第18話「出迎え」
前回のあらすじ
アステール都に着いた。
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「……おお」
アステール都に着き、大きな関所の
近くに魔晶車が停められ、私達は
魔晶車を降りる。降りた瞬間私はその関所の
大きさ、高さ、幅広さに圧倒される。
バード村にいた時とは全く別の世界を
見ているような気分だった。
「じゃ、行こっか」
そういうとユースが関所の入口の場所まで
歩き出す。私もそれに続き、そこに移動する。
そこには鎧を着用した門番が二人、そして
入口の中にあるカウンターのような施設に
何人か人影が見えた。先程一緒に降りた、
同じ魔晶車に乗っていた乗客の列ができている。
私達はその列に並び、順番を待っていた。
「では、次」
私達の順番になり、門番に呼ばれる。
その後、カウンターのような施設の場所に
ユースが向かうのを見て私もそれに続く。
「アステール都に住まわれている方ですか?」
「はい。一応魔導ギルドの団員です」
「あら、魔導士のお方なのですか。
そちらの女性の方は?」
「あっ、えーっと……僕の連れです」
「そうなのですね。では、
『団員証明書』をご提示ください」
そう言うと、ユースは鞄の中から団員証明書、
と呼ばれるらしい長方形の薄いカードのような
物を取り出す。何か透明な物で紙を挟まれていて、
その紙にはユースの顔写真や名前、団員のランク、
その他色々な情報が載ってあった。
そのカードをカウンターの受付の人に見せる。
「……あら?」
「……?何か問題でも?」
するとそのカードを見た瞬間、受付の人が
少し固まった表情を一瞬作る。その様子に、
ユースは何か問題があるのかと一瞬焦る。
「貴方がユース・アフェクト様、
で間違いないですか?」
「はい、そうですが……」
「すみません、少しお待ちいただいても……?」
「……はい、別に構わ……」
ユースの言葉が最後まで発される前に、
受付の人はカウンターの奥にある扉に入る。
「……?」
私は少し困惑していた。
少ししてから、関所の向こう側にもう一つある
扉から、誰か人影が出てくるのが見える。
その数は増えていき、数人ほどにまで増えていく。
そして、先程受付の人が入っていった扉から
受付の人が帰ってくる。
「ユース様、ルナ様。副団長様が
貴方達がここにくるのをずっと
心待ちにしておりました」
「えっ!?アラン副団長が、ですか!?」
その「副団長」とい単語に驚愕しその勢いで
跳ね上がりそうになるユース。そういえば
初めてユースに出会った日、「団長」という言葉を
聞いた覚えがある。「副団長」という言葉は
聞いたことがないが……なるほど、そう考えたら
ユースが驚くのも納得できる気がする。
「ええ。あそこに出迎えが
来ておりますので、どうぞお先に」
そう言うと受付の人は「次の人」と
列に向かって叫ぶかのように言った。
関所の向こう側で待っていた人達の中でも
特殊な格好をしていて、他の人達は動き易そうな
赤、青、緑の魔導士の格好をし、
魔杖を持っているのに対し、
鎧を着用し、腰に剣を差している若い男性が、
向こう側まで行こうと向かっていた
私達に近づいてくる。
「初めまして。貴女がルナさんかな?」
「えぇ、そうですけど……」
「俺の名前はアラン・カルヴァード。
貴女が此処に来るのを楽しみにしていたんだ。
ようこそ、アステール都へ」
そう言うと私に向け手を差し出してくる。
一瞬その行為に困惑するが、直ぐに
握手を求められている事に気付き、
差し出された手を握りしめる。
アラン・カルヴァートと名乗った男性の姿を
もう一度目視する。かなり顔立ちが良く、
スタイルも格好良い。気がつくと周囲には
沢山の女性達が集まって来ていて、
此方、いやアランさんの方向に
目線を当てていた。中には
「きゃーー!!アラン様ーー!!」
と、熱狂的な声を上げている人もいた。
「お久しぶりです、副団長」
そう言うとユースはアランさんに
向け深くお辞儀をした。
「お久しぶりって、そんなに
畏まらなくてもいいよ、ユース君」
「……『お久しぶり』?」
アランさんはユースの畏まった対応に
少し苦笑いをしていた。が、私は
その会話に何か引っかかるものを感じた。
「お久しぶり」という言葉に。
「あぁ、実は俺の知り合いなんだよ。
ユース君、ヒルミ団長の弟子だったから
割と話す機会もあったんだ。な、ユース君」
「あぁ、はい」
……なるほど。
確かに、昨日私が初めてユースと
出会って家に一泊させてもらった時、
「ヒルミ団長に目を付けられて
弟子の一人になって色んな事を
教えてもらったんだよね、お兄ちゃん」
って、リーズちゃんが言っていた
ような覚えがある。そう考えれば、
他の属性の副団長とも関わる機会が
無いわけでもないのだろう。
……
……そういえば。
なんで、アランさんは私の名前を
知っていたんだろう。
「……ところで、何で私の名前を
知っていたんですか?」
ふと浮かんだ疑問をそのまま
アランさんにぶつける。
「あぁ、昨日通信が本部の方に
入って来てたからね。
『数名の魔導士や教師だけで
ゴブリン軍のアジトに突入し、
ルナさんがアデルポスを一人で
倒し、ゴブリン軍の一角を壊滅させた』
って通信が入って来た時には
俺も驚いたし、団長のジャンヌさん
だけじゃなく、もう本部の人達みんな
驚いてたんだ。それも色んな村を襲っていた
厄介なゴブリン軍だったもんだからね」
「ま、まぁ……ユースや
色んな人の助けもありましたし……」
そんなに驚くような事だったのか。
何か、私がすごい人みたいな扱い
なのだが、別に奴を完全に倒した
訳でもないし、ユースや色んな人の
助けがなかったら勝利まで
持ち込めなかっただろうし……
と、無意識のうちに謙遜していた私。
「それで、一応ユース君と一緒に
こっちに来るという情報も入ってたからね。
……まあ、とりあえず一旦本部の方に
来て欲しいんだ。記憶も消えてるって
聞いてるし、『魔導士』の称号があれば
色々サポートも受けられるから」
「はぁ、なるほど……分かりました」
そう言うと、流れで
「じゃあ、付いて来て」
とアランさんが私達に言い、
街中の大通りがある方向に進みだす。
私達はそれに続いた。