第31話 フライパンでぶん殴ってあげるわ!
な、なんだ?いきなり手を握ってきたぞ。
もしかして俺にも春が来たのか?
フッフッフッフッ。きっとそうに違いない。
こうしてせっかくチャンスに恵まれたのだから、四の五の考える必要はない。
勢いのままコイツと密な関係になってやる!
「ありがとな。素直に嬉しい。どうか手を貸してくれ」
「うん」
ああ。なんて可愛い顔をするんだ。
こりゃ、たまらん。
「ホント、お前が意外にいい奴でよかった。僅かに希望の光が見えてきた気がする」
「な……それはどういう意味? ひょっとして顔がキツいから、優しい行動なんてするハズないと思ってたの?」
やべ。どうやら余計な言葉を口走ってしまったらしい。
早く弁明しなければ。
「違うんだ。俺は何もそういう意味で――」
「しかも、さっきからお前、お前って。何様のつもりよ!」
「はー? お前と言ったのはたった数回きりだろ」
「あー。また言った。もう許せない!」
何だよ。今のもカウントしてるのか。
心狭すぎだろ!と発したいのは山々だが、このまま怒りがヒートアップしたら確実に面倒な事になるに違いない。ひとまず謝るしかないだろう。
「悪かった。冷静に考えれば、失言だったと思う。頼むから心を鎮めてくれ」
「嫌! 冗談じゃないわ。絶対に地獄へ突き落としてやる」
ひー。体から怒りの赤いオーラが。
なんて恐ろしいんだ。もはや、コイツの威圧感はモンスターと同等と言っていいだろう。
思わず腰が引けてしまいそうだ。だが、ここで逃げる訳にはいかない。
ギスギスした関係が続くのは真っ平ごめんだからな。
「は、花崎。お前の髪はホント綺麗だな。一体、どんな手入れをしてるんだ?」
「うっさい!」
「いやー。今日は天気がいいな。今から一緒に出掛けないか?」
「うっさい!」
ダメだー。
ことごとく同じ反応しか返ってこない。こら、お手上げだ。
ただただ立ち尽くしていると花崎が突然ベッドの向かい側へ移動し、下から大きめの箱を取り出す。
なんだ、あの四角い木箱は。中には何が入ってるんだろ?
全く想像が付かないが、キレ具合から判断するによくないモノが入ってるに違いない。
もしかしたらとんでもなく恐ろしい武器が入ってるのかもしれないぞ。
まもなく花崎が蓋を開けると、大きなフライパンが姿を現す。
何だよ。どんな中身かと思ったら、料理器具かい!
心配して損したな。
「石野すざく。覚悟!」
「えー。嘘だろ」
目が合うなり、フライパンを振り下ろしてきた花崎の攻撃を何とか回避する。
「バカヤロー! 死んだらどうするつもりだ?」
「あら。大丈夫よ。ちゃんと手加減してるから」
ざけんなよ。見るからに本気でやってたじゃないか。
以降もしばらく修羅場が続いたものの幸い体をかすめる事はなく、あっという間に二、三分経過する。




