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第34話 プレゼント

プレゼントを渡す道久。そして……

「ほら、これ。結婚記念のプレゼント」


 今日のために用意しておいたそれを手渡す。


「……」


 古織はといえば、目をパチクリさせて予想外といった表情。

 ありゃ?流れが唐突だった?


「ええと。まだ、指輪も俺たちないだろ?だから、せめて結婚記念にと思って、用意してたんだけど」


 だから、慌てて説明を追加する。


「もう、みーくん。そんな所まで気を遣わないでもいいのに」


 水臭いと言いたげな表情だ。


「男としては気を遣うんだよ。まあ、そんな高いものじゃないから」


 指輪は、俺が貯金したお小遣いから出すと言ったのに、

 「将来のために取っておいて?」

 なんて言われてしまったし。


「とにかく、開けてみてくれよ」

「うん……」


 言いながら、包装紙を少しずつ剥がしていく古織。


「ロケット?」


 古織がつまんでいるのは、銀色に輝くロケットペンダント。


「ああ、俺もお揃いで買ったから、指輪の代わりってことで」


 今回、プレゼントに当たって悩んだのが、何を送るかだった。

 指輪の代わりだから、お揃いで身につけられるのがいい。

 とはいって、ペアルックは何か違う。

 悩んだ末に思いついたのが、これだったのだ。


「あれ?これ、写真が……」

「せっかくだから、記念写真入れといたんだよ」

「ありがと。でも、ちょっと照れるよ」


 しげしげと写真に写った姿を見ている古織。

 区役所で、入籍の時に撮ってもらった記念写真。

 写真の中の俺たちは、どこか照れくさそうだ。


「ね、みーくん。これ、付けてくれる?」


 ぽん、とロケットを渡される。


「あ、ああ」


 単に首から下げる、ただそれだけの作業だ。

 だというのに、妙に緊張してしまう。


「どしたの?」

「いや、指輪の代わりって思うと、ちょっとな」

「指輪の代わりって。も、もう……!」


 古織は、恥ずかしそうに、顔を背けてしまった。

 しかし、俺にとっては好都合。


「ほい。付けたぞ」


 顔を背けている内に、素早くロケットを首から下げる。


「……綺麗、かな?」


 言われて、古織の身体をじっと見る。

 借りた浴衣に、首から下げられた銀色のロケット。

 そして、見つめる二つの瞳に、赤らんだ頬。

 

「ああ。綺麗だ、古織。それと、可愛い」


 言ってて、少し陳腐過ぎただろうかと思う。


「嬉しい……!」


 そう言って、抱きついてくる。

 背中まで回された手と、胸から体温が伝わってくる。

 それと、ドキドキした気持も。


「なあ……」


 それだけ言って、顔を近づける。


「うん……」

 

 何も言わずに目を瞑ってくれる。

 ちゅ、っと軽いキスを交わす。

 顔を離すと、上記した顔がとても魅力的に映る。


 あまりの可愛らしさに、また下半身が反応しているのに気がつく。

 抑えろ、抑えろ、俺。

 さっきから回復したとはいえ、がっつき過ぎだろ。


「えふっ」


 下半身に感触を感じて、妙な声を漏らしてしまう。

 見ると、古織が指先でさわさわしていた。


「ちょ。止められなくなるんだけど」

「私は睦事したい」

「でも、お風呂の前にしただろ」

「じゃあ、無理そう?」


 無理そうって。

 さっきから数時間経っているから出来るといえば出来る。


「無理じゃないけど、2回とか、がっつきすぎじゃないか?」

「みーくんは考えすぎだよ」


 古織の奴はいつになく積極的だ。

 さっきの雰囲気のせいだろうか。

 でも、確かに考えすぎなのかもしれない。


「じゃあ、脱がすぞ?」

「せ、宣言されると緊張しちゃうよー」

「どうしろと」


 幸い、相手は浴衣一枚。

 するすると紐を解いて、簡単に脱がすことが出来た。


「あ、今回は私から先にさせて?」

「え。あれ、恥ずかしいんだけど」


 夫婦の睦事をする時に、口でしてもらうことは数える程。

 どうしても恥ずかしい気持ちが先に立ってしまう。


「ますます、してあげたくなっちゃう」


 とはいえ、そう言われると拒む事も出来ない。


「じゃあ、お手柔らかに、な」

「もう堅いけど?」

「それはおいといて」


◇◇◇◇


 結局、口でしたもらった後に、普通の行為を2回程した俺たち。

 

「はあ……疲れた」

「お疲れ様」


 実際に疲れた事をした後に言われると、笑ってしまう。


「ほんと、疲れた。でも、普段だと1日に2回とか無理なんだけどな」


 首を撚る。新婚旅行のムード、だろうか?


「ひょっとして、お料理の効果、出たのかな?」

「は?料理?」

「精の付くお料理、よく作ってたんだけど」

「マジか……」


 そんな用意周到な事をしていたとは。


「みーくん、いっつも、優しくしてくれるでしょ?」

「ん?それと何の関係が?」

「そういうのもいいけど、もっと乱暴にしてほしかったから」

「つまり、精のつく料理作れば……と?」

「うん……」

「いや、だって、乱暴にするのはなんか身勝手ぽくて気が引けるんだよ」

「やっぱり、みーくんは女心がわかってない」

「今度はなんだよ?」

「だから。乱暴にして欲しいこともあるの!」

「乱暴に……わかったよ、善処する」


 俺にはそういうことが精一杯だった。


「ふわぁ……」


 可愛らしいあくび。


「眠いのか?」

「うん。でも、とっても幸せ」

「そっか。良かった」


 古織を見ている内に、俺も微睡んでくる。


「京都、楽しかったね」

「ああ、ちょっと色々予想外だったけどな」

「でも、こんな気分も楽しいよ」

「そうかもな」

「私達、結婚、したんだよね」

「してなかったら困る」

「でも、今までは恋人のままだったのかも」


 暗に今日の出来事を言っているんだろう。


「そうかもな。でも、どっちでも俺たちだろ」

「クラスでいっぱいからかわれるかも」

「穴があったら入りたくなるだろうな」

「雪華ちゃんたち、どんな反応するかな」

「あー……どうだろ。あいつらの反応の方が気になるな」


 きっと、生暖かい目で見てくるのだろう。


「恋って難しいね」

「ほんとな。でも、仕方ないさ」

「うん。仕方ないよね」


 目を見合わせてうなずき合う俺たち。

 ずっと付き合ってきたのに、今更、なんてプライド。

 でも、それでぎこちなくなったら本末転倒。


 だから、思う存分楽しもう。

 そう思ったのだった。

というわけで、ようやく新婚旅行1日目終了です。

2日目は彼らも帰りの新幹線があるので、もうちょっとコンパクトになる予定です。


二人の旅路を応援したい方は感想やブクマ、評価いただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ロケットかあ… 最近はちょっと聞かなくなっている感じもあるけれど、おそろいでつけるのも良いかも。指輪はまた今度。 ただ、写真入っていると洗浄できないから、汚さないように気を付けてね/w
感想一覧
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