第75話 首輪好きの変態美少女が言葉に詰まっています
「じゃあ、そろそろ帰りましょうか」
「そうだな。行くぞ、ブヒ丸」
ブ、ブヒ丸ー?
なめてんのか、コラ!
今まで散々我慢してきたが、もう耐えられない。
「おい! 黙って聞いてれば、さっきからずっと不名誉な名で呼びやがって。この際ハッキリ言わせて貰うがな、お前だって普通の人間と大して変わらないんだからな。その俺をブヒ丸と呼ぶなら、今後アンタをメス豚と呼ばせて貰う」
ふー。すっきりした。
これでやっと鬱憤が……
あー。しまった。
ついつい本音が外へと出てしまった。
くっそ。今までコツコツと積み上げてきたモノが一瞬でパーに。
ホント、最悪だ。きっとめっちゃ怒ってるだろうな。
あ、あれ?
何だか想像していたのとだいぶ違う光景が広がっているぞ。なんじゃ、こりゃ。
俺はてっきり怒ってるとばかり思っていたが、先輩がなぜか頬に手を当て恍惚の表情を浮かべている。
一体、どうなってんだ?
「あの様子がおかしいですが、どうしたんですか?」
「いい……いいぞ、ブヒ丸。体がゾクゾクする」
えー。ちょっと待て。
まさか、コイツ。悪口を言われて快感を感じてるんじゃないだろうな?
いや。そんなバカな。先輩に限って隠れドМな訳がない。
きっと、何かの偶然が重なってこうなったんだ。
あまり深く考えないようにしよう。
「ボーっとしてないで早く行きましょう。風が出てきましたから」
「あ、ああ」
ようやく二人並んで歩き始めるも、しばらくすると先輩が何の前触れもなく足を止める。
え?いきなりどうした?
もしや、疲れたのか?
「先輩、しんどいのは分かりますが、頑張って下さい。あとちょっとで町が見えてくるでしょうから」
「いや。私は疲れたのではない。実はお前に頼みたい事があるんだ」
なんだ、だからストップしたのか。
なら、さっさと話を聞いてしまおう。どうせ、大して時間もかからんだろうしな。
「分かりました。遠慮なく喋ってください」
「う、うむ。では、単刀直入に言わせて貰う。もしお前が良ければでいいのだが、もう一度だけめ、め……」
勢いよく話し始めたかと思いきや、先輩が顔を赤らめ言葉に詰まる。
おい。突然何だってんだよ。
照れる理由がサッパリ分からんぞ。
「どうしたんですか? どんな頼みでも笑いませんから楽な気持ちで話して下さい」
「そ、そうだな。リラックス、リラックス。オッケー。大丈夫だ、さあ、行こう。お前が良ければでいいのだが、そ、その、もう一度だけめ、め……」
「は、はい? もっと大きい声で言って下さい」
「くっ、くー。もういい……頼みとやらはなかった事にしてくれー」
先輩が叫びながら、町の方向に全速力で走り出す。




