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第63話  ち、違うんだ。誤解しないでくれ。俺はお前の胸に触りたくて触ったんじゃないんだ。

 えっと、水道は確か。

 お、あった、あった。ちょうどベッドの左斜め前方にある。

 さっさと水をゲットしよう。


 流し台まで移動するとすぐそばに紙コップが何個か置いてあった為、一つ拝借し、水を注ぐ。

 まもなく適量に達した為、再びイザベルの元へ戻る。


「おーい。水持ってきたぞ」

 ベッドの方に視線を向けてみると、今正に腹筋をしているイザベルが目に入る。

 

 えー。何やってんだ、コイツは。

 まさか、もう体力が回復したのか?

 にわかには信じられないが、この光景を見たらそうとしか思えない。

 やっぱイザベルは正真正銘の化け物だ。普通に怖えー。

 やがてイザベルが腹筋を止め、俺の方を見る。


「でかしたぞ、石野すざく。早く水をくれ」

「あ、ああ」

「慌てずにゆっくり飲めよ」

「ああ」

 言葉とは裏腹にイザベルが勢いよく水を飲み始める。


 おーい!言ってる事とやってる事がさっそく違うじゃないか。

 言っとくが、お前はまだ病み上がりなんだからな。

 調子にのると、痛い目に遭うぞ。案の定、イザベルが苦しそうにむせる。

 ホラ、言わんこっちゃない。あれほどゆっくりと飲めと言ったのに。

 


「おい、大丈夫か?」

 声をかけながら背中をさする。


「だ、大丈夫だ。ゲフ、ゲフ。何の心配も要らない」

 おいおい。俺には明らかに苦しそうに見えるぞ。

 ホント、コイツは意地っ張りだな。

 それから程なく、イザベルがまるで何事もなかったかのように水を飲み干した。


「ふー。生き返った。とても心地よい気分だ」

 相変わらず超絶的に回復が早いな。

 一体、コイツはどんな体してんだ?

 

「そりゃ、よかった。水さまさまだな。よければもう一杯持ってこようか?」

「いや。十分だ。気持ちだけ受け取っておこう。それと……貴様がいて本当に助かった。ありがとな」

 恥ずかしそうに顔を赤らめ、イザベルが視線を下に向ける。

  

 まじかー!今日はなんて日なんだ。

 褒められるだけでなく、感謝の言葉まで言われるとは。

 何だか物凄く気分がいいぞ。


「いやー。それ程でも。俺ってそんなにいい事したかな」

「少なくとも、私にとっては役に立った。存分に誇るがいい」

「フフ。そうか」

「ああ。貴様が嬉しそうで何よりだ。ただ、どうしても分からない事がいくつかある。なぜ私は保健室にいるんだ? 確か私は、一階に行こうと三階の廊下を走っていたハズだが、どういう訳かそれからの記憶が全くない。極めて訳の分からない状況だ。そしてさらに謎なのがまだ授業中であるにも関わらず、貴様が保健室にいるという事だ。これはどういう事なんだ? もしかして貴様。私に何か隠し事をしてるのではないだろうな?」

 途端にイザベルの表情が険しくなる。

 

 し、しまった。いろいろな事がありすぎてすっかり適当な話を考えるのを忘れていた。

 まずい。今の状況だと、何もかも素直に話さなければいけなくなってしまう。

 どうする?時間なんてもうないぞ。えーい。こうなったら、一か八かだ。

 俺達がいるのは保健室なんだから、貧血で倒れたと言えば何とかなるハズだ。

 とりあえず俺の方は倒れたコイツを運んできた事にしよう。

 

「別に何も隠し事なんてしていない。俺がここにいる理由は至ってシンプルだ。次の授業に向かう途中、三階で倒れていたお前を偶然発見し、運んできた。たったそれだけの事だ」

「やはり、私は三階で気を失ってしまったようだな。薄々予感はしていた。面目ない。しかし、どうして私は意識を失ってしまったんだ? 理由が全く分からんのだが」

 不思議そうな表情を浮かべ、イザベルが尋ねてくる。


「たぶん、貧血だったんじゃないかと思う。近頃の女子はいろいろと栄養が不足していると言われているからな」

「(そうか、貧血か。確かに最近の私は食事が偏っていたかもしれない。これからは気を付けよう)まさか、貧血で倒れてしまうとは想定外だが、まあいい。貴様の話を信じて授業を受けなかった事を大目に見てやろう」

 

 

 ふー。よかった。見事に貧血作戦大成功だ。

 フッフッフッフッ。イザベルも意外に単純だな。


「それは助かる。今日は朝からいろいろあって疲れていたんだ」

 とは言っても、たっぷり寝たからさほどしんどくはないがな。


「なんだ、貴様も具合がよくなかったのか。なら、しばらく休んでいくといい」

 イザベルがクールな表情で意外な言葉を口にする。

 

 あれ?コイツにしては妙に優しすぎる気がする。どうなってんだ?

 よく分からんが、タマには甘えるとするか。

 

「じゃあ、そうする事にするよ」

「ああ。調子の悪い時は休むに限る。しっかり寝ておけ。ところで石野すざく。貴様は私を保健室まで運んで来たと言ったが、何か悪い事をしてないだろうな?」

「する訳ないだろ」

「本当か? 嘘だったら承知せぬぞ」

「ホントにホントだ。信じてくれ。あ、でもそういえば、無意識にお前のおっぱいをパフパフしてしまった気がする。確か、十回くらい揉んだな。いや、九回だったけかな。悪い。ハッキリとは覚えていない」

「そうか……貴様はどさくさに紛れてそのようなハレンチ極まりない事をしていたんだな」

 見る見るウチにイザベルの顔が険しくなっていく。


 し、しまった……

 つい正直に答えてしまった。

 俺のバカヤロー。早いとこ何か言い訳しないとまずいぞ。

 

「ち、違うんだ、イザベル。誤解しないでくれ。俺はお前のおっぱいに触りたくて触ったんじゃない。たまたま地面に手を付いたら、既におっぱいがあって自分ではどうする事も出来なかったんだ。そう。あれはもはや不可抗力だ。どうか、許してくれ」

「私の乳に触れたくもなかったのに触れてしまったか……それは気の毒だな」

 意味深な言葉を残した直後、イザベルがなぜか顔を下に向ける。


「だろ。今日も昨日も災難ばかりでこっちはすっかり参りそうだよ」

「違う」

「え?」

「被害者は私の方だ。知らぬ間に乳を揉まれたあげく、触った本人は自分の意思ではなかっただと。こんな屈辱は初めてだ」

 イザベルが小刻みに体を震わせ、拳を強く握りしめる。

 程なく、全身から身の毛もよだつ程のオーラが溢れ出てくる。

 

 

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