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Element Master  作者: 柚子桜
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第一話 奇妙な世界#8



「淀んだな」

「淀んだ」

「淀んだわね」

臨也・葛城憂・白河雲雀の三人は、黒く淀んだ紙を見つめていた。

残りの和倉岬・白ぎつねの二名は、まじまじと俺の顔を見つめている。

何かいけない事なのかと、俺は心配になった。

そんな俺の不安を察したのか、臨也が紙から目を離した。

「そんな気まずそうな顔するなよ。これはそんないけないことじゃねーぜ。ただ、珍しいだけだ」

臨也がそう言うと、補足説明をするかのように白ぎつねが喋りだした。

「この世界には不思議な力が存在します。その事はもう、お話したはずです」

コクり、と首を縦に振る。

確か、この世界にやってきた人間は不思議な力を備えていて、この世界で不思議な力を持っているのが幻獣と魔物、それと信仰心の強い人間だったはずだ。

「それらの力は『Elememt』と呼ばれ、大きく七つ『火・風・土・雷・水・光・闇』に分類されます。先程臨也さんがおっしゃられたように、火のElementを持つ私がポイントカードを持てば燃え、水だと湿り、風だと切れ、土だと分解され、雷だとシワシワになります。光と闇ですが、ポイントカードが発光・黒く淀むと言われています。しかし、このElementには滅多にお目にかかれません。なぜなら、これらのElementを持っているのは高位の幻獣か魔物だけなのです。それゆえ、低位の幻獣や魔物・人間がこの属性のElementを持つ事は珍しい事なのデス」

と、白ぎつねは長々しい話をまとめた。

自分自身でも少々疲れたのか、言い終わった後に小さくため息を吐いていた。

「でもどうしよう。これじゃあ、りっ君のElementがいまいち良く分からないね」

和倉岬がその細い綺麗な指を唇に当て、考えるそぶりを見せた。

他人事のように軽い気持ちでいたいが、これは思っている以上に重要な問題だ。

人間がギルドに入るのは、Elementを持っているので仕事を有利に進められるからだ。Elementがないのなら、ギルドにいてもあまり役に立たないだろう。

そこから導き出される答えは『ギルドにいるならElementは必須』。

しかし、分かりやすい火とか水ではなく、光とか闇とか良く分からない属性のElementでは、自分がどのような能力を持っているのか想像がつかない。

ゲームとかなら光が回復系で、闇がジャミング系なのだろうけど。

「和倉…さん。光とか闇って、どう言った類いのElementなんですか?」

「岬でいいわよ。そうねー。光が生み出す側としたら闇は消す側かな。私の主観だけどね」

「消す側ですか」

何か偉く危なっかしいElementだなと俺は思う。

和倉さ…岬には聞いてみたが、他にも色んな意見を聞いてみたいので、残りのメンバーにも聞いてみる。

「臨也はどう考えてる?」

「ん、俺か。俺はな、守る力と破壊する力だ」

「守る力と破壊する力か…」

そう言えば、何で二人とも光のElementについても言及するんだろう。

まぁ、対象な位置にいるという点で比較するには持って来いなのは確かなのだが。

「白ぎつねは?」

「私は、太陽と月…光を発するものと反射するものでしょうカ」

「反射ねぇ…お二人さんは?」

「創成と吸収かしら」

「そのまんま、光と闇」

『吸収』と言うのは面白いかもしれない。相手の攻撃を全て吸収――無効化。これって最強じゃん。そして、まんまの光と闇。ビームでも出せたりするのかな。

色々な意見が出たが、どれもElementを確定するにはいたらなかった。反対に、Elementの闇属性と言うのが分からなくなってきた。

「はぁー、分からないな」

「あら、ため息を吐くと幸せが逃げていくわよ」

白河雲雀が俺のため息に珍しく突っ込んできた。

しかし、それに丁寧に返す余裕はなく「ほっとけ」と短く返した。

もう一度、さっき出た意見をまとめてみる。

消す・破壊・反射・吸収・闇。吸収と破壊は消すと繋がるとして、反射と闇は独立。って言うか、Elementが闇だからって皆同じなのだろうか。少しずつ、どこか違うのではないのか。

(んー、やっぱ分かんねぇや)

諦めて思考停止。

いつか能力が把握出来るだろうから末永く待つ事にした。でも、それまではギルドのお荷物だ。やっぱり、今にでもElementを知りたいような気がした。

「難しいかもしれないが、いっちょ具現化でもしてみるか」

流れの悪さを断ち切るように、臨也はそう言った。

皆も「それしかないか」と口を揃える。

「具現化ってなに?」

俺は素直に疑問に思い、反射的に出て来た言葉を口に出した。

「Elementを使用する事デスヨ♪ こんな風に」

俺の質問に白ぎつねは答えると、手の平から小さな炎の玉を出した。

メラメラと燃える炎を、俺はじーっと睨んだ。

「人にもよりますが、このくらいなら一日で出せますヨ。出し方は簡単。手の平に意識を集中させるだけデス」

「ただし、あんまりでかいものを出すなよ。名前は出さないが、どこかの誰かさんが風を起こして、家の中がぐちゃぐちゃになったことがあるからな」

「それ、名前を伏せても意味ない」

目に見える範囲で、臨也と葛城憂がじゃれあう。

そんな二人を余所に、岬と白ぎつねはElement発動の手ほどきをしてくれていた。

「力の出し方は、ポイントカードの時と同じだから。上手く言うなら、力を流し込む感じね」

「頑張るのデスヨ」

そう言って、二人は俺から離れた。

二人が少し離れた位置に移動したのを確認すると、俺は手の平を上にして手を前に出した。

そして、体の中心から手の平に、力のベクトルをイメージする。

手の平に、ある程度の玉が出来たイメージが浮かんだ。

次に、その玉から一気に外側にベクトルが発散するのをイメージ。

俺は手の平の上で、その力の塊を爆発させた。

「………」

「………」

「………」

「………」

「………」

「何も起きないようね」

ティーカップに手を伸ばす少女、白河雲雀の冷たい一言が家中に響いた。

結局、その後何度も挑戦してみたが、一回も何かが出てくることはなかった。



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