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悪事は必ず暴かれる  作者: あおぞら えす


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幸福の足音


 大城康人はその日、とんでもないやらかしをしてからの帰宅となった。


ーーやってしまったなぁ・・


 彼のやらかしは至って普通のやらかしであって、決して会社の今後がどうなるか、なんてほどのこともないはずだった。


 彼は普通のサラリーマンだ。表向きは。裏の顔は、いわゆる盗みを働く泥棒。とはいえ、会社でその素顔をさらすことなどない。ましてや、やらかしはサラリーマンとしてはよくやってしまうこと。周囲は彼のおっちょこちょいな部分しか知らず、手先の器用さも隠れた良いところぐらいにしか考えていない。

 彼は、今まさにとある一件の家を通り過ぎた。誰も住んでいない家。彼は空き巣を狙う泥棒ではない。しかし、家に人がいるかどうかはすぐに分かるぐらいには、特徴を知っている。

「・・・・。この家・・・。」

 彼は足を止める。その家は数日前に親子が亡くなっている。そのせいか、警察が残しているテープやら白いマーキングやら。

「・・・。うぅん?気のせいか。」

 家に明かりが見えた。暗闇の中、浮き上がる人影。

「気のせい・・・。うん!気のせい気のせい。」

 大城康人は渇いた笑いを溢して離れようとした。彼には、直感的で野性的な恐怖が身体を占め、それをなぎ払っても今までにない苦痛を感じる。


 気がつけば、自宅のベッドで横になっていた。朝焼けが身体に染みて、ただ何がおきたのかを考える余裕を与える。

ーーやらかしたのは間違いない。今日は・・・。会社へ行こう。

 重い身体を起こして、部屋の中を見て、言葉を無くす。

「・・・?・・・!」

 彼は部屋の外を探した。

 彼はそこが自分の知っている部屋ではないと気づいた。

 ここは、彼の知っている実に素晴らしい家だった。彼が泥棒として盗みに入った場所。


 カタン


 彼はびくりと身体を震わせた。部屋の隅にある砂時計がサラサラと音を立てる。誰も、彼以外いない部屋で、静かに部屋の扉がゆっくり開く。

 彼は身体を動かそうとした。けれど、開く先を黙って見ているしかなく。

「まったく。金銀財宝が眠る部屋はどこかねっと・・」

 彼には映らない。けれど、ちゃんとみえていて。大城康人の黒い服が所々血を塗りつけられて。彼の足首には手形が残っていた。

 大城康人は凍り付いていた。彼の足はよく歩け、た。どうしてその手を見ないでいられたのか。


 コトン   コトン   コトン


 階段を降りる音がした。


 タン  タン  タン  タン


 大城康人はいなくなっていた。いつのまにか、静かになった、部屋。

 掠れる音が聞こえてくる。話し声は囁くよりも小さく。

 ドクドクドクドクドク

 心音が、響いた。


 目が覚める。病院の室内。

「二度と目覚めないように・・・・。」

 聞こえてくる医者の声。

 康人は悲鳴を上げる。

 医師はマスクで顔を隠し、眼鏡の奥の瞳が淀んでいる。

   ポタ ポタ   ポタン

 血が流れ落ちる音。康人は少しずつ少しずつ、失っていく。

 彼が奪った命の数だけ、彼も。

   ポタ ポタ  ポタポタ  ポタ  ポタン

 康人が 流れる血の数を数えても。

 彼の殺した人の数に足りなくて。

 黒い手が、黒い手が、黒い手が、黒い手が、黒い手が、黒い手が・・・それ、欲しい。ホシイホシイホシイ・・

 彼の周囲には医師のような、黒い何かが。

 ドス  ギュウウ  ガン  ダン  ストン

 殺人鬼  殺人鬼  その手はいつも黒い

 お前も俺と一緒・・。どうされたい?

 殺された、人の、手、と。殺された、人の、無念。赦しはない。



 大城康人は、その日。やらかしたのは事実。いつものようにやった。それもまた事実。会社に損害はないが、彼の命は、果たして。

 悪行は、決して許されない。

 死んだものは、決して許さず、見ている。

 彼らは、音も無く姿もない。けれど、見えていないが、見られている。

 ほら。聞こえる。生活していた頃の。


 タン   タン    タン   タン


 タッ  タッタッ  パタパタ   パタン


ーー次は  貴方・・



 人は死ぬ間際、怒りと、苦しみと、恨みを


   必ず、貴方に届けます


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