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ドジっ子な悪役令嬢は、今日も色々と空回り中。  作者: 心音瑠璃
第2章 切なる願いを魔法に秘め
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28.悪魔祓い②

 悪魔祓いの流れは、記録によるとこうなっている。



 まずは、浄化の魔法で悪魔を体の外に出す。 ちなみに浄化の魔法は、悪魔の居心地を悪くさせるためなので、悪魔本体を霧散させたりすることは出来ない。

 そのため、次は火の魔法で悪魔の本体を封印するために、対悪魔用の火で悪魔の力を弱める。

 その時、火の魔法を通常より多く使うため、魔法が尽きるのを防ぐために、コントロールの役割を持つのが水の魔法。

 そしてある程度悪魔の力が弱まった後、癒しの魔法で封印する。



 ……例年はそれだった。

 だけど私は、この結末を変える。

 そのために、本来この場に立つはずだった兄の代わりに私が立っているのだから。





「ミリアさん、お願い」



 私の言葉にミリアさんは頷くと、手をリアム君に向けてかざす。

「聖なる浄化をもたらす精霊よ、我が名の元に、ここにその力を授けよ」

 パァッとミリアさんの手から淡い黄色い光が一気に放たれる。

 それはリアムを包み込むと、リアムが突然苦しみだした。



(……リアム!!)

 痛々しいその姿に、私は唇を噛む。

 すると隣にいたアルが、私の肩をポンポンと叩いたから、ハッとして慌てて集中する。



 そしてフッとリアムの体から力が抜けて、その場で倒れこむ、と同時にリアムの背中から真っ黒い不気味な影がゆらゆらと蠢いたかと思うと、頭上まで伸び、真っ赤な深紅の瞳をギョロッと動かした。





「……出たわね、悪魔……!!」





 私はキッと、その姿を睨みつける。

 すると悪魔は、突然笑い出す。

「ははっ、その目は傑作だな。

 ……ランドル国の、第二王女か。 さすがに、一筋縄ではいかなそうだ」

「ふんっ、お生憎様。 私は今まで苦しめてきた貴方なんかに、負けたりなんかするものですか……!!」





 私の体からブワッと、魔法が体を巡る感覚。

 間違いなく今までで一番、強い。




(……っ、駄目よ。 まだこの悪魔と離さなくては。 落ち着きなさい、クラリス……!)

 私は落ち着こうと息を吸うと、少し魔力が治まる。 これなら、コントロールが出来る。



 私はそう思って、もう一度悪魔を睨みつけながら言う。




「貴方が今までしてきた悪行は全て、お見通しなのよ!

 ……リアムが住んでいた魔の森の住人達が、次々と亡くなったのも、罪のない人に取り憑いてアルを誘拐するように見せかけて、私の魔法の威力を試したのも、全て貴方の仕業だったのね……!!!」




 悪行は全て、ローレンスの時の魔法を使って調べたこと。



 8年前の事件が起きる前、リアムの住んでいた“魔の森”で、悪魔憑きの人々が次々と亡くなっていったところを見た。

 その人達は皆、揃って夢を見て魘され、“呪い殺さないでくれ”とそう叫んで亡くなっていった。

 ……これは間違いなく、前にエドガー王子が言ってていた、用済みになった人間を全て呪い殺すと言う悪魔のやり方だ。





 そして、魔の森を私の魔法で燃やしてしまった事件の時は、そうなるように仕向けたのは悪魔だった。

 幼い私の力を知っていた悪魔が、罪のない人に取り憑いてアルを誘拐するふりをし、それを見た私が魔力暴走を起こした。




「……この私の魔力が見たいがために、関係がない人達まで巻き込み、そしてリアムを苦しめ続けた。

 その罪は、重罪よ……!!」

「はっ、簡単に騙される方が悪い。

 人間は愚かなものだ。 弱い心を持ち、すぐに悪に走る。

 だったら、それを利用して何が悪い」

 いけしゃあしゃあと言ってのける悪魔に私は怒りが収まらない。




「……たしかに、人は貴方達に比べて、儚くて脆い存在かもしれない。

 っ、でもね! 必死に生きてるのよ!

 もがきながら、幸せをつかみ取ろうとしているだけなのよ! ……それを、貴方達にとやかく言われる筋合いも、利用される筋合いもないわ……!!」



 これ以上言ってもきりがない。

 ……こうなったら、その身を持って分からせてあげるのみよ……!!





「……重大な罪を犯した貴方には、死んでもらうわ」

「はっ、何を言っている。 悪魔は永久に死なない。 そんなことも知らないのか」

「えぇ、知ってるわよ。

 ……だけど、例外を除いたら、永久に死なないなんてことはないわ」




 途端に、焦ったような顔をする悪魔。

 私はニヤリと笑ってみせる。

(ふふ、悪魔のその顔を見ていると、俄然やる気が出るわ。 ……これも、悪役令嬢として生まれたからなのかしら)

 私はそんなことを頭の片隅で考えながら、さっき読んだ“ランドル家の禁書”の言葉を積 紡ぎ出す。




「……“1000年に一度、火を司る王家の血筋の中に、特段力の強い者が現れる。

 その者は、時々魔力暴走を起こす”。 まあこれは、知っての通り私のことよね。

 ……そうすると、面白いことにこんなことも書いてあったの」

 私はふふふっと笑うと、手をかざしながら言う。




「“その者は、悪魔祓いの儀式の中で、祓うだけでなく、悪魔の魂ごと永遠に葬り去ることが出来る”……これで分かった? 貴方も運の尽きね」

「そ、そんなことがあるはずがない……!」




 明らかに動揺を含む声に、私は冷たく笑うと、「信じるかどうかは身をもって知ることね」と言うと、かざした手に集中しながら声を張り上げる。




「聖なる火の精霊達よ、この悪魔の魂を、永遠に覚ませないよう、全て燃やし尽くしたまえ……!!」




 その瞬間。 今度こそ、私の体からグルグルと渦を巻くように全身から火が次々と、悪魔めがけて襲いかかる。




「グワァッ……!!!!」




 断末魔のような叫び声に、私は頭がくらっとしながらも、持ちこたえて歯をくいしばると、隣にいたアルが水を纏いながら、私を後ろから抱きしめてくれた。



 すると魔法がコントロールされ、荒れ狂うような炎にはならずに、ある程度の力で保っている。

「……有難う、アル」

 片手でそっとアルの腕を触れば、アルがギュッと腕に力を込める。




 私はアルが居てくれるから怖くないと、落ち着きを取り戻しながら、炎に包まれている悪魔を見つめる。

「……これで分かったでしょう。 亡くなっていった人達と、リアムの気持ちが。

 貴方は、それだけ大罪を犯してしまった。

 ……もう貴方には、これ以上好き勝手させられないわ」




 私はもう一度力を振り絞ると、火を強め、叫び声をあげる悪魔を冷ややかな目で見つめる。




 アルやローレンス、ミリアさんも固唾を呑んで見つめている。




 叫び声はいつまでも止まない。





 私はそろそろもういいか、とミリアさんを見て言う。




「ミリアさん、そろそろ最期の仕上げをしてくれる? もう、いいわ」

 私の言葉にミリアさんは頷くと、スッと片手を上げて言った。





「聖なる癒しの力をもたらす精霊よ、我が名の元に、その力を与え、悪魔に安らかな眠りを」




 今度は眩いばかりの金色の光が、悪魔に刺すように向かっていき……それでも尚、悪魔は消えてくれない。



「……っ」


 


 魔法の使いすぎで意識が薄れる。

 ……悪魔の魂を葬り去るとは、どこまで魔力が必要なのか。 アルはそんな私を抱きしめたまま、私の体を支えつつ、体に水の魔力を流し込んでコントロールしてくれている。



 ただ、不意に驚くべき光景が目に移る。

 それは、倒れているリアムの体から、大量の風が放出されたから。





 それは渦巻き状になって悪魔に襲いかかったと思うと、火の勢いを強めてくれる。

(っ、リアム……?)

 リアムは固く目を瞑ったままだ。

 なのに、リアムの体から発せられる魔法は……。




(……私を、手伝ってくれている……?)

 私はふっと笑うと魔法にありったけの力を込める。

 すると、今度こそが悪魔の姿が消えていく……。

 その間際、悪魔がギョロッと私を深紅色の燃えたような瞳で、さっきより苦しいのか、地を這うような声で言った。





「クラリス・ランドルよ、後悔するといい。

 ……もうすぐ、彼の方がお目覚めになる。

 最早お前でも、彼の方には勝てるまい。 これでお前も、おしまいだ」

「!?」





 ……彼の方? 私が、勝てない……?






 最期に不穏な言葉を残した悪魔は、そのまま姿形なく、次の瞬間には消えてなくなった。





 私はその不穏な言葉の意味を思案するより先に、この悪魔祓いの締めくくりにかかる。







「……これにて、悪魔祓いは終了する」








 こうして、リアムの体からは無事に悪魔を祓い消すことに成功し、悪魔祓いは幕を閉じたのである。

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