第84話 部屋にやってきたドS美少女の目的とは?
「はー? お前、頭でもおかしくなったのか? 正気の沙汰とは思えんぞ」
「だって大浴場は広くてどこかもの寂しいんですもん。しょうがないじゃないですか」
「バカヤロー。だったら俺以外の人間を連れて入浴するか、自室のバスルームを利用すればいいだけの話だろ」
「ダメですよー。それじゃあ意味がありません。私はすざくさんと入浴したいんですから」
赤月のクソバカヤロー。
もう寂しいと思う気持ちなんてすっかり忘れ、俺と風呂に入りたい一心じゃないか。
「そうか。だから、お前はそんなあられもない姿でやってきたんだな」
「はい。どうか。乙女の純情な心を受け入れて下さい」
「ざけんな! 今すぐ部屋に帰れ!」
「えー。何でですか? 昨日はあんなに乗り気だったのに」
「お前なー」
説教をたれようと立ち上がろうとした瞬間、ドアをノックする音が聞こえてくる。
うん?誰だ?
「どうやら、人が来たみたいですね。なら、私が対応します」
赤月が歩き始めようとした為、即座に制止する。
「おい。余計な事はするな。言っとくが、ここは俺の部屋だ。お前が下着姿なんかで出ていったら、また厄介な事になる」
「別にいいじゃないですが。そんな事気にしなくて。何と言っても私達は、れっきとした恋人同士なんですから」
「誰がじゃー!」
全く口の減らない小娘に渾身のゲンコツをお見舞いする。
「よーし。さあ、行くか」
「うー……」
すっかり静かになった赤月を放置し、外へ向かう。
にしても、三人のウチどいつがやってきたんだろうな?
おそらく先輩である可能性は限りなく低いだろうし、俺に対する印象が悪い麻宮でもないハズだ。
とすると、花崎しか考えられまい。嫌だなー。
なんだかんだ言ってあいつともいろいろあったからな。
機嫌が悪くなければいいが。
そしていよいよ部屋のドアを開ける。
すると、そこにいたのは白いシャツと黒いスカートに身を包んだまゆり先輩だった。
えー。ウッソー。
まさか、首輪を付けた張本人がやってくるとは。どういう風の吹き回しだ。
すっかり頭が混乱しているが、当の本人も顔を赤らめ、恥ずかしそうにもじもじと体を動かしている。
これはどういう事だ?謎過ぎてサッパリ状況が呑み込めない。
ただ、首輪のカギを持ってるであろう先輩が、目の前にいる事は事実だ。
絶好のチャンスを逃す手はない。
「先輩、こんばんわ。どうしたんですか? こんな時間に」
「お、お前にはさっき悪い事をしたと思ってな。ちょっと心配になって見にきたんだ」
な、なにー。
あの恐ろしくて卑劣な先輩が、俺を気遣うなんて。
ひょっとして熱でもあるんじゃないか?
「心配ありがとうございます。一応、体の調子はまずまずです。しかし、首輪をずっとしているせいか首周りが何だかかゆいです」
動揺しつつも、正直に言葉を返す。
「そうか。それはずいぶん悪い事をしたな」
次の瞬間、先輩が胸ポケットに手を入れ、カギをを取り出す。
「も、もしかして首輪を外してくれるんですか?」
「ああ。そうだ」
やったー!まさかこんな至福のような展開が待ち受けていたなんて。
生きててよかったー。
「じゃあ、さっそくお願いします」
「分かった。よかろう。う、うん……」
先輩が首に手を伸ばそうとした瞬間、突如として動きが止まる。
と同時に先輩の表情が途端に険しくなる。
お、おい。いきなりどうした?
もしや、外す直前で気が変わったんじゃないだろうな。
「石野すざく……お前、何を考えている? 下着姿の女を部屋に連れ込むなどハレンチ極まりないぞ」
先輩が怒りに声を震わせながら、驚きの言葉を口にする。
え?一体、何の事だ?
ま、まさか……
「赤月もえこ、ここに見参す。パンパカパーン」
うわー。嫌な予感がすると思ったら、やっぱあいつだったか。
くっそー。こんな事なら、もう一発ゲンコツを見舞うべきだった。
もはや後悔の念しかないが、こうなったからにはしょうがない。
適当に言い訳するしかないだろう。




