美青年の正体は王子様でした 06
聞いたこともない国と名前に、ステラと女将は互いに顔を見合わせる。彼曰くローレライ王国はここから少し北にある自然豊かな国らしく特に美しい真っ赤なバラが有名で、必ず国を訪れた者は足を運ぶほどの人気だとのこと。他にもみずみずしい野菜やフルーツも美味しいようで。
「皆、心配かけてすまなかった。道中で怪我を負ってしまったのだがこの方々たちが助けてもらってな」
ハイゼの話を聞いた兵士の一人がこちらに駆け寄って来て深々と頭を下げる。思わぬハプニングがあったけどこれもまた良き思い出だと、ステラは心の中で留めた。
そして、今度こそ本当にお別れだと誰もがそう思っていた──。
「悪いが、少し時間をくれないか」
すると、突然ハイゼが声をあげた。
「ステラ、君に頼みたいことがあるんだ。時間をもらってもいいか?」
「え、えっと。どうしましょう女将さん‥‥」
ステラが困った顔で女将を見る。
女将は「行っておいで」と言葉を残しそのまま宿の中へ入っていき、お付きの兵士たちも少し離れた場所で待機する。で、今この場にはステラとハイゼのニ人だけとなってしまい一気に緊迫した空気に‥‥。
「え、えっと。それで話というのは‥‥」
恐る恐るハイゼの顔を伺いながら訪ねた。
「単刀直入に言おう。使用人になる気はないか?」
それはあまりにも唐突な言葉だった。
「し、使用人‥‥ですか?」
思わずステラは聞き返す。
「ぜひ、君を使用人としてうちで雇いたい」
赤みを帯びたアーモンド色の瞳が真っすぐにこちらを見つめる。だが、ステラには宿屋の仕事もあるし、なると街を離れることになる。そう簡単に易々と返事はできない。
悩み悩んだ結果、彼女が出した答えは──。
「分かりました。その話、お受けします」
かくしてステラは、王子に仕える使用人として働くことになったのだ。




