第87話 天然美少女は諦めが悪い?
こりゃ、意外な展開だな。
俺でも今の状況は想像出来なかった。
にしても、やはり先輩は鬼だな。
いくら何でも数分単位はないだろ。
「とは言ってもまあ、私も一応人間だ。あと一分で勘弁してやる」
まもなく約束の時間が来たのか、先輩がようやく顔から手を離した。
と同時に赤月が前のめりに倒れ込む。
あーあ。どうやら思ってたより、ダメージが大きかったようだ。
しばらくは静観するのがベストだろう。
「そういえば、さっきは事の最中だったな」
先輩が再び胸ポケットからカギを取り出し、いよいよ忌まわしき首輪が外される。
やったー。首輪気分ともようやくおさらばだ。
バンザーイ。おっと。いけない、いけない。
いくら何でも、ぐったりしてる奴の傍で喜びを爆発させるのはないよな。
「なあ、赤月。辛いんなら手を貸すぞ」
「あ、ありがとうございます。どうか哀れな子羊に救いの手を」
未だ顔すら上げられない赤月を介抱し、やっとの事で体を起こさせる事に成功する。
が、介助が終わってもなお赤月が手を離す気配は一向にない。
「おい。いい加減に手を離せ」
「フフフフフフ。絶対に離しませんよー。私と一緒に入浴するまでは」
「なにー。お前、まだ諦めてなかったのか」
「もちろんです。さあ、お風呂場に行きますよ」
強引に前へ進もうとする赤月の前に先輩が立ち塞がる。
「どさくさに紛れてお前は何をしている? 私の犬にちょっかいを出すな」
「別にこれといって大した事はしていません。私はただすざくわんちゃんの母として責務を全うしようとしてるだけです」
な……
コイツまで何を言い出しやがるんだ。
明らかに話がおかしな方向へ進んできてるぞ。
「えーい。次から次へとあーだこーだぬかしおって。いい加減許さん!」
頭に血を上らせた先輩が、赤月の腕めがけて手を伸ばす。




