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Element Master  作者: 柚子桜
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第一話 奇妙な世界#9



失敗に失敗を重ねに重ねまくった後、臨也から「焦らなくてもいいから」と言うありがたい言葉をもらった。

そして歓迎会は終了。俺は白ぎつねに、ギルドにある空き部屋に案内された。

ギルドの二階には八つもの部屋がある。一階は皆で過ごしたりする公共の場で、二階はそれぞれのプライベートルームとの事だった。

空き部屋の扉を開けると、そこは意外に広くて結構綺麗だった。

「誰もいなくても、一応掃除だけはしていたんデスヨ」

「へぇー。何か白ぎつねって家政婦みたい」

たわいもない言葉を交わし、部屋の中に足を進める。

クローゼットとベッド、小さな机がそこにはあった。窓は北側と東側にあり、両開きの窓だった。

「本当にここに住んでいいの?」

あまりの部屋の質の良さに、ここに無料で住めることを確認せずにはいられなかった。

「Si。もちろんデス。白ぎつねは兼ねてから、ギルドの人と一緒に住むことを楽しみにしてこの家を買ったのです。他の皆さんも、皆ここに住んでいるのですヨ♪」

上機嫌に白ぎつねはそう語った。皆で一つの家に住むということが相当嬉しいのだろうと、俺は予測した。

「なぁ、白ぎつね。俺の前の部屋には誰かいるの?」

先程から気になっていた、お隣さんとでも言うのだろうか、その人物が誰なのか聞いてみた。

ちなみに二階はコの字になっていて、書き順と同じ順番で、2・1・2・1・2といった数で部屋がある。俺は一回目の1の部屋の所に住むことにした。

そして、やっぱり向かいの部屋に誰がいるのかは気になる。それだけはどうしても聞いておきたかった。

「向かいの部屋ですか? でしたら、雲雀さんがいるのデス」

雲雀と言われて、少しだけ気落ちした。

彼女とはあまり喋べっていないせいか、少し苦手意識がある。どうも近寄りがたい。

「どうかなさいましたか?」

白ぎつねが顔を覗き込むようにして顔色を伺ってくる。

白河雲雀も、白ぎつねのように気さくな女の子だったらよかったのにと思った。

「もしかして…雲雀さんが苦手でごさいますカ?」

ニヤつきながら尋ねてくる白ぎつね。図星だった。

「まぁ…何かね、ちょっと近寄りがたいかなって。と言うか、そのにやけ顔がムカつく」

「失礼しましたっ」

そう言いながらも、まだ白ぎつねの顔はにやけていた。

そしてクスクスと小さく笑う。

「雲雀さんは、不器用な方なのです。自分の感情を上手く表せないと言うか…威圧的な態度をとってしまう事が多々あるんですよね。でも、決して悪い人ではないのデスヨ」

「ん…分かった。んじゃ、頑張って今度俺から話し掛けてみるよ」

白ぎつねに励まされ、自分から白河雲雀と積極的に関わろうとする事を決意する。

しかし、上手くいくのかなと少しばかり不安になった。

「大丈夫。きっと上手く行くはずデス」

「まぁ…頑張ってみます」

「その粋です!」

めげそうだけど頑張ってみよう、もう一度そう心に決意した。

それはそうと、何かあった時のために皆がどこに住んでいるのか聞いておきたい。それを白ぎつねに尋ねておこう。

「えーとですね。フロアの形がコの字で、左上から順に、臨也さん、白ぎつねに通路を挟んで六斗さん。雲雀さんに憂さんで、飛んで飛んでの最後が岬さんです」

岬が一番端か。女の人の中では一番絡み易かったのだが。岬の隣にすればよかったと少し後悔した。

「では六斗さん。注意事項を説明しますね」

「はーい」

白ぎつね曰く、この家に住むためにはいくつかのルールがあるらしい。

【一つ、人の部屋には勝手に入らない事。

一つ、家事は変わりばんこです(臨也さんは料理禁止)。

一つ、親しき仲にも礼儀あり。お互いに嫌な気持ちにならないように心掛けましょう。】

以上の三つが、ルールの最重要事項らしい。

それ以外のルールは自分で読むようにと、文字の並べられた紙を数枚渡された。意外にざっぱな性格みたいだ。

「他に何か聞きたいことはありますか?」

「聞きたいことねぇ…。そう言えば、依頼の報酬ってどういう分け前になってんの?」

「報酬の分け前ですか。白ぎつねのギルドは、報酬の半分をギルドにということにしています。ちょっと高いかもしれませんが、皆さんがこの家で有意義に暮らすには必要なのデス」

「OK、了解。んじゃ、後もう一つだけ。仕事のノルマとかってあるの?」

普通に考えればどうでもよい質問。他の人達はこのような質問をしなかっただろうが、俺にとっては重要な質問だった。

返答しだいでは、このギルドを出ていこうと考えいる。

だって、縛られたら楽しくないに決まっている。縛られたら縛られる程、やる気がなくなる人間なのだ。

そんな俺の張り巡らされた思考に対し、白ぎつねはあどけない表情で言葉を返す。

「ノルマですか? そんなものはありませんよ。皆さんが皆のために、ある程度仕事をしてくれると信じていますから。まぁ、依頼を受けてギルドの名が上がるのは大いに嬉しい事ですが、何より皆さんと楽しく過ごす事が大事ですからネ♪」

と、白ぎつねは嬉しそうに、蔓延の笑みでそう答えた。

(どうやら取り越し苦労だったようだな)

「他に何か聞きたいことは?」

「もうないよ。ありがと」

「いえいえ。皆さん、まだ下でのんびりしているようですが、六斗さんはどうしますか?」

白ぎつねに言われて少々考え込む。

ギルメンと仲良くなりたい気もするが、今日はそれ以上に疲れている。しかし、なるべく早く仲良くなっておくべきだ。

――葛藤。

そして、俺は考えに考えたあげく、今日はもう休むことにした。

「そうですか。では、お休みなさい」

「お休み。今日はありがとな、白ぎつね」

「いえいえ。ゆっくり休んでくださいね。明日から依頼を受けてもらいますから」

「あぁ、任しとけって」

そう言うと、白ぎつねは小さくガッツポーズをして階段を降りていった。

それを確認した俺は、自室の扉を閉めた。



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