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第30話 な、なに言ってるのよ。バカ!

 はー?お前はド変態か!

 異性の前であられもない姿をさらせば、確実に事故が起きるぞ。

 俺は絶対に従わんからな。と強く主張したいのは山々だが、突き刺さるような視線が怖え。

 結局恐怖には打ち勝てず、シャツに続いてズボンを下へと下す。

 

「きゃー」

 な、何だ、この反応は。

 こっちは望み通り、すっぽんぽんになろうとしていただけなんだが。


「ちょっと何やってんのよ! 男のパンツなんて見たいと思う訳ないじゃない。バカじゃないの!」

 あーん!やれとほざいたのはどっかの誰かさんだろうが!

 なめてんのか。

  

「ざけんなよ。そんなの初耳だ」

「確かに。私は上半身だけとは口にしなかったわ。ただ、一般常識から考えれば、上だけと思うのが普通でしょ。あそこまで堂々と。やっぱアンタは正真正銘のド変態だわ」


 ちっくしょー。正論すぎて何も返せない。

 悔しいが、とりあえず謝るしかないだろう。


「悪い。どうやら、早とちりしたみたいだ」

「いいから早くズボンを上げてちょうだい。目障りよ!」

   

 に、憎たらしい。なんて腹が立つ奴だ。

 気持ちを抑え、何とか履き直す。

 

「これで満足か?」

「まあオッケーいいでしょう」

 直後、花崎が三歩程前進し、手を伸ばせば触れられる距離まで近付いてくる。


 またまた何だ。

 コイツの考えている事が全く分からん。

 

「では、失礼するわね」

 謎の言葉を発すると花崎が突如中腰になり、腹をガン見し始める。


 な。腹なんか見たって何も……

 いや、待て。もしかして体を隈なく調べて人体実験でも企んでるんじゃ。

 にしては、やけに表情が曇ってるな。ひょっとして急に具合でも悪くなったのか?

 以降も迷惑行動が終わる事はなく、瞬く間に数分の時が経過する。

  

「な、なあ。体の調子がよくないなら、少し休んだ方がいいんじゃないか?」

「別に何ともないから心配しないで」

 バカヤロー!お前が大丈夫でも、俺が辛いんだよ。

 たく。物分かりが悪い奴だ。


「ねえ? ちょっとお腹触ってもいい?」

 な……

 ついに来たか。冗談じゃない。

 いいようになんかされてたまるか。


「ダメだ。何か企んでるのかもしれないが、そうはいかないぞ」

「何それ?」

「へ? お前は人体実験するつもりじゃないのか?」

「プッ」

「何で笑うんだよ。俺は至って真面目だぞ」

「フフフフフフ。やーね。アンタってホント馬鹿だわ」

 


 一体、何がおかしいというんだ?

 サッパリ状況が呑み込めん。

 ただ、やっぱ女子の笑った顔はいいな。

 この表情を見ているだけで何となくハッピーな気持ちになれる。

 これからはコイツの笑顔がずっと見られるんだもんな。

 なんだかんだ俺は幸せ者だ。うんうn。

 おっと、いかん。すっかり気が緩みがちになっていた。

 決して油断は禁物だぞ。



 


「どうして腹を抱える程笑っている? さっきの発言はそんなに的外れだったか?」

「ええ。私は単にタヌキ校長が言ってたお腹の数字に触れてみたかっただけ。なのに。フフフフフフ。バカも休み休み言いなさいよ」

 何だよ。だったら、先に喋ればいいモノを。

 花崎のバカヤロー!恥ずかしい思いをしたのはお前のせいだ!

 感情が爆発しそうになるも、何とか耐える。


「という訳だからお願い。いいでしょ?」

 か、可愛い。コイツは甘えた顔も出来るんだな。

 本来なら拒否したい所だが、可愛いから許す!


「分かった。ちょっとくらいならな」

「じゃあ、遠慮なく」

 まもなく、数字が書かれた部分をなぞるように花崎が腹を触り始める。


 うわっ。意外とくすぐってぇ。

 こりゃ、ある意味地獄だぞ。

  

「どうやら、話は本当だったみたいね。さすがはタヌキ」

 助かった。想像より早く終わったな。

 にしても、校長も可哀想に。


「まあ、冗談めいた感じだもんな。疑うのもよく分かる。実は、俺も最初は半信半疑だったんだが、数字を見てホントなのかもしれないと思ってな。今に至るという訳さ」

「私もつい数分前までは信じていなかったわ。けど、今は違う。だから、そ、その。石野君が良かったら……」

 

 あれ?何か様子が変だぞ。妙に恥ずかしげに体をもじもじ動かしている。

 これはどういう事なんだ?


「どうした? 顔が赤いぞ」

「う、うっさいわね。別に何ともないわ」

「んな訳ないだろ。お前は確実に何か発しようとしていたじゃないか。確か、いし――」

「わー。止めてー。ぶつわよ」

「じゃあ、自分で話してくれよ。さすがに殴られるのは嫌だからな」

「しょ、しょうがないわね。なら、教えてあげる。ズバリ私が言おうとしていたのは、ライフの件で困ったら、協力させて欲しいって事。分かった?」

 

 えー。つまり、キスオッケーって事か?

 まさか、自ら申し入れてくるなんて。

 嬉しいなー。てか、なぜ手を貸してくれるんだろう?

 

「サンキュ。ありがたい限りだ。だが、どうして手助けなんかを?」

「理由は簡単よ。学校を守ってくれたから。それに尽きるわ。実はオスフェリアは個人的にとてもかけがいのない存在なの。あれは確か、十年前だったかしら。当時の私は人付き合いが苦手で誰かと出くわす度にトラブルを起こす問題児だったわ。加えて夢も目標もない。ハッキリ言って人生に疲れていたの」

 

 おいおい。いくら何でも絶望を抱くのが早すぎやしないか。

 お前は中年のおっさんか。


 

「でも、たまたまお爺ちゃんと出かける機会があって。その時に初めてオスフェリアを知り、魔法と出会った。以降、私は来る日も来る日も勉強に明け暮れ、とても充実した毎日を送っていたわ。そして今年、念願叶っていよいよ入学出来たのだけど、昨日の悪夢が襲った。私は演習を受けていたからいなかったのだけど、後に全容を聞かされてね。大切な場所を守ってくれたのが石野君だと知ったの。だから、せめて恩返でもしようと」

 なるほど。ちゃんとした理由があっての発言だったのか。

 だったら、あながち嘘ではなさそうだな。

 ただ、感謝され過ぎなのもどうなんだろう。

 あくまでも昨日の一件は、運が良かっただけだぞ。



「お前がどんな思いを抱いているのかよく分かった。だが、モンスターを倒せたのは授かった力による所が大きい。俺自身は何もしていないに等しいぞ」

「そんな事ないわ。少なくとも私は感謝している。言葉では言い表せない程にね。だけど、その恩人とも言うべき人が今、死にかけている」


 いやいや。しっかり生きてるだろうが。

 それはお前の勘違いだ。


「悪いが――」

「ちゃんと優しくするから、私の想いを受け止めて」

 




 



 

 





 

 

 



 



 

 






 

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