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異世界で幸せめざしてみた!!  作者: ひなもとプリン
五章 過去編 ユリアスの事情
44/92

3 入学と出逢い*

今回の話の中に、大人が未成年の子供に対して不埒な行動に出ようとする場面があります。

ぬるいですが、不快に感じられる可能性のある方は、文中わりと最初の方の◆~◆の部分を飛ばして下さい。

読まなくてもなんとなく話は通じるかと思います。


ただ、私的にはその子供の反応の方も人としてどうよ?というか………。

本当にすみません m(_ _;)m

「あのアレクシスってどういう奴なの?」


舞踏会はまだ盛り上がっていたけど、子供はもう帰りなさい、と言われアッシュと一緒に馬車に押し込められたので、時間潰しに訊いてみた。

僕の家の馬車なので、まず公爵家に寄ってアッシュを下ろしてから、僕の邸に帰ることになる。


僕の質問にアッシュは眉を寄せた。

「お前、なんであいつを煽るような事した?あいつきっと面倒臭いぞ」

「見てたの?」

僕は驚いた。アッシュが言うのは、僕がアレクシスに笑いかけた事だろう。

ダンスに夢中でこっちなんか見てないと思ったのに。


「あいつ今年5年生になる。たいして出来がいい訳でもないのに、なんでか自分に自信がある変な奴だ。気に入ったんでなきゃ関わらない方がいいと思うな」


アッシュの言葉に僕は考え込んだ。

変な奴……。あいつやっぱり変な奴なんだ。

でも、じゃあ他の赤くなった連中は?




2年前、僕のところにやって来た家庭教師は若い男の先生だった。

僕の顔を見るなりギョッとして、男の子だって聞いてたんだけど、と言い放ち部屋を出ていった。

僕は別にドレスを着ていた訳でもなく、普通にズボンだったのに。

やがて侍女と一緒に戻ってきた先生は僕に勘違いを謝り、授業が始まったのだけど、わからないところを質問しようと顔をあげると必ず目が合う。

ずっと見られているのだ、とすぐに気づいた。


ねっとりと熱のこもった視線を居心地悪く感じながら数回授業を受けているうちに、先生はやたらベタベタ僕に触るようになった。

肩に手を置いたり、頭を撫でたり。字に変な癖があるから直そう、と言われ僕がペンを持つ手に先生の手を重ねられた時はなんだかゾッとした。


だから、試してみた。


またいつものように背後に立つ先生が僕の肩に手を置いたとき、僕は先生の手に自分の手を重ね、振り向いて笑った。

途端に先生は熟れたトマトのように赤くなり僕にのしかかってきた。


僕は机の上の物を全部払い落とし、大声をあげた。

次の間から侍女が飛び込んできて僕らを見て悲鳴を上げ、先生は邸の男たちに3人掛かりで引きずられるように連れていかれた。

違う違う!と叫ぶ声が廊下の端まで響いていた。


次に来た先生は普通の人に見えた。

でも、僕が笑いかけてみると赤くなる。要注意だ。

授業中はさりげなく侍女が同席するようになり、先生にも特に変な所はないようだったのに、授業が終わってお茶の支度のために侍女が中座すると、距離を詰めてくるようになった。

そのうち逃げるのも面倒になったので、一人目と同じようにしてあげた。

先生はその日のうちに解雇された。


その次の先生は女の先生だった。

少しツンとした、まだ若い眼鏡の先生は、やっぱり僕が笑いかけると赤くなった。

さすがに触ったりはしてこなかったけど、色々自信がなくなった、と言って自分から辞めていってしまった。


最後の先生はおじいちゃんだった。

優しそうで何でもよく知っていたので、今までで一番いい先生だと思ってたのに、何でだろう。僕が笑いかけると、みんな変な人になる。

先生には笑いかけたらダメなんだろうか。

でもそれを試す機会はもうなかった。その先生を最後に家庭教師が来なくなったからだ。




「ね、なんで僕が笑いかけたり見つめたりすると、みんな赤くなって変な人になるんだろう。それとも変な人だから赤くなるのかな」

そういえば邸の使用人たちは別に赤くなったりはしない。

そう思ってアッシュに訊いてみた。

変な人って?、とアッシュが言うので家庭教師の事も、僕がしたことは省いて話した。



「お前……、タチ悪いな」

そんときも煽ったんだろ、と嫌そうに言われてしまった。ちゃんと省いたのに、なんでバレたんだろう。


「普段のお前見てりゃわかる。今日だってそうだろ、あそこで笑ってやる必要なんかなかったじゃん」

「普段って……、アッシュが学校に行ってから、ほとんど会ってないじゃないか。長期休暇しか帰ってこないくせに」

思わず言い返したら、アッシュはニヤリと笑った。

「なんだ、寂しかったのか?これからずっと面倒見てやるから、安心しろよ」

「は?冗談!自分の事は自分でする。余計なことしないでよ?」

眉間にシワを寄せる僕を、アッシュは生ぬるい目で見た。

そういうとこがムカつくんだけど。


「ところでさっきの話だけどさ」

僕の機嫌が直らないとみてか、アッシュは話題を戻した。

「ユーリんとこ、ずっと使用人の入れ換えしてないだろ?いつ行っても知ってる顔ばっかりだしな」

確かにうちの使用人は長く勤めている者ばかりだと思う。物心ついた頃からずっと一緒の顔ばかりだ。


僕が、それで?と先を促すと、

「だからみんなお前を赤ちゃんの時から知ってる、って事だろ。それってもう家族じゃん。家族をそんな目でみたりしないさ」

「……そんな目?」

まだ釈然としない僕に、アッシュは焦れたように言った。

「だーかーらー!お前を見て赤くなる奴は、お前を見て可愛いとか格好いいとか思ってるんだよ。家族とは違う意味で!」




アッシュの言葉は衝撃だった。どれくらいかというと、いつ公爵家に着いて、いつアッシュが降りたのかもはっきりしない位だ。

気がついたら自分の邸に着いていて、お湯を使って、布団に潜り込んでいた。


アッシュの言葉が頭の中でグルグルまわる。

乳母の息子も家庭教師たちも、僕に好意を持った、って事?

でもあの家庭教師たちが来てたのって、僕はまだ8歳位だったよね。それってやっぱり変じゃないの?

それから今日のアレクシスも、他の目が合っただけの人もみんな僕に好意があるってこと?たったそれだけで?


考えられない、と僕は丸くなって眠ってしまった。





今期の学校の入学式まで、あと一ヶ月ある。

それまで学校は長期休暇の期間で、つまりアッシュも休みだ。

僕たちのところには、あちこちの貴族の邸で行われる舞踏会や夜会の招待状が山のように送られてきていて、その中の幾つかには二人で参加した。

アッシュに言われた事が頭に残っていて、でも誰かと目が合うとつい反応が気になって見つめてしまうのだけど、それでわかったのは、見つめただけなら相手が赤くなるだけってことだ。

だけど笑いかけると勘違いさせてしまう。


もちろん、僕が見つめようが笑おうがたいして反応がない人もいる。そういう人はどうやら、初めて顔を合わすような僕なんかよりずっと大事な人がいるんだ、ってことがわかってきた。

そして、僕にとってはそんな人の方がよっぽど付き合いやすかったのだった。





やがて僕は、王立騎士養成学校に入学した。


ここで6年間勉強して、身体を鍛え、卒業すると同時に騎士の資格をもらうことになる。

特に事情がなければ、そのまま近衛騎士団もしくは王立騎士団に配属される。

この学校に来るのは殆どが貴族の、それも次男三男などの家を継ぐ予定がない者たちだ。成人すれば自分で身を立てなくてはならない者たちがここに集まる。

僕やアッシュみたいなのは、いなくはないけど少数派だと思う。

あとは、貴族ではないけどお金持ちの商家の子とか、騎士を目指す女の子も十数人いる。

女性の騎士の数はそんなに多くない上に、王族の女性の護衛には絶対必要なので、卒業後の勤め先には困らないらしい。



ここで僥倖だったのは、アーチと出逢えた事だ。


その日入学式会場の講堂で、僕はやっぱり遠巻きにジロジロ見られて、苛つきながらも無視していた。

そこへアレクシスが目ざとく僕を見つけ寄ってきて、いかにも親しげに周囲にアピールし始める。


なんだか本当に面倒くさい。

内心げんなりしていると、またしてもアッシュが乱入してきた。



アッシュは驚いた事に、この学校のボスだったんだ。

彼はまだ3年生だけど、体格がよくてアレクシスにも引けを取らない。

それに、後から聞いた話だけど、体術や剣術は一際群を抜いていて、座学こそ人並みらしいけど、公爵家嫡男という出自を置いても、その豪快で面倒見のいい性格は彼を慕う生徒たちを集めるのに充分だったのだそうだ。




そしてざわめく新入生、在校生たちが見守る中、瞬く間に僕を挟んで訳のわからない勝負が始まった。



その時だった。

「先生がきたぞー!早く席につけーっ!!」

叫ぶと同時に誰かが僕の手を掴み、慌てて自分の席を探す生徒たちの隙間を縫って、講堂からの脱出を成功させた。

それがアーチだった。


「今の?嘘に決まってんじゃん。時計見ろよ、まだあと15分はあんじゃね?」


なんかお前、途方に暮れた顔してたからさぁ、と屈託なく笑うアーチを見つめると、彼は、

「お前目が悪いんか?」

、といい放った。

そして、人によっては喧嘩売られたと思うかもしんねーからやめた方がいいぞ、とまで言われた。


こんな奴は珍しい。

気づけば僕とアーチはいつもつるむようになっていた。


ともあれ、僕の学校生活は始まった。


アレクシスについて、アッシュが言った意味はすぐわかった。

彼は先生にでも、生徒が運営している学校の自治会にでも、とにかく何にでも文句をつける。そして、こんなやり方じゃあダメだ、と言うんだ。

だけど、じゃあどうすればいい?と聞くと、あやふやな事ばかりで何も具対策をもっていない。

文句を言うだけなら誰だってできるよ。

偉そうに言うなら、自分が先頭に立てばいい。


一度、じゃあアレクシスが自治会に立候補して改革すればいいのに、と言ったら、そんな簡単なものじゃない、とかムニャムニャ言って逃げてしまった。

つまんない奴。




普段は学校と寄宿舎を往復し、長期休暇になると邸に帰る。

シーズン中は社交界にも顔を出し、それ以外の時はアーチや、他の友人たちと互いの別荘を行き来したりした。

アッシュは誘わなくても、好き放題にやって来るのはお約束だ。


そうこうしているうちに、第一王子殿下が無事お生まれになり、半年を経てお披露目のパーティーが行われたりもした。あいにく休暇の時期じゃなかったので参加しなかったけど。



学校にいる間は、常に絡んでくるアレクシスが目障りな事以外は特に問題はなかった。

アーチの言う通り、人と目を合わさないようにすれば、向こうも近づいてこようとはしないからだ。


たまに、数を頼みに徒党を組んで、お前偉そうにしやがって、みたいな頭の悪い因縁をつけて来る奴もいたけど、そういう奴には少ししおらしい顔を見せて、そんなつもりはなかった、というとたちまち態度が変化した。

ドギマギする連中に、また何か気づいたら教えて欲しい、と微笑むと、もうそいつらは僕の言いなりになる。


アーチは渋い顔をしたし、アッシュにはお説教もされたけど、あいつらはどうでもいい奴だから気にしなかった。



鍛えれば変なちょっかいを出してくる奴もいなくなるんじゃないかと思って、アッシュ程ではなくても体術も剣術も人並み以上に身につけたものの、変な奴にはあんまり関係無いようだった。

その上アーチに、お前の顔でこの腹筋は詐欺だ、とか言われたから、腹立ち紛れに取り敢えずグーでパンチをお見舞いしたら悶絶していた。

アーチこそ、もっと腹筋鍛えた方がいいと思うよ。


そんな学校生活が1年、2年と過ぎて、やがてアレクシスも卒業していった。

といっても舞踏会やなんかでは、結局顔を合わせるんだけどね。





そんなある日、夏の長期休暇で家に戻ったばかりの僕に父上は言った。


「そろそろ婚約を考えたらどうだ?」


父上はそういう言い方をしたけど、わざわざ呼び出してまで言うんだから、きっともう相手を決めているんだろう。

貴族に生まれたからにはよくあることだ。


舞踏会なんかでたまに、気が向いた時とか女の子をダンスに誘うと真っ赤になって、そういうのもまあ可愛いかも、と思えるようにはなったけど、ただそれだけ。

以前、女の子同士で揉めているのに気づいてからは、同じ子は二度と誘わないことにした。

誰か一人が特に目を引くということもないし、特別に思えるような子もいない。


つまり誰だっていい、ってことだ。




そして1ヶ月が過ぎ、僕の婚約者に会う日がきた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


皆様ユリアスさんにドン引きされたのでは……と心配。なら書かなきゃいいのにな。本当すみません。


この辺りで誰かに逆恨みされて校外に変な噂流されたりとかしてますが、学校内ではもう既にいろんな根も葉もあったりなかったりな噂が飛び交ってるので、本人マヒしてるし気にしないようにもしてます。

噂聞いてる方も話半分くらいで聞いてる感じです。

アマンダたちが聞いた噂は、ユリアスさんに相手にされない学生が実家に帰った時とかに、まだ年少の弟や妹に悪意を持って流した嘘と思われます。



そしてアレクシスが言ってた噂はこんな感じ↓


「なぁアッシュ、今度従兄弟が入ってくるんだって?どんな奴?お前みたいに強い?」

「んーー?二歳も下だぞ。これからだろ?でも、見た目は天使みたいだって評判だな」

「へ!?天使?」

「そうそう、俺そっくりでさー」



はい。噂の元はアッシュでした。


本文中に入れると、この章も『たまゆら~』のようにガンガン延びていきそうな予感に襲われたため、あとがきで失礼致しました。

他のエピソードとかも『たまゆら~』で言及した部分は割愛するか、サラッと流すと思います。多分ですが。



こんな最後の最後までありがとうございます。

また次の話も読んでもらえたら嬉しいです。


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