第23話「情報収集」
午後1時頃。
荷物整理を終え、情報収集の為に
制服姿のまま団員寮を出る私達。
副団長から貰った地図には様々な施設や
その詳細が書かれているが、その中でも
「フォス国立アステール図書館」という施設が
本部の敷地内にある、という事に
私とユースは気がつく。どうやら全てとは
いかないが一般開放もされているという。
その為か本部敷地内の外側にその図書館は
建てられている、という。
「そこなら情報も集まりやすいかもね」
そう言った後に「じゃ、行こうか」と言った後
ユースはその場所に向かおうと歩き始める。
私もユースに付いていくように足を踏み出した。
………十数分後。
「……おお……」
私達はその図書館にへとたどり着く。
巨大な楕円の形をした建造物で、
その高さ、巨大さは私の想像を絶した。
他の建造物より装飾性やデザイン性が
根本から違い、特別感を増している
ような、そんな感じがする。
気がつくと、今まで歩いていた時は
そこまで人は多くなかったのに対し、
図書館の前ではかなりの人集りが
出来ていた。しかし、全ての人達が
魔導士の制服を着ていて、一般人は
いなさそうに見えた。
「あれ……魔導士の人達しか居ないね」
「一般人は図書館とか、一部の建物を
除いて本部の敷地内には入れないからね。
そういう人達は敷地外の場所にある
専用の入口から図書館とか一般人でも
入れる施設に入れるようになってるんだよ」
なるほど、とその分かりやすい説明に
対し納得の声を上げる私。
「それじゃ、早速行こっか……って、
言いたいところだけど……」
「……?」
「そろそろ昼ご飯の時間だし、
先にご飯食べてからにしよっか」
……そういえばそうだった。
もう1時を過ぎているというのに、
まだ昼食を食べていない。それに、
食べずに情報収集をし始めたら
次に食物を食べるタイミングが掴めなく
なってしまうのではないか。
「……そうね」
私達は、図書館の近くにある本部敷地内の
あまり混んでなさそうなレストランで
昼食を摂ることにした。
私達はレストランに入り、
席に案内される。そして、
レストランで一番人気だという、
スパゲッティ、という紐のように
細長い麺に何らかのソースや
具材が麺と絡められている料理を
ユースと一緒に注文を頼んだ。
とはいえ、その料理にも種類があり、
挽肉と赤ワインが使われているという
ミートソースが絡められているものや
二枚貝やトマトを用いたものもあるらしく、
私はどれにしようか迷った挙句私は
ユースが選んだスパゲッティと同じ物にした。
十数分後、その料理は机の上に運ばれてくる。
ミートソースが麺と一緒に絡められている
スパゲッティをスプーンとフォークで巻き取り
形を整え、口に持っていく。
「……! 美味しい……!」
麺の食感、噛みごたえ、そして絡み合う
ミートソース。噛むごとに口の中に幸福が
生み出されていく。ソースの中の挽肉が
麺の美味さとマッチし、赤ワインが
そのスパゲッティ全体の深みを増している。
「やっぱり美味いな……ここのスパゲッティは」
そう言いながらユースもスパゲッティを
口の中に持って行った。
………
その後、
レストランで食事を済まし、ユースが
食事代を払ってくれた後、直ぐさま
元々目的地であった図書館へ向かった。
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「……す、すご……」
図書館の入口を通ると、
そこには別世界が広がっていた。
階層としては七階層程あるだろうか、
もう天井が言葉に表せれない程物凄く高く、
巨大なシャンデリアが飾られている。
楕円形の空間の外側の空間の方に
数え切れない程の沢山の本棚が設置され、
中央には本を読むスペースとして
大量の机や椅子が並んでいる。
そしてかなりごった返している
魔導士や一般人達はそのスペースで
本をじっくりと読んでおり、これだけの
広さにも関わらずかなり席は埋まっている。
「じゃ、とりあえず
調べたい物から調べていこうか」
「……うん」
私達は私自分自身の調べたい事を全て
調べる為に情報源となる本を探し始めた。
………
1時間後。
この広大な海のような図書館の中から
一つの小島を探し出すような事を
していた私達。とはいってもどの階層や
どの区域にどのような本があるのが自体は
図書館の地図に書いてあったため
実質的には羅針盤や望遠鏡を持ちつつの
小島探し……いや、情報収集だった。
そして集めた本を空いている机の上に乗せる。
持ってきた本はかなりあるが、大まかな括りで
纏めると以下の通りとなる。
「リスラル連合国立魔導組織について」
「リスラル大陸情勢」
「魔導ギルド専用本 カース国情勢情報」
纏めるとこのような括りとなった。
記憶を取り戻すのに役立ちそうな物から
何やら危険そうな臭いがするものまであった。
一つだけ共通する事は、どの本も結構分厚い事だ。
「……読み切れるかな」
流石に全てを1日で読み切るなんて事は
とてもじゃないけど無理だろう、が……
「読み切れなかった分は受付で借りる
事ができるから大丈夫だよ」
そっか、なら大丈夫かな。そう言って、
先ずは「リスラル連合国立魔導組織 第8版」の
表紙を開いた。
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「リスラル連合国立魔導組織について」
リスラル連合国立魔導組織、通称「魔導ギルド」。
約400〜500年前、勢力を増大させて行く
カース国に対抗する為に、元々その時に
存在していた人間の大国5つが連合同盟を
結び魔導ギルドを設立した物。フォス国は本部、
ネライダ国、タラサ国、クリュスタ国、
オリクト国の四ヶ国には支部が設置されている。
魔導ギルドの構成としては、一番上層部として
それら一つ一つに「団長」という名のリーダーが
存在し、必ず別々の魔法の属性を持った団長達が
国毎に一人ずつ配属してなければならない。
言わずもがな魔法の属性は
「紅」「蒼」「翠」「光」「闇」「他」
の6属性があり、「他」はその属性を
所持している者が少数の為団長は存在していない。
因みに「副団長」の存在もあるが、これに関しては
居ても居なくても良い。ただし何らかの招集会議の
際には代理で一人、副団長扱いで招集する人を
副団長が居ない団長は決めなければならない。
団長、及び副団長は国家の中でも発言力が強く、
その強さは元々存在しているそれぞれの国の
王国軍のトップでさえも凌ぎ、国王達と
ほぼ同等の発言力を持っている。
余談ではあるが、王国軍は主に国の「中」の防衛
が主な仕事の軍隊だ。国の「外」は我々魔導ギルド
に任されている以上、国の中にいる国民を守る必要が
ある。その為、魔法は元々使えないものの騎士として
戦える者が入る事ができる組織が誕生した。
そして、ーーー………
………
「団員について」
団員になるには成人年齢である16歳以上で
ある事が最低条件であり、入会試験に合格して、
「魔導士」という称号を正式に取得しなくてならない。
団員……魔導士達にはそれぞれランクという物があり、
上から数えてSランク、Aランク、Bランク、Cランク
がある。目安としてはCランクは新人魔導士が多く、
BランクはAランクには劣るが実力を付けている魔導士が多い。
AランクはSランクを除いたら一番実力者が多いランクだ。
Sランクは……言わずもがな5人の「団長」達の事を指す。
ランクによって提示される推奨クエストが変わってくる。
そもそもクエストについてだ。例え団員だからといって
何もせずに金銭が手に入るわけではない。様々なクエストを
こなしていかなければ金銭を手に入れる事はできない。
クエストでは元々結成されているパーティが受けたり、
どのパーティにも参加していない団員が一時的に
パーティの募集をかけたり、もしくはその募集
されているパーティに参加する事もできる。
クエストについては五つの種類がある。
一つ目は「採取クエスト」。
これは商人や職人、薬師などが魔導ギルドに
要請する事が多いクエスト。やる事は単純で、
弱小モンスターの討伐である。基本的に難易度は
低く、Cランクでもこなす事が可能な範囲。
報酬は低め。
二つ目は「探索クエスト」。
これは未探索のダンジョンを探索する物。
国自体からの公式な要請が主である。
基本的にBランク以上推奨である。何故なら
未探索のダンジョンでは何が潜んでいるか
分からないからだ。例えBランク以上の
団員達が探索中に自分達じゃ倒せないと
確信してしまう程の巨大モンスターが
現れた場合、戦うより逃げる事が
優先されている。報酬は探索結果にもよるが、
基本的には採取クエストの何倍以上。
三つ目は「討伐クエスト」
これは「探索クエスト」の結果、自分達じゃ
倒せないと確信した巨大モンスターや
元々確認されている巨大モンスターなどの
討伐を目的とする、国を挙げての要請クエスト
である。基本的にAランク以上推奨。
報酬は撃破の成功失敗にも関わらず与えられ、
成功した場合はもっと与えられる。
四つ目は「娯楽クエスト」
一見楽そうにみえるクエストだが、
実際には「娯楽」を楽しむのは団員ではなく
一般人の方だ。本部施設内のコロシアムなどで
不定期に行われる魔導士トーナメントに
出場したり、自身の魔法を生かして別の娯楽……
まあ、芸能という面で活かし人々を楽しませたり。
このクエスト自体は要請式ではない物が多く、
ギルドの手助けも受けられるが基本的には自分で
芸能面で有名にならなければ稼ぐ事などできない。
五つ目は「緊急クエスト」
これは要請式でも何でもなく、国家に
危機が迫っている際に「発令」される物。
このクエストは団長以外は強制で
受けなければならない。
これが発令された場合。ランク毎によって
対応しなければならない事が変わってくる。
Cランクであるならば、王国軍と共に国民の
避難誘導及び最終戦線の確保をする。
Aランク、Bランクは前線に向かい、
迫っている危機に対して防衛戦を展開する。
場合によっては団長も出る事もある。
報酬はランク毎に変わるが、戦功によっては
報酬が上がる事も十分考えられるだろう。
「AGS戦争」
12年前、魔族の大帝国『カース国』が
突如としてアステール都とその周辺を
奇襲攻撃してフォス国を中心とした
連合国同盟との戦争に発展。
「アステール・グランデ・ソルプレッサ戦争」
が始まった。この激しい戦争は半年間続き、
両方の陣営にも大きな被害が出た。
連合同盟国側は前「翠」団長と前「闇」団長が
戦死し、カース国側は最高幹部の一人と
幹部の一人が戦死。総死者数は150万人。
その内85万人が連合同盟国側の死者数である。
戦争自体の決着は最終的には連合同盟国が
優勢となり、その半年後、連合同盟国と
カース国の合意に置いて連合国側に
優遇がある停戦協定が結ばれた。
この戦争で団長達はかなりの手傷を負い、
「蒼」の団長は利き手である右腕を
失ってしまう。「翠」の団長に関しては
戦死した前団長の妻である「アール・ヒルミ」
が一時的に団長に就任。1年後新たな
「翠」の団長が誕生したが、突然の病で
倒れ病死。その後、結局ヒルミ団長が
現団長として就任し、今も52歳という年
ながらも団長として活動している。
「闇」の団長に関しては暫くの間不在だった
が、5年前に突如として現れた元「闇の住人」、
通称「影の暗殺者」と呼ばれた「トート・ルシア」
がその団長に就任するという衝撃の事件が
起こる事となる。彼は暫くの間連合国民から
不評の声を帯びさせられていたが、4年前
緊急クエストが発令された時にたった一人で
モンスターの大群を全て滅し飛ばしたという
今までにない程の伝説を創り上げ、その
圧倒的な強さから「影の死神」という異名が
付き、今では一部の国民や魔導士からは
尊敬されつつも殆どの人々からは恐れられている。
因みに現在、AGS戦争で戦った団長達は
もう既に戦死、もしくは退役しており、
残っているのはヒルミ団長のみである。
今は「紅」の団長は「ゼスト・ガロル」、
「蒼」の団長は「リョート・フリナ」、
「翠」の団長は「アール・ヒルミ」、
「光」の団長は「ジャンヌ・ガルディエーヌ」、
「闇」の団長は「トート・ルシア」となり、
殆どが30歳以下であり、ジャンヌ団長に至っては
フリナ団長が創り上げた最年少記録より2歳早い、
21歳という若さにして団長の座を譲られている。
それとーーー………
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様々な情報が載ってあり、簡潔に
纏めると大体こんな感じだろうか。
絵や写真も載ってある物もあるが、
文字数は多くかなり読むのに時間がかかる。
少し外でユースが持ってきていた水筒を一本
渡してくれた後、その中に入っている水を飲み
水分補給をしてから、また魔導ギルドに関しての
情報を読み込んでいく。そうしていると、
ふと窓を見ると、もう夕方どころか太陽の光は
入って来ず、代わりに暗闇が入ってきていた。
シャンデリアの光で図書館の中はだいぶ明るいが、
時刻はもう既に夜7時を過ぎていた。
「間も無く閉館の時刻となります。
読書中の方は退館の準備をお願い致します」
そのように図書館内で声が次々とかかっていく。
まだ持ってきた数々の本の2割程しか
読めていなかった、のだが……
「……とりあえず、受付で全部
借りて一旦寮の方に戻ろっか」
ユースの提案に、私は「うん」と頷く。
私達は手分けして持ってきていた本を
抱えるように持ち、受付へと持っていく。
受付人は「団員の方ですね?それでは
団員証明書をお願い致します」
と言う。私はまだ証明書の発行段階の為
持っていないので、ユースの証明書で
本を借りる事となった。
「よいしょ、っと……」
結構重量のある本の数々を私の鞄の中に
詰め込んでいき、ボタンを留め背負う。
「……わっ、、!! あっ──!」
が、しかしその予想だにしなかった重さに
思わず身体のバランスを崩してしまう。
このままだと背後に転けてしまう、
そう瞬間的に感じ取り、本能的に
目を瞑った、その時。
「──!」
誰かに、左手を取られて。
私はバランスが立て直され、
転けずに済んだ。
「あ、危なかった……だ、大丈夫?」
「う、うん、ごめん……」
左手を取っていたのは、ユースだった。
咄嗟に私の身体を支えようとしてくれたのか、
荷物と背中の間に彼の手が入り込んでいた。
「いや、僕もごめん……流石に
僕も持てば良かったかも……」
そう言って、私が一旦下ろした鞄から何本か
分厚い本を抜き取り、彼の鞄の中に入れ込んだ。
そしてもう一度鞄を背負う。今度はバランスが
ちゃんと取れる程の軽さになっていた。
「じゃ、とりあえず寮に戻ろっか」
私達は団員寮の自分の部屋へと戻った。




