第96話 得体のしれない何かが向かってくる?
「どうやら、やっと心が落ち着いたみたいですね。ならば、さっさと森から出ましょう。っと、その前にまずは体から離れて下さい」
「嫌だ。私の頼みを聞いて貰えるまでは一ミリも動かない」
顔を埋めたままの先輩が、盛大に悪態を付く。
おーい!これじゃ、全然学校に行けないじゃないか。
ホントにコイツは注文が多いな。
「そうですか。なら遠慮しないで話して下さい」
不満を呑み込み、言葉を続ける。
「分かった。では、さっそく。お前が良ければでいいのだが、今後は私の事を……まゆりと呼んでくれないか? もちろん敬語は不要だ」
「プッ」
「な、何がおかしい?」
声を張り上げた先輩が勢いよく顔を上げる。
「フフ。そりゃ、そうだろ。なんてたって天下の女王様とあろうお方が、いきなり可憐な少女のような事を言い出したんだからな。おかしいったらない」
「すざくのバカ。私とてれっきとした女子なのだぞ。分かってるのか?」
「ああ。よろしく頼むな。まゆり」
「ハ、ハウ……なんてタイミングで名前を呼ぶのだ。卑怯だぞ」
「フン。何とでも言え。俺は思った事を……」
うん?何だ、このニオイは?
どこからともなく、鼻を刺すような腐敗臭が漂ってくる。
「どうやら、ここには何かいるみたいだ。それも邪悪な魂を持った奴がな」
まゆりの顔が、にわかに険しい表情へと変わる。
「まさか、モンスターか?」
「しっ。もう少し静かに話せ」
「悪い。思わず声がでかくなってしまった」
慌てて音量を下げる。
「いや。分かればいいんだ。そんな事より何か聞こえてこないか?」
「うーん。俺には特に」
「そうか。私には、ギギ、ガガと言ってるような奇妙な音が耳に入ってくるんだが」
なんだ、その微妙な表現は。
思わず気でも狂ったのかと思いたくもなるが、まゆりの話が本当ならいかにも怪しいな。
少なくとも、人間ではなさそうだぞ。となると、やっぱりモンスターが忍びよって来てるのか?
何だか急に寒気がしてきたぞ。まさか、オルガゼフの森に凶悪な存在が潜んでいたとは。
「なるほど。確かに不気味だな。もしかすると、俺等じゃ手に負えない奴等がやってくるかもしれない。今のウチに隠れよう」
「分かった」
あたりを見回してみた所、ちょうど右斜め後ろに茂みがあった為、ただちに移動を行い、身を潜める。




