第69話 ドS美少女の頼みを聞かなければ魔法を解いて貰えない?
「という事は何か。いい子にしていれば魔法を解いてくれるのか?」
不満を呑み込み、会話を続ける。
「いや。今の所は解くつもりはない」
「はー? じゃあ、俺はどうすればいいんだよ。ずっと床で寝てろってか」
「そうではない。とりあえず話を聞け。実は、私はとある件でちょっと困っていてな。ちょうど誰かの手を借りたいと思ってたんだ。という訳だから貴様。協力しろ。さすれば、今すぐ魔法を解く。どうだ? シンプルで分かりやすいだろ?」
何だよ。急に頼み事なんて予想外だぞ。
まあ聞いた限りでは分かりやすいが、まだ具体的な内容も理解してない
んだから返答しようがない。
だいたい協力者なんて探せばいくらでもいるだろうに。
わざわざ俺に声をかけてくる意味が分からん。
コイツは何を考えてるんだ?
「お前が誰かの助けを欲してるのは呑み込めた。だが、いろいろと不確かな事が多すぎる。もっと情報をくれ」
「フフ。どうやら話を前向きに捉えているようだな。よい。もっと詳しい話をしてやろう」
怪しい笑みを浮かべ、イザベルが再び体を密着し始める。
おーい!またかよ。
もう何なんだ、コイツは。
「まず最初に一番大事な事を言っておく。貴様には、SMオルガニスに私のパートナーとして加入して貰いたい」
なにー。いきなり何を言い出すのかと思ったら、変な組織に入れだと。
冗談じゃない。SMとは、互いの快楽を満たす為に存在する怪しい関係であると聞く。
コイツはその事を理解してるのか?
一歩間違えれば、確実に怪しい世界に足を踏み込んでしまう事になるんだぞ。
そりゃ俺も男だ。イザベルと刺激的な事が出来ると思うだけで嬉しい気持ちになる。
だが、とても複雑な気分だ。ひょっとしてイザベルはSMについて誤った認識を持って
るんじゃないか?
とりあえず探りを入れてみるか。
さっき同様に手で口を塞ぐ。
「お前の誘いにすぐ返事をしてやりたいのは山々だが、SMオルガニスとは何なんだ? ちゃんと分かるよう説明してくれ」
「よかろう。私の言うSMオルガニスとは、スペシック・モンスター・オルガニゼーション。つまりは希少なモンスターを保護する組織の事だ」
えー。何それ。俺はてっきり怪しいもんだとばかり思ってたが、どうやら違ったみたいだ。
先走らなくてよかった。
「おそらく多くの人間は、高い戦闘能力を持つモンスターなど助ける必要はないと考えているだろう。むろん、私とて同じだ。だが近年、動物や精霊に近い非戦闘タイプのモンスターが誕生するようになってきたのだ。彼等は大きな力を持たぬ一方で美しい見た目を備えている。不幸な事にそれが災いし、悪い人間がペットとして売りさばくケースが続発しているのだ。その行為が、私にはどうしても許せん。全く人間とは愚かでひどいものだ。よくもあんな健気な子達を……」
徐々に怒りがこみ上げてきたのか、イザベルが俺の胸ぐらをおもいっきり掴む。
な、なんでこうなるんだー。
お前が怒りを抱いているのは悪さをしてる人間だろ。
「ちょっと落ち着いてくれ。今熱くなってもどうにもならないだろ」
「そ、そうだな。悪い事をした」
ようやくイザベルが、ゆっくりと手を離す。
ふー。助かった。
とりあえず危機は脱した事だし、気になった事でも聞いてみるか。
「組織についてはよく分かった。しかし、どうして俺がお前のパートナーとして入らなければならないんだ?」
「理由は至って簡単だ。希少モンスターを捕獲しようとしている連中は、海賊、剣士、錬金術師などを雇っている。そいつらに対抗するのは一人じゃ無理だ。従ってSMオルガニスでは、あらかじめ複数名での登録が義務付けられている。だから、貴様が必要なんだ」
いつになく真剣な表情でイザベルが熱いまなざしを送ってくる。
はー。参ったな。
まさか、コイツにこんな事を言われるとは。
確かに嬉しい言葉ではあるが、剣士や海賊達と戦うなんていかにも面倒くせー。
というか俺なんかがいても足を引っ張るだけだろう。
それにそもそも組織に入って行動するメリットがよく分からん。
コイツはそこらへんの事をどう思ってるんだろうか。
ひとまず話をしながら、協力を諦めてもらうよう仕向けてみるか。




