03話 その物語より1
頑張って書き上げました!ブルーライトで目が壊れそうです。
「それじゃあママ、行ってくるね!」
「気を付けてね。5の鐘までには戻ってくるのよ」
「はーい!」
わたしは元気に返事をして、外の世界に飛び出したの。
「んー気持ちぃー!」
ぽかぽかのお日さまと可愛い蝶々を見るだけで、わたしのこころは何だか軽くなっていつの間にか鼻歌なんて歌いながらスキップしてたりする。
ママが作ってくれたエプロンドレスと、バスケットの中にはディーダおばさんのお店で買ってきたパンが2つ。いつもと同じだけど、今日は少し特別な日なの!
しばらくそのままスキップしてると、牧場を経営しているオドアおじさんが、おじさんのお家の前のお花にお水をあげてるのが見えてきたの。
「オドアおじさん、おはよう!」
「おお、おお、おはよう、ルルナの嬢ちゃん。今日も上機嫌だね。何しにいくんだい?」
「みんなに挨拶して、その後お花を摘みに行くの!今日はママのお誕生日だから、花飾りを作ってママにプレゼントしてあげるんだ!」
「おお、そりゃあ良い。綺麗なのを作るんだよ」
「うん!またね、おじさん!」
「気を付けていくんだよ」
その後もパン屋さんのディーダおばさんと農家のヤゼンお兄さんとマゼンダおばさん、それにドブルグおじさん、あと神殿長のルザビエさんと巫女さん達に挨拶して、お日様が高い位置から見下ろすようになった時にはいつもの待ち合わせ場所のシャーロッティア丘に着いたの。
「もう、ルルナったら、いっつも遅いなぁ」
「仕方ないでしょ?シャルルくんが早すぎるだけよ」
「何が仕方ないんだか。こっちは2時間も待たされてるんだけどな……ま、別に良いけどな」
「へっ?に、2時間も?ご、ごめんね、明日からは気を付けるから!」
「だから別に良いって。ここで鳥とか草花を見ながら1人でボーっとしてるのも、案外好きだしな」
ヤゼンお兄さんの弟で、わたしと同じ11歳のシャルルくんは、遠い空を見上げながらそんな事を言ったの。
「まあルルナが来たからにはボーっとしてても仕方ない。おばさんの為にも、とっとと行こうぜ」
「うん!」
こうしてわたしたちはお花を摘みに、秘密の場所まで行く事になったんだけど……。
「もう、どうして道に迷ってるのよ!」
「わ、悪い悪い。ま、間違えちゃったみたいだ」
シャルルくんが何処かで道を間違えた所為で、わたしたちは森の中で迷っちゃったの。
「ルルナ、コンパスとかって……」
「もう、何で持ってきてないのよ……はい、これ」
「サンキュー」
シャルルくんはわたしからコンパスを受け取ると、慣れた手つきで北北東へと進み始めたんだけど……。
「ねぇ、ほんとにこっちであってるの?」
「いや、分かんないけど、兄ちゃんが『森で迷ったら取り敢えず北北東に進め』って」
「まぁ、森は村の南西にあるから、間違ってはいないわね」
「だ、だろ?」
「とは言っても、ねぇ……」
やっぱり不安よ、と声に出さずに呟く。それでもそのままシャルルくんに着いていくと……。
「なぁ、これって……」
「う、うん……」
それを見て、こくりと唾を飲んだの。そこには、得体の知れない門と、見るからに人工物の洞窟があったの。
「て、手を出さない方が良さそうね……」
「だ、だな」
こうしてその洞窟を通り過ぎると、すぐに村まで戻れたの。
今度こそしっかりと目印を確認しながら進んで秘密の場所まで辿り着き、無事花飾りを作って帰ろうとしたんだけど……。
「なぁ、ルルナ……」
「どうしたの?」
「あの場所まで、もう一回行ってみないか?」
「な、何言ってるの!?絶対駄目よ!あんなの不味い所に決まってるじゃない!それに、あんな場所も分からない所に、日が暮れる前に辿り着けると思うの!?」
「勿論出来るぜ。森の中は8歳の時にくまなく調べてるからな。それに、不味い所だからこそ調べに行く価値があるんじゃないか」
「だったら何で迷ったのよ?」
「俺も不思議なんだよ。いつもと同じ通りに進んでたら、いつの間にか全然知らない所に出てるんだからな。それに、そんな訳の分からない場所だからこそ、尚更興味が出てくる」
ほんとにもぉ……男の子ってほんと訳わかんない。第一、森の中を熟知してても、訳の分からない場所にそう都合良く行ける訳ないじゃない……。
なんて思ったけど……。
「……まぁ、別に良いわ。わたしも興味あったし」
「ほ、本当か!?じゃ、じゃあ早速行こうぜ!」
「ほんとに……シャルルくんってば単純なんだから。言っとくけど、お日様が4の鐘と5の鐘の間くらいになったらわたしは帰るわよ。その時は……」
「その時はシャルルくんが送り届けなさいよ、だろ?」
「ふふん、よく分かってるじゃないの」
「もう付き合いも長いしな」
「うーん、確かに、言われてみればそうね」
確かに、記憶にある頃にはシャルルくんと遊んでいたような……。小さな村だし、年の近い子供もあまり多くないから当然なのかもしれないけれど。
そうそう、お母さんったら、絶対わたしをシャルルくんと結婚させる気だわ。だって、そうじゃなきゃ同い年の男の子と物心ついた時からずっと遊ばせるなんてしない筈だもの。でも、わたしは絶対にシャルルくんとなんか結婚しないわ!
でも……案外悪くないかもしれないわね。シャルルくんはお馬鹿さんで調子に乗りがちだけど、優しいし面白いし、ちょっとかっこいいし……。
「ん?どうしたんだ?赤い顔で考え込んじゃって?」
「ふにゃっ!?べ、別に何でもないわよ!さあ、早く行きましょっ!」
「な、なんで怒るんだよ……。まあ良いや、行くぞー」
危なかったわ。シャルルくんにこんな事考えてるってバレたら、絶対ニヤニヤ顔で、『何だよ、ルルナも俺の良さに気付いてるんじゃないか』って、弄んでくるに違いないわ。
そうよ、やっぱりお馬鹿さんで調子に乗りがちで、単純でビビりでヘンタイのシャルルくんとなんか絶対に結婚したくないわ。
〜★〜★〜★〜
本当に辿り着けるのか、というわたしの疑問に反して、わたしたちは本当にあの場所ま辿り着く事が出来たの。
「まさかほんとに辿り着けるなんて……」
「だから言っただろ?んじゃ、早速入ろうぜ」
別に偶然でしょ、という突っ込みは置いておいて、わたしはシャルルくんに続いてその門をくぐったの。すると……、
「へっ……?何、これ……?」
入ってきたわたしたちに反応するかのように、洞窟の奥から光が漏れてきたの。それ以上踏み入れてはいけないという事は明白だった。
「ね、ねぇ、もう帰らない?」
「……いや、俺は行ってみる」
「な、何言ってるのっ!?何があるか分からないわよっ!?」
いつもはむしろ逆の立場だと思う。けれど、何故かこの時のわたしはとっても怖くて、逆にこの時のシャルルくんは勇気に溢れていたの。
「だからこそ、だよ。ルルナはどうするんだ?怖かったら帰っても良いぞ?」
「……暗い洞窟を2人で歩く時、男の子がか弱い女の子をエスコートして歩くのは当然よね?」
「お、おう、勿論だ……(か弱い、ねぇ……)」
「何か言った?」
「い、いえそんな事は!……い、行くって事で、良いんだな」
わたしは無言でこくりと頷くと、シャルルくんがおずおずと差し出した手をきゅっと握った。
洞窟の奥にある“何か”に近づく度、わたしの心の内で膨らむその感情はどんどんと増していく。
何でだろう……とっても、怖いの。何か、取り返しのつかない事が起こってしまうような気がして……。
「行き止まり……?」
「……待って、何かあるわよ」
「本当だ。祠……かな?光もここから出てるみたいだ」
シャルルくんが言い終わるか言い終わらないかの瞬間、その祠は突如強く光って……すぐに止まった。けれど、異変が終わった訳ではなく、むしろ事態は悪化していたの。
「グルルルル……」
祠から出て来た異形……その魔物は、ギラついた目でわたしたちを睨んで来たの。
「不味い!ルルナ、逃げて救援を呼ぼう!……ルルナ?ルルナ!!」
恐怖でちっとも身体が動かない。けれど魔物は一歩ずつ、確実にわたしに近づいてくる。
「ガルルッ!!」
「危ないっ!」
不意に身体が持ち上がる感覚がした。シャルルくんがわたしを持ち上げたのだ。
走りながらシャルルくんはわたしに言う。
「何やってるんだ!俺が助けなければ食べられてただろ!」
「……ごめん。洞窟を出たら自分で走るから、それまで、お願い」
「分かった!てか、ルルナ、お前意外と重いな!食べ過ぎなんじゃないか!」
「……余計なお世話よ。むしろ、そんなに食べるものなんて無いわ」
「元気が無いなんて、らしくないぞ……ほら、洞窟はここでおしまいだ!走れる!?」
「うん」
シャルルくんはわたしを降ろすと、手を繋いで走り出したの。すぐ近く、後ろから魔物の叫び声が聞こえる。歩みを止めたら、すぐに餌食になるに違いないわ。
でも、わたしを抱えたまま走ったシャルルくんにとって、このまま走り続ける事は不可能だった。いつの間にかわたしが引っ張る形になっていたけど、すぐに魔物に追いつかれてしまったの。
「クソ……俺の事は、気にするなっ!早く、助けを……っ!」
「な……出来る訳ないでしょっ!変なこと言ってないで、早く逃げ……」
「ガルルッ!!」
「きゃっ!!」
一撃目は、手を繋いでいたから辛うじて避けられた。けれど、またすぐに2撃目が訪れるだろう。
わたしは……何て無力なんだろう。わたしを守ってくれた友達の男の子1人すら、守れないのかな。……ううん、守れる。どうしたら良いのか、その答えは簡単な事……。
(ドンッ!)
「シャルルくん、逃げて!!」
「ルルナ、何を……」
「グルアァッ!!」
「ルルナぁぁぁあああ!!」
でも、わたしは死ななかった。腕が、魔物を抑えていた。そして、突如として背中に生えた大きく黒い翼が、魔物を薙ぎ払った。
「ガルアッ!!グルルルル……」
「何、これ……」
怒りの表情を尚一段と増した魔物がわたしを威嚇してくるけれど、そんなものよりわたしはこの得体の知れない力が……わたし自身の方がずっと怖かった。
魔物が再び飛び掛かってくるけれど、それを、翼から勝手に射出された漆黒の羽が貫いて……やがて静寂が訪れた。
「いや……なに、これ……戻って、元に、戻って!!」
けれど、いくら泣き叫ぼうとその悪魔のような姿が元に戻る事は無かった。
「ルルナ……その姿……」
「っ!……ごめん!」
ただひたすら駆けた。何方が何方とも知れずに。この姿を見れば人々が恐れるのは容易に想像出来た。……オドアおじさんや、もしかしたらシャルルくんやママでさえも。
それは本能的な感覚だった。大好きな人達に嫌われるくらいなら、いっその事もう何処かへ消えてしまいたかった。
けれど、わたしのその思いは叶わず、5の鐘が鳴る頃にはわたしは村へ着いてしまっていた。
皆さんどうやって小説書く時間を確保しているんですかね……?




