、飛行甲板にはヘリスポットを5つ備えている。格納庫デッキには最大で10台の中型ヘリコプターを収容でき、展示された模型でもそれを確認できる。


 またウェルドックには上陸用舟艇を4つ収容でき、車両デッキには17両の戦車と16両の装甲車が収容できるという。


 シンガポール空軍は現在保有するF-16の後継としてF-35を選定しており、F-35Bの取得も発表している。

 そうなれば「エンデュランス170」はF-35Bを搭載する軽空母になる可能性はあるが、残念ながら現時点の設計案ではF-35Bを運用するには飛行甲板が短すぎる。

 しかし、今後F-35Bを運用できる設計案に改良してくる可能性はある。


 そもそもシンガポールは国土が狭く、空軍が使用できる滑走路も限られるため、有事の際に滑走路が破壊されても使用できる空母のようなプラットフォームは必要不可欠なのだ。

 さらに国土が狭い分、すぐにマレーシアの領空を侵犯してしまう危険もあるため、そういった心配のいらない海上のプラットフォームは求めてやまないのである。


 しかし、この「エンデュランス170」はあくまでまだ提案段階だ。

 今後、これをシンガポールが取得するかは不透明である。

 とはいえ、シンガポール以外の東南アジア諸国もこの提案には興味を示しており、今後の動向に注目すべきだろう。


 だが、現実に存在しない以上は検討のしようがない。


 そこで次は同じ東南アジアのタイの空母を見てみよう。

 そう、微笑みの国タイ王国だ。

 ここには正真正銘、実在する空母がある!


 その名をチャクリ・ナルエベト。

 タイ王国海軍唯一のSTOVL空母であり、東南アジア唯一の航空母艦だ。

 ではその中身を見ていこう。

特にオチもない短い連載作品になるかと思いますが、気が向いたら☆評価なりブクマなり感想ください


※追記

カタール国防省は2023年1月24日、イタリアに発注していたカラート・ベニ・アベス級とほぼ同サイズの姉妹艦であるドック型輸送揚陸艦(LPD)の進水式をおこなったと発表した。

進水式にはイタリア側から国防大臣が、カタール側からは副首相兼国防担当大臣らが出席し艦名は「アル・フルク」と命名された。

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― 新着の感想 ―
[一言] 少し間が開きましたが楽しく拝読させていただいています! 第三世界や小柄の先進国の保有空母の話、わくわくして来ます!
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