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最弱勇者と万能メイド  作者: 浮遊する生物KURAGE
第2章 懐かしの味を求めて
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04話 港町へ行こう!

結局またしても一晩泊めさせてもらった俺達は、ピアナに軽く挨拶してから邸宅へと戻った。

本当はピアナに“忌み子”について聞きたかったが、俺の中にある何かがそれに歯止めを効かせた。

……きっとまだ、知っちゃいけないんだろう。


「勇者様。では、早速マーリズへ向かいましょう」


「え、今から?」


「では、戦闘訓練をしてからに致しましょうか?」


「じゃ、じゃあ今からで……」


本当はここでゆっくりしてからが良かったが、まあ城でも羽を伸ばしたし、いっか。


「えー、もーいくのぉー?」


「では、クルルさんはお留守番で……」


「は、はい、行きまーすっ!」


「承りました」


こうして俺達はマーリズへと出発した。


〜★〜★〜★〜


マーリズへは、馬車を使って2時間と30分くらいで着いた。決して都会とは言えない規模の街だが、街中を走る水路や整った石造りの建物は、あたかも写真で見たベネツィアのようだ。

だが、それにしても……、


「人気が無いな」


「おかしいですね。マーリズにも普通の村くらいの人口はある筈なのですが……」


「クンクン。……この水濁ってるよぉ。結構臭いしぃ……」


「ぴゅいぃ……」


何なんだ、この違和感は。一体、何があったんだ。


「あ……勇者様、あそこに人がいます」


ルルナの指差した方向、海の上にある丸太の桟橋の上に、恐らくは中年とみられる女性がいた。

「本当だ。話を聞きに行こう」


俺達はそのおばさんに話を聞く為、近づいた。


「すみません、この街で、一体何があったんですか?」


「旅の人かい?アンタら、悪い時に来ちまったね。実はこの前、ここで水竜様が暴れてね。お陰で水路の水は浄化されないし、おちおち海にも出られない。みんなお腹が空いて家で寝てるよ」


「うわ、マジか……」


水竜様っていうのは、そのまんま水の中にいる竜って事で間違いないだろう。

それにしても、恐らくかなり強いであろう竜が暴れたとなれば、確かに不安かもしれない。


「それで、何で貴女はこのようなところに?」


「……一人娘が、水竜様に連れ去られたんだよ。生贄としてね。もう3日前の話だけど、食事する時と寝る時以外、ずっとここにいるんだよ。それで、そのすぐ後に水竜様が暴れたのさ」


「そんな……。勇者様、助けに行きましょう。それならばまだ希望はあります」


「え……まだ、その人は、生きてるの?」


「はい。マーリズの海に住まう水竜は10年に一度、10代の女性を攫い、その7日後に儀式に使うと言われています。それまで生贄には食物が与えられるそうですから、まだ生きているかと」


儀式って何のだよ。てか、7日間間置く意味!全く訳分からん!

だがおばさんはそのような疑問を抱く事も無かったようで、ルルナの話を鵜呑みにしてしまった。


「そ、そりゃ本当かい!?い、いやでも、アンタらあんまり強そうに見えないんだけど……」


「ご安心下さい。こちらの方は今代の勇者、ヒロミ・ヤマモト様ですから」


ギョッとして思わずルルナの方を見るが、ルルナはこちらを一瞥して、一見無表情に見えるドヤ顔を作る。

……何でルルナの表情が読めるようになっちゃったんだろう。不思議である。


「ほ、本当に勇者様なのかい!?ぜ、是非、娘を助けて下さい!」


ルルナが何も言おうとしないので、俺は


「わ、分かりました」


と答えておく。


「あと、水竜様は沖合に4キロくらい行ったところから、10メートルくらい潜ったところにある水中神殿にいるらしいのよ。船は出すし、服も貸すからね」


そう言ったおばさんは駆け足でどこかへ行くと、すぐに何かの服を持って現れた。


「大きさはこれでどうだい?」


おばさんが持って来たのは、水着だった。1つは海パン、もう1つはビキニ。って、何でこんな中世ヨーロッパっぽい世界に水着なんかあるんだよ!

とは思ったものの、おばさんから力強く手渡された海パンは何故かサイズピッタリだった。


「な、何でサイズが合ってるの……?」


「ハハ、うちは水着屋を営んでるんでね。で、そっちのお嬢ちゃんは、と……身長的には問題ないけど、ちょっとバストがねえ……。悪いけど、これ以上小さいのは用意してないんだよ。」


「へ!?……ゆ、勇者様っ、聞かなかったことにして下さいませっ!」


頰を真っ赤に染めてそう言ってくるルルナの気迫に押されて思わず、


「う、うん、分かった」


と言ってしまう。

……それにしても、何だかルルナが不憫に感じてきた。確かに、色気さえあればこの世の誰にも負けない美少女だと思うんだけどね……。

てか、何で港町に水着屋さんがあるんだよ……。


「ちょっと待ってておくれ、ワンピースタイプのやつを持ってくるから」


再びおばさんが駆けて行ったのを確認してから、クルルがルルナの頰を突っつく。


「残念だったねぇー、ルルナぁ。まあでも良いじゃん、こんなに柔らかい頬っぺたがあるんだしぃ?」


「へっ!?や、やめて下さいっ、海に落としますっ!」


「やれるもんならやってみなーっ!」


何やら怪しげな雰囲気の魔法を放ってクルルの動きを止めるルルナを尻目にソラを撫でていると、可愛らしいピンク色の水着を持ったおばさんが戻って来た。


「これでどうかねえ?」


「……ちょ、丁度良いです。ありがとう御座います」


「じゃあ、ここで待ってるから、着替えたら戻って来て頂戴」


「分かりました。じゃあ、ルルナ……」


「……で」


「ん?」


「どこで、着替えれば宜しいでしょうか?見る限り更衣室はおろか、影になるような大きな岩ですら御座いません」


「え?でも、ルルナは一瞬で……」


「それには、魔法で服を登録しなければならないのです。これは借り物ですから、そのような事出来ません」


……どうしたら良いんだ、これは?ちらりとおばさんの方を見ると苦笑されただけで何もしてくれなかった。


「あ……ルルナ、魔法で更衣室でも作ったらどう?」


「生憎と、わたくしは錬金術を使う事が出来ません」


「ふっふ〜んっ。それなら、ここで着替えちゃえぇ〜っ!」


「ゆ、勇者様にわたくしの肌を晒せる訳が御座いません!冗談はおやめ下さいっ」


そりゃあ流石にな。クルル、程々にして頂戴。


「……もう、仕方ありません。勇者様、後ろを向いて下さい」


「え!?」


「い、今すぐ、お願い致しますっ!もしも覗かれた場合、虫の息になるまでぶちのめしますっ!あ、クルルさんもですっ!」


「わ、分かった」


「え、ボクもっ?」


ルルナの圧に押されて後ろを向く。ぶちのめすって、ルルナみたいな子が言う言葉じゃないという言葉は胸の内に秘めておく。

……衣擦れの音がすごく気まずい。というか、俺のすぐ後ろでルルナが着替えているというイレギュラー過ぎる状況に頭が追いつかない。

兎に角、そんな状況のまま待つ事5分……。


「勇者様、着替え終わりました。服もしまいましたから、もうこちらを向いても構いません」


「あ、分かった」


着替え終わったようなのでルルナの方を向くと……


「ど、どうでしょうか?」


「おお……凄く、似合ってるよ」


年齢の割に胸が小さいね、とは言わない……否、言えない。

ピンク色の可愛らしいワンピースが、ルルナの可愛らしさを引き立てている。


「へ……それだけ、でしょうか?」


「え?それ以上に何か必要なの?」


「も、もう構いませんっ。では、勇者様も着替えて下さいませっ」


「な、何で怒ってるの……?」


まあ良いや。

ルルナとクルルに向こうを向いてもらってから高速で着替える。

丁度着替え終わったタイミングでおばさんが戻って来た。


「アンタ等、着替え終わったかい?」


「はい。いつでもどうぞ」


「あいよ。そこのボロいのがウチの船だから、乗っておくれ」


うわあ……本当にボロい。2、3人乗るのがギリギリであろう甲板は今にも崩れそうな程の木製で、操縦席の定員もたった1人のようだ。


「勇者様、万が一沈んでもわたくしが勇者様を抱き抱えて岸まで泳ぎます故、ご安心下さいませ」


「う、うん。ありがとう」


おばさんの頼みを受けてしまった手前、船に乗らない訳にはいかないし、ルルナにもここまで言ってもらったんだ。俺は覚悟を決めて船にのる。


「んじゃ、行くからね」


「アイアイサーっ!」


1人もとい若干1匹が調子に乗ってはいるが、俺はそれどころじゃない。

俺はこれから沈没に対する恐怖、そして船酔いと戦わなければならないのだ。船がのろまだから、尚のこと心配だ。

そして船に乗ることおよそ30分……。

操縦席から出てきたおばさんは、


「この辺りだったと思うよ。じゃあ、頼んだよ。あと、今アンタ等が着てる水着は防護服代わりにもなるから、安心してやってきておいで」


と言った。


「わ、分かりました。さあルルナ、行こう」


船酔いはそれ程でも無かったので、早速行ってみることにする。


「承りました。クルルさんは……」


「ボクは行かないよぉ?水着無いし」


「そうですか。では、水中でも呼吸できるよう、空気の膜を作らせて頂きます。『我天ト理ニ従イ妖ナル力ヲ行使スル。母ナル空ヨ、我等ヲ守護スル多イナル力トナレ』エア・バリア」


そうルルナが唱えると、俺とルルナの周りを、球状のバリア(?)が覆った。


「それでは行って参ります」


「気を付けて行くんだよ」


それにしても……おばさんの言葉、なんか微妙に俺達の会話と噛み合ってないような……。

まあ良いや。さっさと行って、ルルナに片付けてもらおう。


「じゃあ今度こそ行こっか?」


「承りました」


俺達は碧い海に向かって飛び込んだ。


〜★〜★〜★〜


勇者達が海へと消えてから少し後……。


「そうそう、妖精のお嬢ちゃん。お菓子でも食べないかい?」


「お菓子ぃ?食べる食べるぅー!」


「そうかい?はい、どうぞ。あと、スライム君にはこれね」


「ありがとぉ!いただきまーすっ!」


「ぴゅいっ!」


貪るような勢いで()()を食べた2匹は、3分もすると動かなくなってしまった。

2匹ともしっかりと寝ているのを確認してから、その中年の女性は口調を変え、


「ふむ、やはりピクシーとスライムにはこれが一番だな」


と言った。

次いで、誰にともなく、


「悪いが、暫くの間寝ていてもらおう。なに、心配する事はない。この海域にはタイラントブルーシャークやメガロードン等はいないからな」


と言うと、彼女は甲板の縁に足を掛けた。


(ククク。あの程度で勇者とは、笑わせてくれる。だが……その強さをみるのもまた一興であるか)


彼女は勇者達と同じように、海へと飛び込んだ。


……異世界生活33日目、未だ終わらず。

この先、個人的な用事で2週間程間が空く事があるかと存じます。

ご理解のほど宜しくお願い致します(^^)♪

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