13/13
熱
蝉の声が聞こえ、あちこちで赤いトンボが飛んでいる
春とは捉え難く2月には散ってしまった桜の後
のほのぼのと日差しの柔らかかった日だったのかも知
れぬと
季節とは後になって気づくものなのかも知れない
太陽は雲に隠れているが、熱気だけがこもって蒸し暑い日
一休みと東屋へ入る
もう使われなくなった水道の下に受け口のような
穴が空いている
そこには水が満ち満ちていた
波一つない美しい水面には反射した葉が葉脈まではっきりと映り込んでいる
角度を変えて底を見れば木の枝や葉が沈殿している
一際大きな枝は斑ら模様を拵え
暗い空間で鈍く繊細な白銀色に光っていた
突然
一つの泡が生まれた
小さなそれはお玉杓子の仕業だった
頭が大きく
お玉杓子が顔を出している
手足はくっついているが動かすことなく
口を動かし呼吸すると
くるりと向き直り尾鰭でまた戻っていった




