第95話 な、何だ。この意外な展開は
「先輩の言ってる事は分からなくもない。たぶん、よほど辛かったんだろう。何となく理解出来るが、俺は一つの疑念を抱いている。そもそもフィリアと本当に仲が良かったのか?」
「何を言うのだ、お前は。私はあいつを妹のように思ってたんだぞ」
「では聞くが、対等だったのか?」
「ど、どういう意味だ?」
「もし先輩が言うように関係良好だったのだら、弱さの一つ二つ見せたくらいで破綻しないハズだ。なのに壊れてしまったのは、先輩が女王であるイメージを崩さないが為、距離を置いて接していたのではないか? つまり、従であるフィリアは何も言えない状態だったんだよ。それでも主の機嫌を損ねぬよう、彼女は笑顔を見せたり、気の利いた言葉を投げかけてきた。そのせいで先輩は、すっかり打ち解けていると勘違いしてしまったんだ」
「嘘だ! 私と奴は間違いなく、姉妹のような間柄だった。この点だけは譲れない」
「ショックなのは分かる。だが、受け入なければならない事もあるんだ」
「黙れ。私が知ってる事実は一つだけだ」
「だったらフィリアが先輩と話している時、気を遣っているそぶりは一切なかったのか?」
「そ、それは……」
先輩が視線を反らし、下を向く。
「もし思い当たる節があるなら、残念ながら本当に打ち解けていたとは言えない。当時の二人に必要だったのは、真の意味での相互理解だ。互いを知る為に一歩踏み出しさえすれば、違う未来が待っていただろう。俺はそう確信しているし、今からでも決して遅くないと思っている。きっと、先輩が好きだったフィリアなら、全てを受け入れてくれるんじゃないかな。過去は変えられないが、未来は変えられる。先輩にその気があるなら、喜んで手を貸す。だから、一緒に前へ進んでみないか?」
「ブ、ブヒ丸……私は散々ひどい事をしてきたのに助けてくれるのか?」
「当たり前だろ。同じ家に住む大切な住人なんだから」
「お、お前は……なんていい奴なんだ。私は、私は……うー」
先輩の頬を伝った涙が、乾いた大地を濡らしていく。
えー。いきなりどうしたー。
これは完全に想定外だ。ど、どうしよう。
正にちょっとしたパニック状態に陥っているが、ここに俺しかいない以上は慰めるしかないよな。
「せ、先輩。大丈夫ですか? 心配要らないので安心して下さい」
やべー。すっかり混乱しているせいか、ろくな言葉すらかけられない。
俺はどうしたらいいんだ?危機的な状況に拍車をかけるように突如先輩が腹に顔を埋める。
なんじゃ、この展開はー!
もう何が何だかよく分からん。
まるで夢でも見てるようだが、先輩の大きいおっぱいが体に当たってめちゃくちゃ気持ちいい。
ああ。最高の気分だ。ほろ酔い気分も程々に頭を優しく撫でる。
危ねー。危うく我を忘れそうになっていた。
今はとにかく、泣き止ませる事が先決だ。
引き続き手を動かしていると次第に体から震えが消え、鳴き声も完全にしなくなる。
凄え。イザベルにも効果ありだったが、まさか先輩の涙をストップさせてしまうとは。
恐るべきなでなで。こりゃ、最終兵器と言っても過言ではないぞ。
さあ、あとはこっから学校に行けばいいだけだ。




